2006年3月28日 (火)

老後の世話をしてもらい、資産も保全するためには?

_060326 (前提)

A=配偶者死亡、直系尊属(両親、祖父母)死亡、子なし、兄弟あり

B=独身

(目的)

AはBに老後の世話をしてもらいたい。

世話をしてもらえるのであればAは自己の資産(不動産、現預金)をすべてBに譲渡してよい。

(解決案)

       養子縁組

死ぬまでの世話をしてもらうという約束のもとに養子縁組する。

養親が死亡すれば養子が全ての財産(負債含む)を相続する。

世話をするという約束を守られなかった場合は離縁可能だが、一方的には出来ない(協議離縁:民法811条1項、裁判離縁同814条)。

BがAの生前にAの資産を勝手に処分することはできない。

       遺贈

死ぬまでの世話をしてもらうという約束のもとに財産を遺贈する旨の遺言をする。

世話をするという約束を守られなかった場合、遺言は自由に撤回可能(1022)。

       死因贈与

死ぬまでの世話をしてもらうという約束のもとに自分の死後に財産を贈与する旨の契約をする。

世話をするという約束を守られなかった場合、遺言に準じて(民法554条、1022条)撤回できるとするのが判例。

       任意後見契約

Aがボケるなど判断能力が低下した場合に、Bが後見人となることを予め契約しておく。

Aの判断力低下した場合に裁判所に申し立て、後見監督人が選任され、後見が開始する。

BはAの財産管理の権限と義務を負う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年3月15日 (水)

売主がボケていれば登記しても永久に無効なのです。 Part 1

今日の「フクダリーガルィキ支店」は「ちょっとした楽しみ」。女性スタッフたちの「フクダリーガル自由帳」にあります。「ちょっとした」といえば「ちょっとした」ものなんですが、読む方もこれがなかなか癒されるのです(文章もウマい)。ワタシのちょっとした楽しみにもなってます。これも惜しむらくはビジュアルのないこと。写メでよいので貼り付けておくと全然違います。といいながらワタシのブログに写真が殆どないのは、ワタシのケータイにはカメラがないの。唯一の写真である玉様(王様じゃないの舞踊公演は家人にやってもらいました。

はやくカメラ付きに買い換えなきゃ。

では、本題です。

今日のお話は不動産の売主の意思能力について不動産のプロの皆さんによーく認識しておいて欲しい事、です。

最近増加しているご相談(先ほども電話で土地仕入れの担当の方からご相談がありました)として、不動産の売買における売主の意思能力(主にいわゆる「ボケ」)の問題があります。

以前、不動産所有者とその近親者のためという視点でこの問題を取り上げましたが(「経営者のための成年後見制度利用のすすめ ケーススディ編対応」)、今回は不動産を買おうとしている方(特にプロフェッショナルの方)向けのお話をさせていただきたいと思います。

不動産、特に土地の売買で最近増えているのが、売主(地主さん)が大変高齢で、判断能力に疑問があるので、フクダさん確認してもらえませんかというご依頼です(大部分が買い手となる不動産会社の方、又は仲介業者の方から)。

そしてその大半が、司法書士は通常売主が残金決済の現場に出席することを要求するが、その売主が高齢(あるいは病気)のため決済当日出席できない。ついては司法書士さん事前に会ってもらえませんか、というものです。

そしてこのように決済直前にご依頼を頂くケースの殆どが、契約の際も売主本人には会っておらず、代理人によって契約を行っています。

※不動産の売買契約では、契約(手付金を支払います)によって拘束し、1ヶ月~3ヶ月あるいはそれ以上の期間(調査その他様々な準備期間)をおいてから「決済」(横文字系では「クロージング」、残金の支払い及び物件の引渡し)を行うというのが通常です。

そして決済が近づいてくると登記の段取りが必要になってきて、そういえば売主が当日出席できないんだったけど大丈夫かな、そうだ取りあえず司法書士に相談してみようということで、前記したようなご依頼を頂くことになるというわけです。

・・・明日に続きます。

⇒このブログのトッ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年2月 2日 (木)

住宅の共有持分はどのように決めるべきか/住宅ローン控除との関係は?

この時期(確定申告前)になると多くなる仕事の一つに、所有者(持分)更正の登記というものがあります。昨日もそのご依頼がありました。そこで今日は更正(訂正)の必要のない共有持分の決め方(住宅ローン控除も関連)についてのお話をさせて頂きたいと思います。

不動産の共有持分割合(不動産を共同で購入したときのそれぞれの所有割合)はどのように決めればよいのですか、と聞かれることが良くありますが、どうすれば良いかという問題ではなく、各人がいくら負担するかによって自動的に決まるものなのです。つまり自分が出したお金に見合った権利を取得するという至極当然のことで、不動産に限ったことではありません。

例えば1000万円のクルーザーを買うのに、一人100万円ずつ出し合って10人で買ったとします。この場合、各人の共有持分は10分の1ずつになるというのはすぐ分かると思います。これが二人で、一人は100万円、もう一人が900万円出したのであれば10分の1と10分の9です。このとき900万円出した人が実は銀行から借金して支払ったとしても同じです。

仮にこのケースで、二人で話し合って、出資額に関わらず持分を2分の1ずつにしましょうということになれば、それは可能です。一人は100万円で500万円分の所有権持分を手に入れ、もう一人は900万円出したのに500万円の持分しか手に入れられないということです。これは900万円出した人が取得している所有権(持分)の内400万円分を100万円しか出していない人に移転(所有権移転)する合意をしたということです。

そしてこの移転を何の見返りもなく行えば「贈与」、金銭を支払えば「売買」ということになります。贈与も売買も自由ですが、税金に注意が必要です。贈与税です。個人から財産の贈与を受けると原則としてがかかります。

従って、持分を移動させる場合には贈与税を支払ってまでするメリットがあるかどうかを十分検討する必要があります。特に相続課税制度は贈与者が65歳以上の親で、相続税の心配がある場合は検討の価値があるでしょう。

さて、冒頭にお話したように、この時期に所有者更正登記や持分更正登記の依頼が多いというのは、以上説明したような検討をせずに持分を決めてしまい、税務署から指摘を受けて出資額どおりの持分に更正(訂正)する(しないと贈与税の対象となる)というケースです。

典型的なのが、収入のない妻(頭金も出していない)に、「内助の功」として持分を半分持たせるという場合です。気持ちは分かりますが、この場合は贈与税の対象となってしまいます(結婚20年以上の場合は所謂控除の利用が可能です)。

その他に利用できる制度として、父母や祖父母から住宅取得資金贈与場合の特例があります。住宅取得資金については先にのべた相続精算課税制度つい特例があります。

そしてもう一つ気をつけなければならないのが、所謂住宅ロー控除です。といいますのは、住宅ローン控除を受けられる金額は自己の持分が上限となるからです。例えば、夫婦が共同して住宅ローンを借りており(連帯債務)、共有名義としている場合、夫のローン負担額が持分を越えていても、控除を受けられるのは自己の持分が限度となります(夫の単独借入れでも同じ)。

たまにあるご質問として、妻は今仕事をしているが、1~2年で退職して子育てに専念したいので、夫がなるべく多く控除を受けられるようにしたいというものがあります。

この場合、夫の単独所有(妻が現金出資をしている場合はそれを除いた部分全部を夫の所有)とし、ローンの返済も夫だけがすれば、夫がローン全額について控除を受けることが可能です。

いずれにしましても、不動産購入時に適正な持分にしておきませんと、後で思わぬ手間とコストの負担を強いられる可能性があります。不動産業者さんや私達司法書士(登記のついでに)にお問い合わせいただくか、税理士さんや最寄の税務署の相談窓口にご相談されることをお勧めいたします。

尚、本文中でリンクさせていただいておりますサイトは国税庁のサイトですので(内容の信頼度は高い)安心してご利用下さい。

このブログのトップ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年2月 1日 (水)

「権利書」はなぜ大切か。そんな大切な「権利書」が「なくなる」とは。

今日はまたガラッと話題を変えて司法書士らしく(?)「権利書」の話をします。

皆さんが新しく家や土地を買ったときに引渡しから半月ほどすると司法書士から送られてくる書類、「重要書類ですから厳重に保管してください」という意味の事が書いてあります。あれが「権利書」です。正確には所有権登記済権利証。登記しましたという法務局の証明書です。

テレビドラマなどでよく不肖の息子が、親が守ってきた家屋敷の「権利書」を勝手に持ち出して売りとばしてしまい、ある日突然人相の悪い連中が乗り込んできて親達が追い出される、なんて場面をご覧になったことがあると思います。

現実にはそれは起こりにくい(その理由は後でお話します)のですが、いずれにしても不動産の売却や担保設定の登記をする際に必要とされる大変重要な書類です。

その「権利書」が「なくなる」(すでに一部では「なくなって」いる)のです。

といっても現在不動産の所有者の方がお持ちの「権利書」の効力が失われるというわけではありません。それは永久に(売却しない限り)有効です(これは今春の改正会社法で「有限会社がなくなる」と言われているのと似ていますね)。

「なくなる」というのは、新しい不動産登記システムに切り替わった登記所(「オンライン指定庁」といいます)の管轄する不動産を買った場合に、新しく出来てくる権利書がないということです。権利書に代わって渡されるのは一種のコード番号(「登記識別情報」)です。「紙」の権利書ではインターネット時代の手続き(オンライン申請)に乗ってこないということなのです。

そもそも権利書が何故そんなに大事な書類なのかというと、これを持っている人が不動産の所有者である(可能性が高い)から、つまり所有者本人であることの根拠資料になるからなのです。なぜそうなるかというと、登記をすると権利書が所有者に渡されるということが不動産登記法上で保証されているからです。

ただ、権利書が必要とされる理由が、本人であることの証明であるのなら、他の手段で本人性が証明できるのなら権利書じゃなくても良いじゃない?という疑問も出てきます。確かに、不動産取引に限らず「本人確認書類」「身分証明書類」とされる書類は運転免許証をはじめ色々とあります。それらがあれば本人であることがわかるから権利書なんて要らないんじゃないか、ということになりますが、他の書類とは決定的に違う点があります。

それは、例えばAB町に住んでいるXに間違いない(であろう可能性が高い)ということはそれら身分証明書類で分かりますが、そのXさんがこの不動産を持っているXさんだということはわかりません。その点権利書はその不動産の所有者にしか渡されないことになっているので、それを持っているXさんがこの不動産所有者のXさんであるということの根拠になる、というわけです。

もっとも権利書をなくしてしまったとしてもそれに代わる手続きを取れば不動産の売却や担保設定は可能です。じゃー権利書なんて要らないじゃんという議論にもなります。

確かに盗まれて悪用されることを心配しながら厳重に保管しておくのであれば、破棄してしまった方が安心という考え方も出来なくはありません。ただし権利書がある場合に比べて、それに代わる手続きが必要になりますから、売却するときには手間とコストが余分にかかります。

これは権利書に代わって渡されることになる「コード番号」についても同じことが言えます。むしろコード番号だと、権利書以上に厳重な管理が必要です。暗証番号のようなものですから、それを人に見られてしまえば権利書を盗まれたと同じことになってしまうからです。

そこで権利書を破棄するのと同様の手続き、失効制度が設けられていますし、そもそも初めからコード番号はいらないよということも出来ることになっています。

権利書をなくした場合(あるいはコード番号を失効ないし初めからもらっていない場合)、それに代わる手続きについてはまた改めてお話したいと思います。今日は時間切れです、すみません。権利書や運転免許証の偽造や「地面師」の話もしたかったのですが、前置きが長くなってしまいました。

このブログのトップ

| | コメント (3) | トラックバック (0)