ライブドアの辿った道 その13 保釈、公判前整理手続き 後編
今日もサッカーがらみの話題から。昨日の日経朝刊で、ワールドカップの主審を務める上川徹さんの話が出ていました。その中で、「主審とは正しい判定をすれば良いというものではなく、トラブルを未然に防ぐ努力が大事である」という意味の事を仰っています。
これはワタシ達法律家も同じです。特に弁護士さん達とは違い、訴訟をしてもさほど良いビジネスになりません(すみませんこういう事を言ってはいけませんが、霞を食って生きていくことも出来ないので)から、出来るだけ訴訟にならない様に解決する努力が不可欠です。
先日もある喫茶店の契約更新トラブルのご相談を受けましたが、よくよく話を聞くと、どうやら話の行き違い(間に不動産屋さんが入っていましたが)があることがわかり、論点を整理して双方にきちんと説明し、落としどころを見つけて無事円満に(お互い譲歩して)解決に導くことが出来ました。
このときも先ず先方と初めて話すときは、司法書士であることすら明かさずに話しました。弁護士ほどではありませんが、司法書士が出てきたということで、相手方に宣戦布告と受取られては困るからです。
ということで(前フリとは直接関係ありませんが)今日の本題です。
昨日は「保釈」制度の意味について簡単に触れました。
堀江被告も約3ヶ月もの拘留期間を経て「保釈」されたわけですが(保釈保証金は3億円だそうです!)、容疑に関して全面否認しながら公判前に保釈されるのは大変珍しいケースであると言われました。
これは、保釈の要件に関わってくることです。裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として、保釈を許可しなければなりません(刑事訴訟法89条)。但し、もちろん無限定に許す必要があるわけではなく、死刑無期に当たるような重罪の場合など、いくつかの除外事由が定められています(同1号~6号等)。
その中に、「罪証を隠滅する」おそれというのがあります(4号)。一般的な言い方では「証拠隠滅の恐れがある」という事です。被告人が否認している場合はこの恐れが高いということから、当該除外事項に該当し、保釈が却下されるケースが大半だったという事です。
ちなみに、保釈請求がなされた者のうち保釈が許可された者の割合は49.1%(1999年~2003年の地裁平均)だそうです。但し拘留された者のうち保釈が許可された者の割合は15%(以上の数字は田口守一「刑事訴訟法」弘文堂 第4版補正版258頁から)。
しかし、これに対しては被告人(公訴提起後)の場合は被疑者(公訴提起前)の場合とは異なり、既に証拠は確保されており、罪証隠滅の余地は少なくなっていることが多いなどの理由から、否認をそのまま罪証隠滅の恐れと結び付けるべきではないという批判があります(同 259頁)
そして今回の堀江被告の場合は、上記のような実質的な判断が行われただけでなく、「公判前整理手続」(法316条の2以下)との関係を無視することは出来ません。
公判前整理手続とは、公判の充実とスピードアップを図るために最近(平成17年11月施行)設けられた制度です。公判の前に事件の争点と証拠を整理するためのものです。「裁判員制度」の運用のためという意味もあるようです。
堀江被告に関しても、裁判所は公判前整理手続きの導入を決め、第一回目が去る5月10日に行われました。これによって公判自体はかなりスピードアップされ、1週間程度で終わるのではないかといわれています。
国民の注目度の高い事件に関して早期の保釈と公判前整理手続きを導入することにより、司法制度改革をアピールし、裁判員制度(今回のようなケースでは採用されることはないと思いますが)の導入をスムーズに進めるという意図があるのかも知れません。
写真は久しぶりの「看板」シリーズ。場所は、見る人が見ればわかると思います・・。
⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の記事
⇒「会社法よくある質問」シリーズの第1回目の記事、前回の記事
⇒「プチ信託登記入門」シリーズの第1回目の記事
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