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2008年4月11日 (金)

特約その2「所有権留保」―今さら聞けない「新・中間省略登記」⑧

「超・入門」の続きです。

前回は、1番目の特約「第三者のためにする契約」についてお話しました。

今回は、2番目の特約です。

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【第一の売買契約の2番目の特約】

「Bによる所有権の移転先の指定がない限り、売買代金完済後も所有権はAに留保される」

これはいわゆる「所有権留保の特約」です。

不動産の売買契約というのは、売主が不動産(に関する一切の権利)を買主に移転する事を約束し、それに対して買主が代金を売主に支払う事を約束する事によって成立します。

従って通常の売買では、買主が代金を全額支払うと同時に所有権も売主から買主に移転します。

しかし、直接移転売買では、1番目の特約(第三者のためにする契約)で、所有権は直接AからCに移転するとされていますので、Bが代金を全額支払ったとしてもそれだけでは(所有権の移転先としてC又はBを指定しなければ)所有権は移転しません(Aのところにあるままで動きません。これが「留保される」ということの意味です)。

それを言っているのがこの2番目の特約です。

もっとも、この特約がなくても、1番目の特約から、Cが指定されていない段階では所有権がAに留保されるのは明らかです。

にも関わらずこの特約をあえて規定するのは、直接移転売買が、先に書いた「通常の取引形態」とは異なり、買主が代金全額を支払っても所有権を取得せず売主に留保するという、かなり変則的な取引態様であるため、その権利関係をより明確にしておく必要があるからです。

尚、この特約を実際に契約書に書く場合はこんな表現になります。

(所有権留保)
第○条 売買代金全額を支払った後であっても、買主が買主自身を本物件の所有権の移転先に指定しない限り、買主に本物件の所有権は移転しないものとする。

→かなりくどいですが明確で、違う解釈をされる余地を極めて少なくしています

(続く)

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2008年4月 9日 (水)

特約その1「第三者のためにする契約」―今さら聞けない「新・中間省略登記」⑦

2回ほど現在の実務の状況(問題点)についてお話しましたが今回はまた「超・入門」に戻ります。

前回は、「新・中間省略登記」(直接移転売買)を実現するための契約書はどう作るか、特約条項の概要をお話しました。

今回は、それぞれの特約についてもう少し詳しくご説明します。


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   第一の売買契約       第二の売買契約
A------→B------→C

【第一の売買契約の1番目の特約】

「所有権はAからBの指定するもの(B自身を含む)に対して直接移転する」

この特約が最も重要です。「第三者のためにする契約」と呼ばれる特約です。

これはAとBとの間の契約の中で、契約の当事者でないCに対してAが契約上の義務を果たす事を定めるというものです。

売買契約ですと、売主Aが売買契約上の義務、つまり所有権移転義務を、第三者Cに対して果たす、つまりCに直接所有権を移転するということになります。

他に第三者のためにする契約の例として、例えば生命保険契約(Aが保険会社、Bが被保険者、Cが保険金受取人)があります。

また、この特約を実際に契約書に書く場合はこんな表現になります。

(所有権の移転先及び移転時期)
第○条 売主は、本物件の所有権を買主の指定する者(買主を含む)に対し直接移転することとする。

(続く)

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2008年4月 3日 (木)

直接移転(新・中間省略登記)の依頼を断る司法書士?

昨日の記事で、住宅新報紙が直接移転取引の受託拒否につき「司法書士法違反である」と断じている点について書きましたが、この点についてもう少し考えてみたいと思います。

私のセミナーでも、その点は論点の一つとして取り上げてきておりまして、やはり直接移転売買(取引)の受託拒否は司法書士法違反となる可能性が高いという事を申し上げています。

現時点での司法書士の直接移転に関する取り組み方を、そのレベル別に整理すると、次の様になると思います。


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Ⅰ 積極的にその意義を認め、推進・普及させようとしている者(私です)。

Ⅱ 普及させるというところまで積極的ではないが、これを自分の業務の差別化要素(の一つ)として利用しようとしている者(もちろん私もこういった意図はあります)。

Ⅲ 積極的に利用しようとはしていないが、十分勉強し、依頼があれば断る事なく受託しようとしている(実際に受託している)者

Ⅳ 積極的に反対するわけではないが、よくわからないので依頼があっても断っている者(断ろうとしている者)

Ⅴ 積極的に反対している者
 ① 禁止されている中間省略登記を実現する「脱法行為」である事を理由とする者
 ② 実体上所有権が直接移転していないという事を理由とする者

 ③ 理由を明確にせずに反対している者

このうちⅣとⅤ③が司法書士法21条違反であることは明らかだと思います。司法書士法21条は、司法書士が依頼を断るためには正当な事由が必要であるといっているのですが、これらはそもそも理由を明らかにせずに依頼を断っているからです。

Ⅴの①も、直接移転売買が脱法などではない事は何度も色々な所で書いたりお話したりしている通りです(まだご覧になっていない方は、こちらからウチの事務所の無料解説書をダウンロードしてご覧下さい)。

従ってこれも正当な事由にはあたらず、依頼の拒絶は司法書士法違反となると思われます。

Vの②も一般的にこのスキームで直接移転が生じないというのであれば、それは正当な事由とはいえません。これも無料解説書や本ブログ(特に「今さら聞けない・・・」シリーズ、第1回はこちら)をご参照下さい。

しかし、具体的案件について実体を調査した結果、直接移転でなく、登記名義人Aから中間者Bに所有権が移転していると判断し、それを理由として直接移転の登記を断るという事であればこれは正当な事由に該当し、司法書士法違反にはなりません。

実際こういうケースはウチの場合でもたまにありまして、その場合は当然直接移転登記をお断りしています。

例えば、先日もあったのですが、グループ会社間で社有物件(最近はCREという言葉が流行りですが)を売買し、代金の支払いも引渡しも終わっているのだが、登記をせずに放置してあり、たまたま何らかの理由で登記の必要性が生じたため、「中間省略」で出来ないかという相談を受けたケース。

また、AB間が会社分割であるケース(相続や合併ならわかりやすいのですが、会社分割も同様に包括承継であり通常は直接移転はできないと解されます。只合併と会社分割は契約ですので、考える余地がなくはないかもしれませんが、包括承継人自体を第三者とすることになりますから考えにくいと思いますが)も時々あります。

ただ、これから取引を行うというケースでは、私の方で実体の形成に関与し(契約書その他を起案又は修正)、中間者に所有権が移転しないような実体を作りますから、問題なく直接移転の登記が出来る事になります。

私は、同業者である司法書士の方々に、積極的にこの仕組みを推進・普及させて欲しいとまでは望みませんが、少なくとも当事者がこの仕組みを利用する事を望んでいるときに、正当な事由なく直接移転登記の依頼を断るようなことはしないで欲しいと思っています。

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2008年4月 2日 (水)

「どうすれば中間省略をやってもらえますか?」

住宅新報の今週号(2008年4月1日号)の「中間省略登記/直接移転売買Q&A」(最終回)はご覧になりましたか?

不動産業者の方からの「司法書士が直接移転売買での登記をやってくれない」という質問に「司法書士法違反である」と一刀両断に切り捨てています(「犯罪」とまで言っています)。


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まさしく司法書士自身が「ブレーキ」になっているという噂を裏付けているような質疑応答です。

私の耳にも色々な噂が飛び込んできます。

極端な例ですと、先日もお伝えした、「司法書士会が直接移転を行わないという申し合わせをしている」とか、「司法書士会長がやらないように指導している」などというものまであります。

調べてみると流石にそこまでの事実はないようですが、「火のないところに煙は立たず」で、そういう噂が立つのにはそれなりの理由があるようです。

住宅新報のQ&Aにあるように、「よくわからない」「中間省略登記そのものに反対である」という司法書士が、依頼を断る口実としてその様なことを言っているのかもしれません。

いずれにしても「新・中間省略登記」(直接移転売買)に関する理解不足が原因となっていると思われます。

ウチの事務所でお配りしている無料の解説文書の「中級編」のQ&Aで「新・中間省略登記」は適法なのか」、とか「順次売買でもできるのか」という質問を取り扱っているのですが、これはこういった理解不足や誤解に答えるために書いた部分です。

これらの質問に対する答えはもちろん「適法」、「可能」なのですが、こんな質問が出てくる背景がむしろ重要である(これが「ブレーキ」となっている方達の「誤解」の原因となっている)と考えています。

詳しくは無料解説文書をご覧下さい(お申込はこちらまで)。いずれ時間があればここにも書きたいと思います(「今さら聞けない」のシリーズ、これは「超・入門編」でありますが、これを書き進めていけば何れこの点にも触れる事にはなると思います(「今さら聞けない」の第1回はこちら)。

また、日本司法書士会連合会が司法書士向けに「実務上の留意点」を配布していますが、これは「よくわからない」という理由で依頼を断る事がないようにするというのがその趣旨です。

尚、「中間省略登記に反対である」というのは(その適否はともかく)、「新・中間省略登記=直接移転売買」を拒否する理由には全くなりません。「新・中間省略登記」とは「中間省略登記」とは全く異なるものだからです(その目的とする所は同じですが、目的が同じだからと言って否定するのは法律家の議論ではありません)。

ところで「月間登記情報」(金融財政事情研究会)の四月号(557号)に、中間省略登記をテーマとする議論が掲載されたという事です。

座談会形式で、顔ぶれはおなじみの先生方の様です。そのうちの御一人、日本司法書士会連合会の常任理事の今川嘉典先生とは以前の記事で書いた司法書士会の研修の講師を勤めさせていただいた時にご一緒させて頂きましたが、大変な切れ者という印象で(その際の先生の講演の概要はこちら)、もちろん「ブレーキ」をかけようとしている方などではありません。

記事を読んだらまたコメントさせて頂きたいと思います。

という訳で今日は「今さら聞けない・・・・」はお休みです。

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