こんなスタンスの司法書士もいるのです。
夏休み特集第二弾として、昨日の方とはかなりスタンスの違う司法書士さんの文書をご紹介します。これは謂わば公開質問状であり、ネット上でも既に公開されておりますので目にされた方もいらっしゃるかとは思いますが、改めてご紹介させていただきます(再録についてご本人の了解は頂いております)。
日本司法書士会連合会 御 中 中間省略登記について 平成17年3月22日 大阪市中央区谷町1丁目6番4号 天満橋八千代ビル9階 司法書士 川 上 憲 一 1.連合会・単位会の対応への疑問 先般、新不動産登記法が施行され、暫くの間は各司法書士の現場で手続的に若干の混乱が生じることは止むを得ない。 しかし、実体法上の請求権の問題として捉えなければならない中間省略登記に関して、各研修会・連合会における対応・説明が全く実体法と判例を無視し、あまりにも制度と手続に偏っているため実のところ非常に困惑している。 各研修会においても、多くの出席者が中間省略登記不可の理由を求めたが、結局納得した様子のないまま着座していたことは御存知のはずである。それは、壇上からの説明がおよそ法律とは呼べない上に、その前後に連合会が行ったと思われる解説が最高裁の登記請求権に関する判断を完全に無視しているため奇異に感じ、同時に会の対応が本当に正しいのか疑いを持ったためである。 個人的には、連合会が司法書士は実体法を重んじる法律家であるという立場を堅持するのならば、前記対応・説明等は法的思考が時代錯誤であり、又、そこから派生して、連合会は国・法務省・法務局に対し、登記請求権に関して国のダブルスタンダード的な扱いを早期に是正するか、登記制度そのものを見直すよう働きかけるべきである、という結論に至るはずであると考えている。 2.実体法としての中間省略登記請求権 不動産の所有権が、A→B→Cと移転したとき、登記上は原則としてA→B、B→Cの2段階の所有権移転登記申請をしなければならない。 これは不動産登記法が、権利の得喪事実をあるがまま登記に反映させることにより、その得喪前後の法的安定を保ち、取引の安全を確保することを主たる目的とするためであり、手続法の目的を達成するための原則としては当然である。 然し、原則があれば例外の存在は避けられない。それが旧不動産登記法の成立直後から発生することになった。 現実の不動産取引界においては、上記A→B→Cの権利変動が生じたときにA→Cの中間省略登記を行う場合が少なからず存在した。明治時代には、この中間省略登記について、所謂「(事実に)基づく登記」ではないのに、その登記自体を法的に有効としてよいのか否かということが争いとなったが、大正5年9月大審院が中間省略登記の特約は中間者の同意があるときは有効であると判示したことにより、当該中間省略登記そのものに関する有効無効の争いには一応の決着がついた。 その後時を経て、昭和40年9月には最高裁は、「登記名義人と中間者の同意がある場合に限り中間省略登記請求権が認められる」と判示し、現在の所有権者から登記名義人に対する直接の登記請求権という実体法上の「請求権」そのものを認めるに至った。その後も裁判において、この「登記請求権」について同様の判断がなされ、現在では既になされた中間省略登記について例え中間者が同意をしていない場合でも、特段中間者の保護に値する法的利益がなければA→Cへの直接の中間省略登記を有効とするにまで至っている。 上記A→B→Cの所有権移転の事例において、今日では、A→Cの移転を命ずる判決をもって登記申請をするとき、どの法務局でも当然のように受理される。これは、単に法務局の先例主義によるものではなく、当初の取扱いにおいて不動産登記法の原則を固持しなくとも実体法のなかで全てが解決されているのであるから法的に安定であり、取引の安全を害さないという判断が背景にあるからと解してまず間違いない。 なお、この判決による登記の場合は判断の通用力・執行力があるから中間省略登記を認めているのだとする漠然とした反論はあるが、「請求権の実現」という観点からすれば判決による登記も一般の不動産売買による登記と何らの変わりはない。 判決は、実体法上争いのある権利変動事実について分析・認定を終え、その権利変動事実に基づいて登記請求権を認定し、民事執行法第174条によって相手方の申請意思表示を擬制することにより登記実現の効力を与えたということにほかならないが、通常の不動産売買による登記をする場合は同様の過程のうち申請意思表示の擬制がなく、代わりに登記申請意思表示そのものの存在があるだけで、権利変動事実の確認及びその権利変動事実に基づく実体法上の請求権が登記の実現の効力を与えていることについては全く同じである。請求権の本質ではない紛争の存在という要素に惑わされなければ、両者の登記請求権の間に何らの違いがないことに留意願いたい。 論点が若干それたが要するに、昭和40年9月の最高裁判例の意味と価値は、登記名義人と中間者の同意がある場合に限ってはいるが、実体法上の権利変動事実に基づいてC→Aへの中間省略登記請求権を一般化したことにある。つまり、A→B→Cの権利変動事実において、CはABの同意を前提としてAに直接移転登記せよと請求する権利を国が認めたということであり、この請求権の存在は裁判の提起をしたか否かに全く関係がない。移転登記はこの国が認めた請求権をもととして実行されるのである。判決があるから登記を求めることができるのではない。登記を求めることができる権利があるから判決が得られるのである。判決を含め登記は全てこの実体法上の請求権を元としている。 手続法が原則を重んじることは否定しない。然し、前述したとおり原則には例外があり、その例外が昭和40年9月の最高裁判例の示す中間省略登記請求権なのである。尚も原則論だけが突出すると結果的に国が認めた実体法上の請求権を国が阻害することになり、それは国の行う矛盾でしかない。 それでも「判決による中間省略登記だけは認められる」とするならば、国(この場合は主として法務局)はその合理的理由を明らかにしなければならない。一つの登記請求権の行使による登記簿への記載を求める行為が、法律官庁である裁判所を通過させると実現するにも拘わらず、同じ法律官庁である法務局を通過させると実現されない、というのは国による実体法上の請求権に関してのダブルスタンダードだからである。もしかすると、法務省は縦割行政による弊害、後日の課題ということで終えるつもりなのかも知れない。 只、奇妙に思えるのは、連合会は新法のもとでの中間省略登記を公式に否定して関係諸団体と協議まで行っているが、国(主として法務局)の方は中間省略登記に関して何ら公式見解を表明していないことである。だとすると、最終的には原則論に偏りすぎた連合会の勇み足ということになるのであろうか。 更に敷衍する。連合会は、新法下でも中間省略登記を行う司法書士は倫理に反するとしている。 では、前記最高裁判決の他実体法上の「中間省略登記請求権」に基づく登記を命ずる判決は全部倫理に反することになるというのか、それとも、裁判所が命じた場合だけ倫理に反せず特別ということになるのか、何故判決中に登記原因証明情報として中間省略であることが明示されているのに新不動産登記法上も添付書類の不適格にはならないのか、これらの場合に官が特別で民と区別する理由があるのか、その区別が合理的なのか、それともこの区別や倫理は司法書士のみに課されているものなのか、司法書士のみに課された理由は何なのか、等々やや詰問調ではあるが疑問が尽きない。然し、それら疑問の源は全て連合会が行った指導と対応及び説明にある。 本書は全国の単位会、司法書士に公開して戴きたい。中間省略登記に関して連合会の行っている指導や説明等に対し、私と同様実体法を扱う者として言いがたい違和感と不信感を持っている者が多く存在するからである。又、連合会は各単位会と全国の司法書士に指針を発すべき立場にあり、それ故今回の指導等に及んだというのであれば、後日に禍根を残さないよう早期のうちに全国の司法書士に対し以上の疑問について法律的に明解な回答を行うべきである。 蛇足ながら、連合会は「国民の権利の保護に寄与するために」のスローガンを掲げているが、その権利の保護とは個々の国民の請求権の実現にほかならず、反対に言えば、「請求権」を扱うことができないものは「国民の権利の保護に寄与する」ことなど絶対にできないという結論になることを厳に自覚して戴きたい。
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コメント
登記原因証明情報の提出が必要とされたことは、これまでの判例理論に影響を与えるものではないはずであり、したがって中間省略登記の可否にも何ら影響はないと考えます。
そもそも中間省略登記に関しては、中間者の不動産取得税の脱税行為であるという問題と、中間者に各種のリスク負担(脱税行為とはいえ課税リスクがある点も含みます)が生じるという問題があったはずで、この点についても変わっていないはずです。
やはり、契約行為に中間者を関与させつつ、所有権については中間者に一度も移転しないようにして、実体と登記をあわせる工夫をする必要があると思います。これは小手先の技術的な発想ではなく、公示制度や租税制度に反することなく正々堂々と手続をすることを意味するのであり、むしろ正攻法だと考えます。(なお、中間者が不動産取得税を支払うのであれば、従前どおりの中間省略登記は認められて良いはずです。)
取引関係者のニーズにあわせて柔軟な対応が出来るよう、法律家の努力が求められるところだと思います。
投稿: 根井真 | 2005年8月18日 (木) 19時37分
ある中間省略登記事件簿
ハウザー:先生、今まで通り中間省略登記の同意書も有りますので登記をお願いいたします。
司法書士:中間省略登記の同意書をもらっても、中間省略登記を是認したことではないですよ。
ハウザー:是認?誰が是認する権限があったのですか?
司法書士:買い主と司法書士です。法律的には中間省略登記が当事者間において有効に成立したことの保証的意味が強いです。
ハウザー:では今回の法改正によって同意書があっても中間省略登記は認められないということですか?
司法書士:同意書があっても、もともと中間省略登記は認められていません。
ハウザー:じゃー今までどうして登記が通ってきたのでしょうか?法務局を欺罔していたのですか?
司法書士:欺罔ではなく、当時は申請書副本が認められていたからできたのです。
今回の改正で申請書副本は廃止され、登記原因証明情報が必須の添付書類となりました。
その内容は、A→B→Cと売買があった場合、A→B→Cそれぞれの契約原因、物権変動の事実関係を正確に表示すべきことを要求されている。だから、A→B→Cの物権変動をA→Cとあったが如く登記申請すると、登記原因情報の内容を偽ることになる。
ハウザー:では旧法当時は、委任状の売り主をA、買い主をCと偽ってAからCへ直接登記してもよかったのですね。
司法書士:そうではないが、判例も認めていることであり、書士会としては当事者全員から同意書をもらっておけば職責を全うしたことにしようとなったと思う。
ハウザー:判例は変更になったのですか?
司法書士:変更になってはいません。ただし、学説上中間省略登記は脱法行為とする学説はあります。
ハウザー:判例が変更になっていないのであれば、これまで通り委任状も登記原因証明情報も売り主A、買い主Cとして登記しても問題はないのではないか。仮に裁判になったとしても登記は有効とする判決が下されるのではないか。
司法書士:Aから直接Cへ売却されたという内容の登記原因証明情報であれば虚偽の事実関係を記載することになるので司法書士は嫌がるでしょうね。
ハウザー:旧法では中間省略登記の同意書が免罪符になったが、新法だと同意書は免罪符にならないと言うことか?
司法書士:まぁーそういうことですねー 。
ハウザー:A→B→Cと売買があり、三者全員で中間省略の合意があった場合、CはAに対して当然に登記請求権を有しているのは我々業界の常識ですが、宅建の講習会でも大学の先生がCはAに対して直接Cへ移転登記する請求権を有していると言っていたが、登記はA→B→Cじゃないとだめということですか?
司法書士:そうです。
ハウザー:じゃー判決みたいに、即決和解で直接A→Cだったらいいのか?
司法書士:多分、昭和35.7.12民甲1580号民事局長回答、昭和39.8.27民甲2885号民事局長通達により通るでしょう。
ハウザー:登記原因証明情報に司法書士が事実関係を記述して義務者が署名捺印する訳ですね。
司法書士:そうです。
ハウザー:裁判上のものなら中間省略がOKで、当事者(裁判外の和解)間だと中間省略登記が認められない。過去において民事局が裁判所におもねった通達を出したからでしょうか。登記原因証明情報は昔の売り渡し証書のようなものでOKと法務省から回答が出ているそうですけど、あれも結構中間省略の代物だったらしいですね。登記原因証明情報は中間省略は不可で、売り渡し証書ならOKなのは何故でしょう?
司法書士:たぶん、登記原因証明情報は数年間法務局に保存され閲覧に供されるからでしょう。
ハウザー:先生どうでしょうか。そろそろ今回の事件を中間省略で受けていただけませんか。内も免許税は結構きついのです。免許税分をエンドに乗っけると価格的に売れなくなるのです。我々からしてみたら、新法になった言うてもちっともかわっとらんように見えるんですが。
司法書士: ・・・・・・
10年後
ハウザー:先生この物件を今契約してきました。決済は今月末日です。調査の方をよろしくお願いいたします。
司法書士:調査した結果、現在の名義はCで、契約の当事者もCですので当事者は契約書と合っています。Cが当該物件を取得した経緯は謄本上ではAから平成17年5月2日付売買で取得したことになっています。当時登記をされた事務所に確認をとって依頼した資料がこれです。①立ち会い調書、②中間省略登記の同意書、③売買契約書AB間、④売買契約書BC間。以上により現在の登記名義人は直接Aから取得したことがわかります。
ハウザー:先生何か問題があるのでしょうか?
司法書士:いや問題はないです。判例もこの登記は有効としています。ただ、この当時は登録免許税が結構高かったのでこのような中間省略登記が多かったのです。我々司法書士にとっても苦しい時代でした。登録免許税制度から韓国並みの登録料制度になってからは登記懈怠の罰則規定はあるものの、逆に登記を省略する方が減りました。
登記をして自分の権利を保全できる方が皆さんよいに決まっています。また、徴税サイドとしても不動産取得税、譲渡の事実関係が把握しやすくなったのです。
ハウザー:そんな時代があったのですか。じゃー先生来週の決済よろしくお願いいたします。
以上
平成17年5月7日
作成者
東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号
司法書士 大 門 幹 夫
投稿: 司法書士大門幹夫 | 2005年9月21日 (水) 09時51分