2026年2月 6日 (金)

意思決定の改善 46

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

私の場合も例に漏れず「内部者の視点」から独立開業の成功可能性をかなり甘く見積もっていて、数々の失敗を経験してきました。

ではなぜ人は外部者の視点をなかなか取り入れられないのでしょうか。カーネマンらの研究では、「将来の見積もりや意思決定に関しては外部者が内部者よりも優れていることを示す説得力のある証拠」が示されました。

「外部者の視点のほうが過去の意思決定から得られた関連データをよく取り込んでいる」ということです。

にも関わらず「依然として私達は内部者の視点を信じ、それに沿って行動する傾向」があります。

その理由の一つに著者は「楽観主義と自信過剰」を挙げています。

さらにカーネマンらは、「人は意思決定のプロセスにさまざまな詳細事項の全てを組み込むので、結果的にそれぞれの決定をユニークなものとみなす傾向がある」と言います。

「『いま、ここ』に集中してしまうがために歴史的なデータを見逃してしまい、またバイアスの暴走を許してしまう」のだそうです。

「その結果、私達は外部者の視点が十分に利用可能なのにもかかわらず、内部者の視点に従ってしまう」のです。

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2026年2月 5日 (木)

意思決定の改善 45

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

次の例は、1988年のA.C.クーパー, C.Y.ウー, W.C.ダンケルバーグらの研究成果に基づいたもので、特に独立開業を目指す方達(過去の私も含め)に大いに参考にして頂きたいものです。

私自身自分が独立しようと考えた当時を(ちゃんと)振り返ってみますとこの思考傾向がピタリと当てはまっていたことに気づかされます。

また、これから新しいプロジェクトを企図する際にも全く同じことに留意する必要があることに、改めて気づかされました。

この研究によれば、「起業者の80%以上が自分のビジネスが成功する確率を70%以上と見積もっていて、また3分の1は成功確率を100% と回答した」そうです。

その一方で、「自分のと似たようなビジネスについては平均成功率を59%と見積もった」とのことです。

ところが現実には、カーネマンらの研究によれば新しいビジネスの5年生存率はたったの33%なのだそうです。

私の場合、フクダリーガルを立ち上げたのは長女が大学受験をする年でしたので、「これから一番お金がかかるタイミングで独立するなんて馬鹿じゃないの」と、口の悪い友達に言われました(外部者の視点)。

それに対して私は「根拠のない自信がある」などと根拠のない(自分は違うという)理屈をこねてました(内部者の視点)。

そして案の定、思ったように順風満帆ではなく、何度も失敗しました。

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2026年2月 4日 (水)

意思決定の改善 44 

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

そのメンバーはこう答えたそうです。「プロジェクトの40%は完成にたどりつけなかったし、7年未満で完成したプロジェクトは一つもなかった。」

そしてカーネマン氏の当該プロジェクトの結果は「完了まで8年もかかってしまった」そうです。

さらに別の例として著者は、「著作に携わっている人ならこのパターンに共感を抱くであろう」といいます。

まさしく今の私がその状態です(笑)。

「本を書くには長い時間がかかるものだということは大抵の人が知っている。それにもかかわらず、 最初の章を書き始めるために 机に向かった時に、非現実的なまでに早い締め切りに間に合わせることができると楽観的な見通しを抱いているのである。」

今私が執筆している(仮題)「不動産ディフェンスの教科書」も昨年秋には刊行する予定でしたが、(様々なことを犠牲にしているにも関わらず)伸びに伸びてまだ初稿校正中です(汗)。

「プロジェクトは完成さえしないかもしれないのに、私たちは今度のプロジェクトはそんなことにはならないと信じてしまう。」

そして次の例も一部の方達には(私自身を含め)大いに参考になるのではないかと思います。

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2026年2月 3日 (火)

意思決定の改善 43

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

外部者の視点、内部者の視点に関しては他にも例が挙げられています。

より一般的な例です。「家の新築や大がかりな改修のプロジェクトを考えている人は、友人からそんなプロジェクトは予算も期間も20から50%は超過するのが普通だと聞かされ」ます(外部者の視点)。

「にもかかわらず、そのような建築プロジェクトを始めた多くの人は、自分は違うーー自分の家はスケジュール通りに計画に近いコストで出来上がる」と思ってしまいます(内部者の視点)。

カーネマンも自身の体験として例を挙げています。

「同僚とチームを作って大学の新しいカリキュラムを作成したときに内部者の楽観主義が現れる古典的な状況を経験したこと」を1993年のロバロとの共同論文に書いています。

「作業チームはプロジェクトは完成まで18ないし30ヶ月かかると」見積りました。

カーネマンは「カリキュラム編成にかけては際立った専門家であると目されるチームメンバーのひとり」に対して「あなたが知っているケースをできるだけ多く思い出して欲しい」と伝えた上で、こんな質問をしました。

それらが「今の私達と同じ段階にあったとき」に「その段階から、そのプロジェクトを完成するのにいったいどれくらいの時間がかかりましたか」。 つづく

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2026年2月 2日 (月)

意思決定の改善 42

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

「行動意思決定論」(ベイザーマンとムーア)による「意思決定改善6方略」の5番目は、「外部者の視点に立つ」です。

プロスペクト理論でノーベル経済学賞を受賞したD・カーネマンは、シドニー大学のD・ロバロとの1993年の共同論文の中で、「人間は意思決定において『内部者(insider)』の視点と『外部者(outsider)』の視点のふたつを持っている」と述べています。

「内部者の視点」に立つと、意思決定において「それぞれの状況をユニークなものとみなすバイアス」がかかってしまいます。

「外部者の視点」に立てば、意思決定に当たって「複数の状況の一般化と類似点の明確化」ができます。

それらを著者はコンサルティング・チームを例にとって説明しています。

チームのメンバーは、外部者の視点から「ほとんどのプロジェクトは完了するのに最初に見積もった期間より長くかかることをよく知って」います。

にもかかわらず、内部者の視点から「自分がこれから取り組むプロジェクトの継続期間の見積もりはどういうわけか正しくてバイアスがかかっていないと信じて」しまうのです。

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2026年1月30日 (金)

意思決定の改善 41

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

別の研究でも、「交渉者がいくつかの異なった価値創出方略を学べるような多様な類比的推論トレーニングのほうが、特定の類推トレーニングよりも、根源的な価値創出の交渉原則の学習を大きく促進した」という結果が得られています。

そして、「この訓練を受けた参加者はかなり独特な課題にも知識を移転できるようになり、また以前に出会ったことのないものを含む多様な価値創出問題における成績も高い」ということが分かったとのことです。

そして「単に成績が向上しただけでなく、その問題に価値創出の余地がどれだけあるかの理解も深まっていた」そうです。

著者は、「多様な類比的推論の訓練によって高い水準の専門知識が得られ、異なった状況下でどの方略が効果的なのか、
またそれはなぜなのかが理解できるようになる」と言っています。

ただ逆に、「訓練の多様性があまりに高まると、教訓の適用可能性が失われてしまう」とも言います。

そこで、「どの程度のレベルの抽象化が理想的なのか、また類比的推論が個人的な意思決定にどこまで適用できるかは、今後の研究に残された興味深い課題である」ということになります。

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2026年1月29日 (木)

意思決定の改善 40

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

ログローリングのように一般化可能性の低い交渉戦略があることを検証する、ある研究では「交渉を通じて価値を創造するために視野を広くとることを教えた」そうです。

そして「特定のトレーニング(specific training)」と「多様なトレーニング(diverse training)」を比較しました。

特定のトレーニングとは、「学習者が同じ特定の方略(例えばログローリング)の実例となるふたつのケースを比較するもの」です。

多様なトレーニングとは「学習者が異なる複数の価値創出方略(たとえば、ひとつはログローリングでもう一つは両立性)の実例となるふたつのケースを比較するもの」です。

この結果について著者は「訓練の有効性は交渉のシミュレーションの成績と結果を見ることで評価された。そのシミュレーションには、参加者がすでに学んだ方略もまだ 学んでいない方略も含め多様な価値創出方略を適用する余地があった」と書いていますが、これはいささか分かりにくいですね。

恐らく結果は多様なトレーニングの優位性を示したということなのではないかと思います。

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2026年1月28日 (水)

意思決定の改善 39

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

交渉者に「一般性の高い」交渉原則を教えることは、「焦点を絞った類推よりも、新しい交渉の課題に広範囲にうまく当てはめることができる」という研究成果が報告されています。

また別の研究では、一般的原則を学ぶことで、個別事例から学んだ 原則を積極的に移転する能力が向上するだけでなく、その適用範囲を識別する(ある原則をどこで適応しどこで適用すべきでないかを決定する)能力をも向上させることがわかっています。

ただ、交渉戦略によってはその一般化が限定的である可能性が指摘されています。その例として挙げられているのが「ログローリング」です。

ログローリングとは、「自分にとって優先度の低い交渉課題を譲歩する代わりに優先度の高い交渉課題を得ること」です。

ある研究によると、これについて類比的推論の訓練を受けた人は、全く異なった構造を持つ対面での交渉に直面したときはうまく立ち回れなかったそうです。

著者は、「ログローリングの他の価値創造プロセスへの一般化可能性は限定的なのかもしれない」と言っています。

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2026年1月27日 (火)

意思決定の改善 38

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

この実験の結果、モンティホール問題とパイ分配問題を2つずつ組にして考える方が、それぞれの問題の2つのバージョン間の相違点の理解が進み、相手の意思決定とゲームのルールに注意を向けることの重要性を一般化して理解できるようになることがわかりました。

この結論は、「会社買収問題を解決する鍵」となっており、実際に実験参加者は会社買収問題で普通よりも明らかに高い成績を上げたとのことです。

この研究が示唆するものとして私達が意思決定の改善に役立てるべき点は、

「外見的に同種に見える複数の問題について相違を調べることが意思決定の改善の有効な方向かもしれない」

ということです。

次に気になるのは、「複数問題の類推の形成を促進するため」には、「どのレベルで抽象化するのが最適」なのか、という点です。

この点に関して著者はいくつかの例を挙げています。

一つは、交渉者に「一般性の高い」交渉原則(たとえば「価値は、創造できる」「交渉当事者の利害関係を理解することが重要である」など)を教えることの効用です。

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2026年1月26日 (月)

意思決定の改善 37

(今朝のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

他にもこの「類比的推論」の効果を示す研究報告は多数されています。

例えばこんなものがあります。

「複数の問題の相違点を理解することが、類似点を理解することと同様に、知識の移転のための非常に有用な方法になる」。

会社買収問題(同書でも例題として出されている、論理的に結論は明快だが、直感的に判断するのは難しい問題の一つ)に見られるバイアスは「他のいくつものバイアス補正テクニックに対して強い抵抗力を示すこと」が証明されていますが、「相違点をベースにしたトレーニングによって、会社買収問題のバイアスが低減される」。

それを示した実験はこんなものです。

意思決定の誤りをあぶり出す実験問題である「モンティ・ホール問題」と「パイの分割問題」の解答者を次の2つの群に分けます。

1  それぞれの問題の2つのバージョンを4つの独立した問題として考察させる群

2 問題を2つずつ組にして考察させる群

その後で、2つの群の全ての参加者と、この2つの問題を解かせていない参加者に会社買収問題を解かせました。

結果は明瞭でした。

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