「中間省略登記」を必要とするような場面において、実体関係(契約及び物権変動)を見直すことにより、「中間省略登記」を必要とせずに、「中間者」への登記を不要とする方法が提唱されています(住宅新報紙「中間省略登記研究会」等)。以下両者を比較しつつ概要のご説明をいたします。
1. 第三者のためにする契約方式
「第三者のためにする契約+所有権留保+他人物売買+第三者弁済」
① AB間の売買契約
(ア) AがBとの間で自己所有の不動産の売買契約をし、所有権の移転・引渡しを第三者に対して行うことを約する(第三者のためにする契約 民法537~539)。
(イ) AはBが代金全額を支払った後も、所有権をBに移転しない旨を約する(所有権留保-依然所有権はAにある)。
② BC間の売買契約
(ア) BはCとの間でA所有の甲不動産の売買契約をする(他人物売買 民法560条)。
(イ) 売買契約の債務の履行としての引渡し、所有権移転は売主Bでなく第三者Aが直接行う旨を約する(第三者の弁済 民法474条)。
(ウ) Cが代金全額を支払うのと引き換えに、AはCに対して所有権を移転する。
2. 地位の譲渡方式
① AB間の売買契約
(ア) AがBとの間で自己所有不動産の売買契約をする(所有権移転時期は売買代金完済後とする)。
(この間、Bは売買代金を支払っておらず、従って所有権も移転していない)
② BC間の地位譲渡(売買)契約
(ア) Bが(Aの承諾を得て)Cに対して売買契約上の買主としての地位を譲渡(売買)する。これによってAC間の売買契約が成立する。
(イ) CがAに対して売買算代金を支払い、引換にAがCに対して物件を引渡し、所有権を移転する。
はじめからAC間に売買契約が締結されていた場合と結果的には同じである。
3. 両方式の差異=適用場面の相違
「第三者」方式は中間者が売買残代金を支払った後、更に転売をするために利用されるのに対し、「地位譲渡」方式は売買残代金を支払う前に、中間者が売買契約から離脱するために利用される。前者では売買契約が2つ(2段階)存在するが、後者は1つのみである。
典型例としては、「第三者」方式は買取-転売など転売益の取得を目的とするケース、「地位譲渡」方式はデベロッパー(特にJV)の用地仕入れで、即決のために中間者に一度土地を「抱かせる」必要があるケース(原則残代金支払いは未了=所有権も未移転)。
このように適用場面が通常異なるので、単純に優劣を論じることは出来ない。
但し、買取・転売のケース(転売益やバリューアップ分を売価に反映)でも、買取後所有権を留保することも理論的には可能なため、地位譲渡方式を用いることも考えられなくはないが、現実には使えないと言ってよいであろう。なぜなら、転売差益を「地位譲渡対価」として設定することは出来るが、これでは差益がいくらなのかという事が「ガラス張り」になってしまう(少なくともCには知られてしまう)からである。
もちろん、それ以前に、元売主と最終買主との間に直接売買契約が成立するとするのが甚だ不自然なことではあるのだが。
尚、「地位譲渡」方式は、先に上げたケースでは従前から普通に利用されていた方法であり、改正後の「中間省略」効果実現のための新手法として開発されたものではない。
4. 「第三者方式」の問題点
① 「A」の倒産リスク=所有権を留保している間に所有者が倒産したらどうするのか。
そもそも旧法の下でも中間者は登記留保というリスクを負っていたのであり、売主の信用状態に不安を感じる(差押、倒産、担保設定、二重譲渡リスク等)様なケースでは中間省略スキームを取らなかったのが通常であるが、むしろエンド(C)への説明として対策が必要とした場合、契約書中にそれを保全する記載をすることで足りる。それが詐害行為や否認の対象になるとすれば、そもそもはじめの売買自体が詐害行為・否認の対象になるということである。
又、取引手順においても実質的リスクを増大させない工夫がなされている。
② 対「エンド」対応=売主が所有権を持っていないことは売主の「信頼性」を害するのではないか。
特約による保全と、そもそも所有権を留保する目的がコストダウンにあり、それによって売価も押えられているということを説明すれば、信頼性の問題にはならないと思われる。
尚、「第三者方式」においては、売買代金受領後のAを実質的に取引から離脱させるための技術的な工夫が必要ですが、両方式の比較という意味からは重要ではないので、その点はのご説明は割愛してあります(契約書の記載例も同様)。
また、その他の方式(「契約解除-再契約方式」、「物権的合意方式」等)は上記2方式に比してあまり実体に即したものとは言えないと思いますが、機会があれば詳しく論じたいと思います。
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