司法書士を「代える」
(本日のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)
登記申請の依頼者(売買当事者ー多くは買主、または融資をする金融機関)に対して、懸念要素のある取引に関しての調査を提案したところ、了解を得られず、逆に「司法書士を代える」と言われたらどうすれば良いでしょうか。
司法書士は人形や置物ではないのですから、簡単に「代える」と言われても困るのですが、法的な観点からはそんなに無茶な話でもないのです。
依頼者が司法書士に登記の申請代理を委託するのは、法律的には契約(依頼者と司法書士との合意)に基づくものです(委任契約ないし準委任契約等)。双方の合意に基づくものですから、通常は一方的にやめる(解除する)ことはできないのが原則です。しかし、委任契約は信頼関係に基づくものですから、双方がいつでも解除できるとされています(民法651条1項)。
ですから、依頼者が司法書士の契約の履行内容等が気に入らない(信頼できない)と思ったら一方的に「代える」(解除する)こともあながち不当とは言えないのです(損害が発生した場合の賠償の問題は別です。同条2項)。一般的な契約法理からも、場合によっては債務(登記の申請)不履行を原因とする解除を主張される可能性も否定できません。
もちろん司法書士側からすれば、依頼者の利益(危険の排除)のために行った提案を理解してもらえず、委任契約を解除されるのは不本意です。しかし、当事者が、危険の存在を認識した上でそのまま取引を続行すると決めた場合(あくまでも取引を続行するかどうかを決定するのは当事者=依頼者であり、司法書士の受任内容は決定した後の登記の手続きのみ)、司法書士にはそれを拒絶する権利はありません。
しかし、あなたが事故発生の可能性が高いと判断しているときに、「司法書士を代える」と言われて「はいそうですか」と素直に引き下がれますか?
続く。
| 固定リンク | 0
コメント