2006年7月18日 (火)

やはり「法的思考力」

昨日の話にも繋がりますが、ウチの事務所の企業法務ビジネス、また新たな展開です。

今日から某電機メーカー系のシステム管理会社の法務部に、若手1名が出向しました。

同社は、月600件(!!)もの契約書(主に業務委託契約)をレビューしているそうです。

現在法務関係の人材が著しく不足しているようで、ウチの様な事務所の人材は多少オン・ザ・ジョブでトレーニングを積めば、即戦力になるということでお声をかけていただきました。

現在、同社の他、全く畑の違う企業(不動産=REIT、メガバンク等)に数人を送り出しております。

但し、それぞれの仕事の内容は千差万別で、必要とされる法的素養(知識)も色々です。

尤も、どんな業務でも最も重要なのはヤキソバオヤジ流「広義の」法的思考力です。

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2006年5月25日 (木)

企業買収の際、取締役が気をつけるべきことは?

いえいえ住宅新報様。

1面トップにでかでかと写真入で掲載(5月23日号)して頂いたことに感謝こそすれ、不快感など感じようはずもございません。

まして、「中立派」というのはヤキソバオヤジの日和見主義的なところをやさしい言葉でくるんで表現して頂き、さすがプロフェッショナル・ライターと、感動すら覚えました。有難うございました。

話は変わりますが、挨拶について。

先日、朝の出勤時に事務所のビルのエレベーターホールで、他の会社の社員の方といっしょになりました。先に一人が来ていて、後からもう一人が来たのですが、その挨拶が、「チー」とか「スー」とか、そっぽを向いてそんな「音」を出すだけなのです。これが朝の、一日の始まりの挨拶(?)なのです。

060524chika それを見ていてこりゃろくでもない会社だな、と思いました。実際のところはわかりませんが、挨拶すら満足に出来ない者がちゃんとした仕事が出来るとは思えません。

ウチの事務所は挨拶やマナーについてはかなりお客様からも高く評価されていると思います。ですから今更ビジネスセミナー(先日御紹介しました)で挨拶の仕方やマナーを勉強することに抵抗を感じる者もいたと思います。

しかしウチの事務所でも、まだまだ不十分なところもあると思っています。

特にワタシ達(一応)スペシャリストの場合、ともすると(特に内輪の者にたいする)挨拶など自分の提供する専門的サービスの内容や質とは関係ないと考え勝ちです。

しかし、挨拶はビジネスマナーというよりそれ以前の、社会人として他人との関わりをもつ者は当然身につけていなければならない最低限の礼儀だとおもいます。

以前に、周りの人を元気にする「ヒーラー」になれたら、という事を書きましたが、少なくとも周りの人の元気を奪うような存在にだけはなりたくありません。

きちんとした(元気のある)挨拶ができないというのは、そういう存在に近いと私は思っています。

では本題です。

先ほどある上場企業の方から、会社買収をした場合に買収側の会社が気をつけなければならないことは何か、というご質問を頂きました。一時間後に取締役会で説明するので、簡単にポイントを教えて欲しいという事でした。

この件に関しては、関連契約書の作成などで前々から関わっていましたが、簡潔にわかりやすく注意点を説明するという事をしていませんでしたので、大急ぎでまとめてみました。

要は、買収後に買収対象会社が破綻した場合はもちろん、そこまでは行かなくとも当初の予測どおりの業績が上がらなかったような場合、さらに資産としての瑕疵(欠陥)があったような場合または買収行為そのもので損害が発生した場合等に、責任を問われることがないよう、買収の際に取締役はどんな注意が必要かということです。

簡単に言えば、次のようなことです。

先ず、買収するか否か(及び条件)の経営判断の問題です。

もちろん経営者は、その経営者としての才覚に基づいて経営判断を行うという裁量権をもっているわけですが、これにも限界はあります。

これを法的に言うと、取締役は会社と委任関係にありますから、受任者として善良な管理者としての注意義務(会社法330条、民法644条)を負うとともに、会社のために忠実に職務を執行すべき忠実義務を負っており(会社法355条)、これらの義務に違反して会社に損害を与えた場合は債務不履行として会社に対して損害賠償の責任を負うことになる(民法415条)ということです。

そして、経営判断にこれらの義務違反があったといえるかの一つの判断基準として、「経営判断にあたり事実認識の不注意な誤りまたは意思決定過程の著しい不合理がないか」というもの(野村證券損失補填訴訟第一審判決)があたえられています。

ではどのような注意をしなければならないのか。まず、企業買収にも通常の取引行為と共通する部分が多いですから、通常業務におけると同程度の注意をする必要があります。

例えば未公開株式の評価。企業も一つの資産であり、株式の価格を決めるという事は、資産を買取る値段を決めるという事ですから、通常の売買取引で売買価格を決定することと本質的には同じです。

一方で、日常の取引行為とは異なる部分も多いはずです。例えば、全く新しい分野の事業の場合、経営のプロであってもそこでの適正な事実認識のためには外部の専門家等の意見を求めたり、社内的にもプロジェクトチームを作るなど十分な検討を重ねる必要が生じてきます。

そして経営者の責任が生じるのはこの経営判断のミスだけではありません。

法令違反の場合にもその責任が生じる場合があります。

例えば証券取引法。ライブドアの堀江前社長は、まさしくこの点で刑事責任を問われているわけです。

その他独占禁止法違反等が問題となる場合もあります。

これに対処するためには、こういった法令についての知識を有する必要もありますが、その適用に通じた専門家をブレーンとして置いておくことも重要です。

近年はMAに限らず、専門家自身の責任も大きく問われるケースが増えていますが(監査法人、一級建築士、そして信託銀行まで)これに関してはまた改めてお話させていただきます。

※以上に関しては西村総合事務所編「MA法大全」(商事法務)、加美和照「会社取締役法制度研究」(中央大学出版部)を参考にさせて頂きました。

写真は、不動産起業塾の?次会でのものです。どこかは内緒(イッシ立ち直ったかな? シーさんどうでしたあの後は?)

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2006年5月22日 (月)

映画の製作委員会~ワタシ達の提供できるサービスは?

申し訳ございません、フクダリーガルのメンバーの皆さん。

昨日、一昨日と「リーガルセミナー」についてあれこれ夢や期待をお話しましたが、肝心なことを忘れていました。

今朝、いつものように目を覚まして、だらだらしていて(山内先生のコメントにも「だらだらうつうつ」しているとコメントをお返ししましたが)はっと気がついた(遅いよ)ことです。

それはヤキソバオヤジ自身の行動基準が目標である「No1」「超一流」にふさわしいものであるかどうかという事です。「おめーこそ意識を変えられるのかよ」ということです。

そこでオヤジは次の通り誓います。

オヤジ自身「No1」(を目指す)にふさわしい人間になります。

具体的には次のような点を先ず改めます。

時間を守ります身の回りを片付けますお酒は程ほどにします。その他基本的な生活習慣を改めます・・。

いやー小学生並みですね(お酒以外)。

そして大事なことの二番目。

No1」の定義をしていなかったという事です。にも関わらず一昨日の記事で「今のメンバーでNo1を目指す」(ことができるかどうか)と書いた点です。No1の定義が決まってもいないのに、目指すも目指さないもないというものです。

そして、No1の定義についてはセミナーの際にグループミーティングのテーマとしました。個人個人の、あるいはグループの目指すNo1は何か、「自主的・主体的に」考えようという事です。

これについては事務所の統一的な答えはまだ出ていません。

ところで話は全く変わります(今日のテーマです)が、昨日夜中にテレビを見ていましたら(スミマセンだらだらしてました)「映画の製作委員会って何?」という質問があり、その答えとして「何人かの人たちから映画の製作資金を出してもらってリスクを分散し、収益を配当するシステム」であるという答えが出されていました。

今、ウチもホームページの再構築を検討していまして、最近組合の仕事が多いですし、問題にもなっているので、「組合」の専門サイト(投資事業組合から協同組合まで)を立ち上げようかというような話をしていたのですが、この番組を見て、「組合」という切り口ではだめだなーと気付かされました。

「映画の製作委員会」というのは主に任意組合(民法上の組合契約)なのですが、映画を作ろうと思ったり、映画に投資しようとしている人達は、だれも「組合」に関心はないでしょう。要は共同事業(投資)を上手く進めるための「システム」が欲しい、あるいは共同事業(投資)の進め方を知りたいと思うだろうということです。

つまり、ワタシ達が「組合」という構成を提供できますよ、ということでなく投資家や事業家の求めているものに答えることが出来ますよという事を示す事が必要だという事です。

因みに映画の製作委員会の場合は、映画や二次媒体(DVD)の収益を求めて投資する方達ばかりでなく、キャラクターの独占権などのメリットを求めて出資するケースも多いとのことです(青山の「アニメアニメジャパン」の数土さんの講演からの受売りです)。

たまたまですが角川書店のアニメファンドの記事が今朝の日経の記事(11頁)になっていますね。こちらはかなり大型で、任意組合ではなく匿名組合だそうです。

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2006年5月17日 (水)

逃げたチャンスの神に感謝!?

Nakata060517_1  世の中すっかりワールドカップで盛り上がってますが、今日の日経朝刊で「NAKATAルネサンス」と銘打って、中田英寿選手の特集を組んでます。その中でヒデが、面白いことを言ってます。

「技術を1日で上げることは難しい。こつこつと練習するしかないからです。でも、容易ではないけれど、意識はすぐにでも変えられる。変われば、効果が表れるのも早い。そのちょっとした事でチーム全体も変われると思うのです。」

ふーんそんなものかと思いますが、これを自分の会社にあてはめてみると、なるほど、と思う方も多いと思います。これって組織を語っているようで実は個人一人一人を語っているんですよねー。「人が大事」のところでも言いましたが、一人ひとりが変われば組織も変わっていくのです。

ええっと一応この絵はヒデのつもり。なんとなく雰囲気はあるでしょ・・・「(似てない)似顔絵シリーズ」第一弾!なんて。

ところで例の「じゃがポクル」なんですけど、しっかり地元の人たちにも話題を提供しているようです。どんな感じかはまた明日。

さて、昨日、「big B 」との仕事をもっともっとやって行きたい!という事を書きましたが、今日、先日の記事(4月25月1日)で御紹介した某ホールディングカンパニーの法務部登記担当の方から、検討結果についてご連絡を頂きました。結果的には残念ながら弊事務所へのご依頼は頂けませんでしたが、「貴事務所には大変好感を持っております」と、今後の変更可能性がゼロではないというニュアンスのことをわざわざおっしゃっていただきました。

ワタシも(根がズーズーしいので)big B 」カンパニーのニーズはどういうところにあるのか、落ち着いたら(総会シーズン終わったらということです)是非お話をお伺いしたいと無理やり約束をとりつけました(Nさんスミマセン)。

内心期待はしていたので(体制も整えつつありました。優秀な新人も採用しましたし)、がっかりするかなーと思いましたが(独立当初でしたらかなり落ち込んでいたと思います-ってそもそも候補にすら上がらないでしょうが)、むしろこういった超一流企業の選択の対象になったことにたいする喜びの方が先行しましたねー。ありがとうございます。わざわざご連絡頂いたことも感謝です(わたしが当初「いつまでに返事もらえるのか、うちにも準備があるので」などと催促がましいことを申し上げたせいかも知れませんが・・・・)。

もちろん、どうしてウチが候補になったか、なぜ落選したかは十分検討して(Nさん来月お邪魔します!)、今後の対「B」戦略に生かしていくつもりですが。

体制の整備や人材の補充については、他にも人材を投入する必要のある分野はありますので、そちらに振り向けて行くつもりです。それに余裕のある時には勉強その他普段出来ないことが出来るよーみんな(余裕なんてないって?)。

そうそう人材投入といえば今J-REITにウチのスタッフを一人派遣しているんですよ。これについてはまた改めてご報告します。

⇒「会社法よくある質問」シリーズの第1回目の記事、前回の記事

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2006年5月 9日 (火)

会社法よくある質問 4 そもそも既存の有限会社はどうすべきか ② 株式会社に変更すべきか。

今日は、前に一度お話した、「ヒーラー」の方にお会いしました。

そこでまたまた感動的なお話を・・。

ヒーラー」というのは決して特別な存在ではなく、人は誰でも(ヤキソバオヤジでも)そうなれるという事をこんなたとえ話で説明してくださいました。

ゴルフのキャディさん。その人の一言の励ましで、調子が良くなったり、そうでもなかったり、キャディさんによって違いがありますが、元気を与えてくれるキャディさんはそれだけで「ヒーラー」だといっても良い。彼女はきっとゴルフ以外の場面でも、周りの人に元気を与えることのできる人なのです。

そうなんだー、と感動し、自分の言動や行動の基準が、これからは「人に元気を与えられるかどうか」という事になるのかも知れないなどと思い、また一つ成長(?)させて頂いたような気になりました。

有難うございました、YさんEさん。そしてK先生。

それでは今日の本題です。

会社法施行前は金融機関や取引先からの要請や、対外的な「印象度」、あるいは会社の成長に応じて「有限会社」から「株式会社」に組織変更するというケースがありました。

会社法施行後、その要請は当面は増えると思われます。

それは変更が容易になるからです。というよりも、全てが「株式会社」になるのですから、○○有限会社が○○株式会社になるというのは、社名の変更に過ぎないわけですから(登記手続き的には解散と設立)。

旧法時代は単なる社名の変更ではなく、「組織変更」という手続きであり、最低資本金純資産額の規制(プラスの資産が1000万円必要)があったため、株式会社になれなかったような会社でも、新会社法ではそういった制限も無くなりましたから、容易に株式会社に変更可能なわけです。

しかし、これはあくまでも私見ですが、全てが株式会社となった現在、(有限会社でなく)「株式会社」であるというだけで、信頼度が高いと言えるのかどうか、甚だ疑問だと思うのです。

むしろ新会社法は、会社の実体に合わせた組織体制をとることを可能としたわけですから(例えば株主総会の他は取締役1名だけでも可)、会社の評価もより実体に着目されるようになるのではないかと思われます。

そして、いずれ年月を経ていけば、「有限会社」を名乗れる会社は歴史のある、希少な会社であるという事になるかもしれません。

また、一度特例有限会社から株式会社に変更すると、二度と特例有限会社に戻ることは出来ません。

ですから、旧法時代の感覚で、安易に株式会社に変更することは少し考えた方が良いのではないかと思います。あわてなくても、いつでも変更は可能なのですから。

そして、株式会社に変更するべきかどうかの判断基準は、単なる「名前」としての株式会社ということではなく、もっと実質的な必要性の有無を基準として判断すべきだと思います。

逆にいうと、特例有限会社のままでは実現できない事項を実現することが必要かどうかを実質的に判断すべきだということです。

その事項としては次のようなものがあります。

       機関設計(取締役会、会計参与、会計監査人、委員会を設置することができない)

       株式の譲渡制限(全て譲渡制限付きと看做され、変更はできない。但し株主間では自由)

       少数株主権(特例有限会社の方がより多くの株式数が必要とされる)

       特別決議の要件(定款変更等の場合の要件が、特例有限会社の方がかなり厳格)

       組織再編の制限(存続会社となる吸収合併、承継会社となる吸収分割、株式交換及び株式移転をすることができない)

つまり、積極的に事業展開をし、会社を発展させるために、業務執行に機動力を持たせたり、さらに資金調達を容易にしていきたいと考えるのであれば、株式会社化するべきです。

但しその場合、前にも述べたように、次のような特例有限会社の利点がなくなることに気をつけなければなりません。

       取締役・監査役の任期の制限がない

       決算公告が不要である。

もっともこれらを利点と感じるということは、あまり事業の発展を望んでいないという事なのかも知れませんが。

⇒「会社法よくある質問」シリーズの第1回目の記事、前回の記事

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2006年5月 4日 (木)

会社法よくある質問 3 有限会社だが取締役2人で「取締役会」を開いていた。これからは何が変わる?・・・・そもそも既存の有限会社はどうすべきか。・・の続き

今日は事務所でたまっていた書類の整理をしました(終わってません)。

休日には日頃できなかった書類の整理や懸案事項に集中して取り組めます。

色々と興味のあるセミナーや勉強会に参加しても、なかなか「復習」ができていないのですが、こういったまとまって時間の取れるときにざっとでも見返すと、記憶がよみがえり、定着していきます(細部まで記憶すると言う意味ではなく、自分の頭の中で有機的なつながりが出来、普段は忘れていてもひょんな時に表面に浮かび上がってくるようになるということです)。

但し、全ての情報がそういう「有益」(?)な情報であるわけではなく、「復習」してもさほど興味を呼び起こされなかったり、そもそも何を聞いたか思い出せないような情報も少なくありません。そういう類のものは、そもそも今の自分にとってあまり「縁」のない情報として、しまい込むか捨ててしまいます。情報も「人」や「仕事」と同じで「縁」であり、自分が求めているものであれば自然と集まってくるものだと思っています(ただし日頃求め、探していなければなりません)。

そういえば、ある方のブログに、今一番興味のあるのは「人」であるという意味のことをコメントしました。実はこの時まであまり意識していなかったのですが、そのブログの投げかけに応じて考えてみたら、改めて気付きました。

これについては話すと長くなるのでまた改めてどこかでお話したいと思います。

さて、昨日の続きです。

質問は次の様なものでした。

「有限会社で取締役が2名います。今までは取締役会を開いて決議をしてきました(代表取締役選任など)が、これからはどうなるのでしょうか。取締役会設置会社という事を登記する必要が出てくるという事も聞いたのですが・・・。」

昨日は、既存の有限会社が会社法施行後は「特例有限会社」と言う名の株式会社として存続するが、いくつかの特例が認められていると言うところまでお話しました。

この特例は、法改正により、不利な扱いを強制されないようにするためのものですが、逆にこの特例を受ける限り甘んじざるを得ない制約があります。次のようなものです。

     公開会社たりえない

非公開会社と公開会社の違いは色々ありますが、また改めて。

     取締役会を置くことはできない(整備法17条1項)。

  旧有限会社では制度上取締役会という機関は存在しませんでしたから、特例有限会社も(会社法上の)取締役会を置く事はできません。

    業務監査権限のある監査役を置くことは当然にはできない(定款変更必要)

  監査役を置いていた場合、定款で監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定めているものとみなされます(整備法24条、会社法389条1項)

     株主総会の特別決議の要件が異なる(整備法14条3項)

旧有限会社と同じく、「総株主の半数以上かつ総議決権の4分の3以上」とされます(株式会社は「総議決権の過半数を有する株主が出席し、出席者の議決権の3分の2以上」会社法309条2項)。

特別決議とは、重要事項を決定する場合の決議の要件であり、定款変更の場合がその典型です。

さて、今回の質問によると、旧有限会社で取締役が2人おり、取締役会を開いて決議していたとのことです。旧有限会社では取締役が複数あるとき、業務執行は取締役の過半数で決定するのが原則とされていました(旧有限会社法26条)。

しかし、上記しましたように旧有限会社法上は取締役会という機関は規定されておりませんでしたから、この場合の取締役会というのは会社が任意で設置した機関(あるいは単なる呼称)と考えられます。

そして特例有限会社でも(会社法上の)取締役会は設置できず、取締役が複数の場合、業務執行は取締役の過半数の一致で行います。もっともこれは通常の株式会社でも同じことです(取締役会非設置会社では業務執行は取締役又はその過半数の一致で行うのが原則、会社法348条)。

従って当然取締役会設置会社である旨の登記も不要です(不可能)。

以下続きます。

⇒「会社法FAQ」シリーズの第1回目の記事、前回の記事

⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の記事

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の

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この場合の「公開会社」とは発行する株式の全てについて譲渡制限のない会社を言います(会社法2条5号)。旧有限会社法では持分譲渡には制限がありました(社員以外の者に譲渡する場合は社員総会の承認が必要)が、特例有限会社もそれを引き継ぎ、定款上譲渡制限規定がある(及び株主に対する譲渡は承認されている)ものとみなされます(整備法9条)

株式の譲渡制限というのは、会社にとって都合の悪いものが株主になることを防ぐためのものです。一般的には株式に広く流通性を持たせて資金調達を図る必要が無い限り、譲渡制限を設けています。逆に株式の流通性を高めようとするのであれば、特例有限会社としての保護を受ける事は許されません。

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2006年5月 3日 (水)

会社法よくある質問 3 有限会社だが取締役2人で「取締役会」を開いていた。これからはどう変わる?・・・・そもそも既存の有限会社はどうすべきか。

今日の質問は次の様なものです。

有限会社で取締役が2名います。今までは取締役会を開いて決議をしてきました(代表取締役選任など)が、これからはどうなるのでしょうか。取締役会設置会社という事を登記する必要が出てくるという事も聞いたのですが・・・。」

まず、会社法の施行(5月1日)に伴い、有限会社法は廃止され(整備法1条3号)、新たに有限会社を設立することは出来なくなりました。既存の有限会社は会社法のもとでは「株式会社」として存続します(同法2条1項)。

 ※「整備法」とは「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」のことです

従って、従来の「社員」(出資者)は「株主」、「持分」は「株式」、「出資一口」は「一株」に、それぞれみなされます(同法2条2項)。

但し、会社法施行後に商号(会社名)を「○○有限会社」「有限会社○○」から「○○株式会社」「株式会社○○」と変更しなければ、「特例有限会社」として(同法3条)、その他の株式会社(従来からの株式会社及び会社法に基づいて設立された株式会社)とは異なる特例的取り扱いを受けることが出来ます。

特例的取り扱い(会社法の適用除外)の主なものは次の通りです。

 取締役及び監査役の任期の制限(会社法332条、336条)がない(同法18条)

 休眠会社(12年間登記をしていない株式会社)でもみなし解散手続き(会社法472条)されることがない(同法32条)

③決算公告(決算期に関する貸借対照表等の公告、会社法440条)をする必要がない(同法28条)

以下、続きます。

⇒「会社法FAQ」シリーズの第1回目の記事

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2006年5月 1日 (月)

委員会設置会社~本日会社法施行です

先日の記事で、某大企業ホールディングカンパニー(委員会設置会社)の方からご連絡を頂いたお話をしましたが、今日法務部の登記担当の方がお見えになりました。要は、どの程度の実力とキャパがあるのか見てみようという趣旨だったのだと思います。

委員会設置会社の登記をやったことがありますか」と聞かれ、正直に「ありません」と答えました。そして、「やったことはありませんが、未知の分野への対応力も非常に高いと自負しております」と答えました。もっともあるクライアント企業で委員会設置会社への移行を検討されていた会社がありましたので、その点の勉強はしておりました(勉強したのはワタシではなくウチの会社法グループですが)から、「未知の分野」とはもう言えないのですが。

また、同席したウチの会社法グループの一人は、「特に難しいことはないですが、組織構成上の規制が多いので気をつける必要があります」とお答えしていました。

彼が言いたかったのは、委員会設置会社の意義(コーポレートガバナンスの適正化・合理化・機動化=執行役への権限委譲による業務の迅速化と三委員会によるその牽制)を踏まえた上で、株主総会、取締役会、執行役、三委員会、会計監査人という登場人物の役回りを理解することが必要だという事だったのだと思います。

ただこれは、今回の会社法改正の一つの眼目である、会社の実体(及び目標とすべき姿)に応じた柔軟な機関設計という概念が理解できていれば、その究極の形態としておのずと理解できることだと思います。これも「法的思考」の重要な要素、「類推力」の機能です(→法的思考シリーズ)。

今、ウチ事務所では、人材育成プログラムの一環として、コンサルタントの先生によるコーチングプログラムを導入していますが、先週の課題は①ウチの事務所の「売り」はなにか②自分の売りは何か、それぞれお客様に説明するつもりで具体的に答えよ、というものでした。

このうち①については「規模」「機動力」「お客様の立場にたったサービス提供」「優秀なスタッフ」「責任ある対応」等々、それぞれ思い思いに答えていましたが、中に「未知の分野への対応力」というものがありました。

まさしく未知の分野へのチャレンジ精神が無ければ、新しい展開は望むべくもありませんし、成長もないと思い今日までやってきました。これがウチのDNAとして(すみませんM先生、パクリました)受け継がれてきているな~と大変嬉しく思った瞬間でした。

⇒「会社法」シリーズの第1回目の記事

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2006年4月25日 (火)

会計参与、会社法施行前の設置は可能? その3

今日は不動産フォーラム・第二期信託法研究会の第4回。株式会社サタスインテグレイト本社にて、立キャピタル信託株式会社の高井敏男経営管理部長を講師にお招きして、日本で未だ4社しかない運用型信託会社の免許取得まで、そして営業開始半年間の、極めて興味深いお話をお聞かせいただきました。

コーディネーターは信託法の権威、波大学法科大学院長の新井先生。新井先生、質疑応答で二度に渡って話題を振って頂いたにも関わらず満足なお答えが出来なくて申し訳ございません!

エスクローの倒産隔離に関して証券化ストラクチャーが使えないかという事は以前検討したことはあったのですが、信託宣言の応用というところには考えが及んでおりませんでした。お恥ずかしい限りです。セキュリティトラスティに関しても、勉強不足で申し訳ございません(改正信託法案をさらっと読んでわかったような気になっていました)。

最終回までには名誉挽回いたします・・・。

さて、今日の本題です。

060422_004昨日の記事で、会社法施行前の会計参与設置(選任)は、現行商法上に根拠規定が存在しないためそもそも決議不可能であるとする「会社法施行前後の法律問題」(郡谷大輔編著、商事法務)の見解を紹介しました。

しかし同書は、会社法施行前であっても、「会計参与設置会社となる旨」の「定款変更決議」は可能であるとしています(4頁)。

この違いはどこにあるのでしょうか。

060422_003 同書によれば、「定款の変更は、現行法の定款変更の規定に基づくものであり、条件付で会社法の制度を前提とした規定を設けることができるかどうかは、当該規定に基づく定款変更の内容の話であり、定款変更自体は、現行商法に根拠があるものといえる。」

しかし、「会計参与設置会社となる」ということも、現行商法上は根拠規定がないわけですから、やはり設置(選任)自体と同様に会社法施行前には決議不可能であると考えざるを得ないのではないでしょうか。

逆に、会社法が公布されている以上、施行日前であっても総会において十分な議 060422_002_2 論が可能であり、決議自体が可能である(効力は施行日まで発生しない)と解することもできるのではないでしょうか。

確かに、定款という会社の根本規範を定める行為と、会計参与選任という個別具体的な決定とを同レベルで考えるのは妥当でないかもしれません。条件付決議を認めるか否かについて、定款変更とそれ以外とで別異に取り扱うというのも不合理ではないかもしれません。

しかし、その理由を前掲書のように現行商法上の規定の有無で説明するのは今一つ説得力に欠けるのではないでしょうか。

それよりも、葉玉さんのブログ(会社法であそぼ)にあるように(質問いろい())、「条件付定款変更は、これまでも例があるので良いけれども、定款以外の決議については、条件付が広がるのは良くないのではないか」という、実質的判断に基づくものであると正直に言った方が良いのではないでしょうか。

⇒会計参与の条件付決議の最初の記事

⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の記事

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2006年4月24日 (月)

会計参与、会社法施行前の設置は可能? その2

1月31日の記事で、「会社法施行前の会計参与設置決議は可能」である、という事を書きましたが、これに反する見解が会社法立案担当者の執筆した書籍の中で示されました。

060422_001 その書籍は「会社法施行前後の法律問題」(郡谷大輔編著、商事法務)。今月20日に発売されたばかりの本です。

同書は「施行日前には会計参与の選任をすることができない」(6頁)としています。

理由は、現行商法上に根拠規定が存在しない決議事項については、施行日前の株主総会は、これを決議する権限を有しないから、決議の効力発生を施行日以後としたとしても、そのような決議をすることはできないというものです(5頁)。

060422_009 言われてみればもっともなような気もしますが、ワタシがブログを書いた1月当時は、この点については可(条件付で)とする考えが実務上も有力でした。それはそうです。4月中に定時総会を開催しなければならない企業(1月決算の会社)にとっては、株主数によっては再度株主総会を招集するというのは大変な負担増になるのですから。

従いまして、この書籍の元となった商事法務の連載記事中でも条件付であれば可としており、照会した法務局の見解も当然「OK」でした。

当時の記事はこれらの調査・検討を十分行った上で、自信を持って書いたものです(といっても元原稿はウチ事務所の商事グループに書いてもらったのですが)。

結果的に、立案担当者の見解(おそらく法務局の取り扱いも同様となる?)とは反対の結論となってしまいましたが、その理由についてはワタシの力不足もあり今一つ十分には納得できていないのですが・・・。

その点はまた明日。

今日の写真は、昨日の続き。看板シリーズです。エリアもほぼ同じです。

⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の記事

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の

⇒「プチ信託登記入門」シリーズの第1回目の

⇒このブログのトッ

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