代表取締役の逮捕と新たな選任~LDMのケースから
ライブドアマーケティング社で、取締役・代表取締役の逮捕にともない新たに代表取締役の選任を行いましたが、その手続きに問題があったのではないかという指摘がありましたのでそれについて少し。
経緯は、同社の取締役6名中3名(代表取締役1名含む)が逮捕され、事実上取締役会に参加できなくなったため、残りの3名のみで新代表取締役を選任し、その後逮捕された3名が取締役を辞任したのですが、選任が定足数を欠き無効ではないかという指摘を受けたため再度取締役会を開いて選任したというものです。
代表取締役の選任は取締役会の決議によって行われますが、その決議の「定足数」(議事、決議をするのに必要とする最小限度の構成員出席数)は、全取締役の過半数とされています(商法260条の2第1項)。
例えば取締役が3人(最低法定数)の会社であれば2人が出席しなければ、取締役会自体が成立しえないということです。
では、今回のケース、つまり取締役数が6人の会社で、3人が逮捕され事実上取締役会に出席できなくなった場合はどうでしょうか。
仮に3人が一定の犯罪で一定の有罪判決を受けた場合は、その判決が確定した時点で取締役としての地位を失います(商法254条の2)。従って取締役数は3名ということになりますので、2名以上の出席があれば定足数は満たします。3人が死亡した場合も同じです。また3人が辞任すれば取締役数は3人になりますから、2人の出席で取締役会は開催できます。
しかし逮捕されたというだけでは取締役の地位を失う訳ではなく、また、辞任前であるため依然として取締役総数は6名であり、取締役会の開催のためには4名以上の出席が必要となります。もちろん逮捕拘留という異常事態であり、会社の適正な運営のために緊急避難的に代表者を選任したことを責めることはできないのですから、選任が有効であると強弁せず、速やかに有効な決議を行えばそれで済んだ事だと思います。
この場合最も現実的な方法としては、逮捕された取締役を急ぎ辞任させ(1人辞任すれば3人で決議可能)、その上で取締役会を開く、あるいは先に代表者の選任決議(無効ですが)を行っておき、辞任後取締役会を開いて追認するという方法が考えられます。事実今回のケースでも翌日には2名(堀江、宮内両取締役)が辞任し(定足数2名)、その後(指摘を受けたためですが)取締役会を開き選任決議(または追認決議)を行っています。
その他の方法としては取締役を解任する、新たな取締役を追加選任する(1人追加して7人となれば、残る3人+新たな1人=4人の出席で可)などの方法も考えられますが、臨時株主総会を開催する必要があり、迅速に行うということは難しいでしょう。監査役で認められたように予め補欠取締役を(定時株主総会で)選任しておく(厳密には員数欠きませんから「補欠」ではありませんが)などの手続きが認められる可能性もあるのではないでしょうか。
ところで、今度の新しい会社法(5月施行予定)ではこの点はどうでしょうか。
まず、公開会社(株式に譲渡制限を全くつけていない会社)以外は取締役会の設置は不要とされておりますし、員数も1名で足りるとされています。
取締役1名の会社でその取締役が逮捕された場合、どうすればよいでしょうか。
この場合は新たに取締役を2名選任する(総数3名)しかないでしょうが、株主数も少ない会社が大半でしょうから、手続き的にはさほど難しいことはないと思われます。
尚、新しい会社法では取締役の欠格事由についても改正が為されました(破産者が外され、犯歴に証券取引法、破産法、民事再生法、会社更生法等に定める罪を追加)が、流石に「逮捕」のみでは欠格にはなりません。
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