今日はまたガラッと話題を変えて司法書士らしく(?)「権利書」の話をします。
皆さんが新しく家や土地を買ったときに引渡しから半月ほどすると司法書士から送られてくる書類、「重要書類ですから厳重に保管してください」という意味の事が書いてあります。あれが「権利書」です。正確には所有権登記済権利証。登記しましたという法務局の証明書です。
テレビドラマなどでよく不肖の息子が、親が守ってきた家屋敷の「権利書」を勝手に持ち出して売りとばしてしまい、ある日突然人相の悪い連中が乗り込んできて親達が追い出される、なんて場面をご覧になったことがあると思います。
現実にはそれは起こりにくい(その理由は後でお話します)のですが、いずれにしても不動産の売却や担保設定の登記をする際に必要とされる大変重要な書類です。
その「権利書」が「なくなる」(すでに一部では「なくなって」いる)のです。
といっても現在不動産の所有者の方がお持ちの「権利書」の効力が失われるというわけではありません。それは永久に(売却しない限り)有効です(これは今春の改正会社法で「有限会社がなくなる」と言われているのと似ていますね)。
「なくなる」というのは、新しい不動産登記システムに切り替わった登記所(「オンライン指定庁」といいます)の管轄する不動産を買った場合に、新しく出来てくる権利書がないということです。権利書に代わって渡されるのは一種のコード番号(「登記識別情報」)です。「紙」の権利書ではインターネット時代の手続き(オンライン申請)に乗ってこないということなのです。
そもそも権利書が何故そんなに大事な書類なのかというと、これを持っている人が不動産の所有者である(可能性が高い)から、つまり所有者本人であることの根拠資料になるからなのです。なぜそうなるかというと、登記をすると権利書が所有者に渡されるということが不動産登記法上で保証されているからです。
ただ、権利書が必要とされる理由が、本人であることの証明であるのなら、他の手段で本人性が証明できるのなら権利書じゃなくても良いじゃない?という疑問も出てきます。確かに、不動産取引に限らず「本人確認書類」「身分証明書類」とされる書類は運転免許証をはじめ色々とあります。それらがあれば本人であることがわかるから権利書なんて要らないんじゃないか、ということになりますが、他の書類とは決定的に違う点があります。
それは、例えばA県B町に住んでいるXに間違いない(であろう可能性が高い)ということはそれら身分証明書類で分かりますが、そのXさんがこの不動産を持っているXさんだということはわかりません。その点権利書はその不動産の所有者にしか渡されないことになっているので、それを持っているXさんがこの不動産所有者のXさんであるということの根拠になる、というわけです。
もっとも権利書をなくしてしまったとしてもそれに代わる手続きを取れば不動産の売却や担保設定は可能です。じゃー権利書なんて要らないじゃんという議論にもなります。
確かに盗まれて悪用されることを心配しながら厳重に保管しておくのであれば、破棄してしまった方が安心という考え方も出来なくはありません。ただし権利書がある場合に比べて、それに代わる手続きが必要になりますから、売却するときには手間とコストが余分にかかります。
これは権利書に代わって渡されることになる「コード番号」についても同じことが言えます。むしろコード番号だと、権利書以上に厳重な管理が必要です。暗証番号のようなものですから、それを人に見られてしまえば権利書を盗まれたと同じことになってしまうからです。
そこで権利書を破棄するのと同様の手続き、失効制度が設けられていますし、そもそも初めからコード番号はいらないよということも出来ることになっています。
権利書をなくした場合(あるいはコード番号を失効ないし初めからもらっていない場合)、それに代わる手続きについてはまた改めてお話したいと思います。今日は時間切れです、すみません。権利書や運転免許証の偽造や「地面師」の話もしたかったのですが、前置きが長くなってしまいました。
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