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2006年6月 1日 (木)

外国人名義の不動産を取得するには?

今日は時間がなかったので、過去のネタを引っ張り出してきました。久しぶりに司法書士らしい(?)題材です。

以前にこんな質問を受けました。

《日本人女性が中国人男性と結婚し、日本に居住。夫(中国籍)名義で住宅(土地付一戸建)を買った。その後夫は中国へ帰国。帰国の際、夫は住宅の権利を放棄する旨の念書を妻の許に残した。

この場合妻名義に所有権移転登記をすることが出来るのか。出来るとすればどんな書類を取得する必要があるか(住民票や印鑑証明にあたるもの)。また、夫には何がしかの「ハンコ代」のようなものを支払う必要はあるのか》

それに対してこんな回答を致しました。

まず、「権利放棄」する旨の念書があるという事ですが、それは奥様に譲渡すると解釈できるものでしょうか。不動産所有権を「放棄」しても、その不動産は誰のものでもないということになり、法の規定により国のものになるだけです(民法239条2項)。

不動産が奥様との共有であり、自己の持分を放棄するという事であれば、その持分は奥様に移転します(「譲渡」と同じ)。民法255条。

次にこの「譲渡」の意味ですが、これは奥様に贈与するという事でしょうか。あるいは奥様が対価を払って買い取ったという事でしょうか。買い取ったというのであれば代金の授受が必要ですが、代金の授受が無ければ贈与となり、贈与税がかかる可能性があります。これは共有持分の放棄であっても同じであり、対価の支払いが無ければ贈与となります。

上記の問題がクリアされたとして、登記に必要な印鑑証明書や住民票に代わる書類は、住所の変更について、及び登記委任状にされた署名が本人のものである事についての在日中国大使館・領事館又は中国公証人の証明書です(昭和25.2.15-民甲432民事局長回答、昭和34.11.24民甲2542民事局長通達)。


また、この場合贈与証書又は売渡証書(登記原因証明情報)も作成が必要で、これについても署名が必要となります(先の念書にその旨の記載があれば別ですが)ので、同様の証明書を取得することが望ましいでしょう。但し、本人が公証人役場へ出向いて、その場で委任状及び贈与証書・売渡証書に署名する必要があります。

登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士が本人の意思確認をすることが必要になります。面談して本人性及び売却意思の確認をしなければなりません。帰国前に司法書士による確認が出来ていない場合は、日本に来て頂くか、司法書士がこちらから出向いて確認を行う必要があります。来日される場合は、先の証明書は在日中国大使館又は領事館で出してもらうことも出来ます。

面談での意思確認が難しい場合は司法書士に委任することは困難だと思われます(書面の授受は郵送でも可能ですが)ので、本人申請(書類作成及びアドバイスのみ司法書士に依頼)でやって頂くことになると思います。

ところで「ハンコ代」という事ですが、上記の権利関係が解決しているのであれば、特に心配する必要は無いと思いますが、新たに署名したり公証人の証明書を取得してもらったりという手間がかかりますので、その実費と手間賃程度はお支払いした方がよいでしょう。所謂利害関係人(例えば後順位担保権者)に支払うような額の「ハンコ代」までは不要だと思います。

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