2006年5月30日 (火)

金融商品取引法は不動産証券化ビジネスにどんな影響を与えるのか?

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テーマは金融商品取引法(証券取引法の改正)。

講演に入る前に、会員としてヤキソバオヤジから「情報発信」スピーチをさせて頂きました(他にはプロロジス様と大和ハウス工業様)。

内容は、ウチが今後新しく提供していく予定のサービス、不動産証券化支援ビジネスについて。

「アクイジション・クロージング業務」、つまり、ファンドに組み入れる物件の取得時に必要とされる業務サービスを提供するというものです。

業務内容としては、①デューデリ対応、②目論見書対応(REIT)、③クロージングドキュメンテーション(物件概要書・重要事項説明書・売買契約書・信託契約書・信託変更契約書)などです。

現在はある上場REITにウチのN君を派遣してこれらの業務を担当させて頂き、不足している実務スキルを習得させている段階です(大変高い評価をいただいておりますことは先日ご報告いたしました)。

従来、ウチの業務内容としてはドキュメンテーション以外の領域については専門外という意識がありましたが、今後はREITの他にも、新しく設立されるAM会社の業務をお手伝いするなど、それ以外のノウハウ・スキルも蓄積し、真にお客様の役に立つサービスを展開して行こうと考えております。

将来的にはこういった業務に関する人材の育成、派遣、業務受託などのビジネス展開をして行きたいと考えております。

さて、本題です。

060429_006 先ず、第一部は「金融商品取引法と今後の不動産ビジネスについて」と題して、弁護士の田村幸太郎先生のご講演でした。

限られた時間の中でしたが、詳細なレジュメに基づき、今回の改正の趣旨、歴史的位置付けという大局的な観点と、不動産証券化ビジネスに携わるものにとって何を先ず理解しておかなければならないかという事をわかりやすくご説明して頂きました。

キーワードは「有価証券の定義」と「金融商品取引業の定義」。有価証券(とみなされるもの)を取扱うものが金融商品取引業者としての規制を受けることになりますから、現行法で証券取引法の適用を受けていないものが、金取法のもとで適用を受けることになるものも出てくるという事です。

有価証券となるものとしては「みなし有価証券(その3)」(法案2条2項各号)が重要。このうち主なものとして、信託受益権(1号)、合同会社の社員権(3号)、匿名組合契約に基づく権利・投資事業有限責任組合契約に基づく権利・有限責任事業組合契約に基づく権利・任意組合契約に基づく権利等所謂「集団投資スキーム持分」(5号)。

金融商品取引業については第一種金融商品取引業(28条1項)、第二種金融商品取引業(同2項)、投資助言・代理業(同3項)、投資運用業(2条8項12号)等があるが、「第二種金融商品取引業」が重要です。

例えば現在信託受益権の販売、仲介、代理を行として行う場合は信託受益権販売業者として信託業法の規制を受けます(同法86条以下)が、金融商品取引法の下では信託受益権も有価証券になるので、第二種金融商品取引業に該当することになります。

060422_004_1 といっても、せっかく取った受益権販売業登録が無駄になるわけではなく、金融商品取引法施行後は金融商品取引業の登録(29条)をうけたものとみなされます(法案附則200条)。

この他、自己募集も金融商品取引業にあたるなど、重要な規定が他にも沢山ありますが、また別の機会に(もっと勉強して)書きたいと思います。

次に第二部。「不動産証券化と金融商品取引法 内部統制報告」と題して、さくら綜合事務所の杉本茂先生のご講演を頂きました。

お恥ずかしいのですが、金取法による内部統制報告に関して全く不勉強なため(会社法の内部統制についても自信はありませんが)、これに関してはもう少し良く復習(?)してから書かせていただきたいと思いますが、この規制がアメリカの通称「SOX」に倣ったものであるとされているという事と、相当に面倒なものであるらしいということだけ申し上げておきます。

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の、前回の記事

⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の

⇒「会社法よくある質問」シリーズの第1回目の記事、前回の記事

⇒「プチ信託登記入門」シリーズの第1回目の

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さて、今日はサタスインテグレイト主催の不動産フォーラム

今日はサタスインテグレイト主催の不動産フォーラム

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2006年5月26日 (金)

明治の不動産登記?

今日はとても嬉しい話から。

J-REITに派遣しているN君。

極めて優秀であるという評価を得ているとの情報がありました。

彼が指導を出来るようになったらさらに増員も、というような話も。

060524 さて、今日の写真は「地券」です。

明治時代の、今でいう不動産登記にあたるものです。

土地を売買すると、この地券が発行され、正本を地主に交付し、副本を台帳につづり込みました。

地券の交付・裏書が土地所有権移転の効力要件とされました。

明治維新から旧登記法が制定される明治19年まで使われました。

スミマセン今日もこれで失礼します。

これから北海道(またー?)へいってきまーす。

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の、前回の記事

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2006年5月 7日 (日)

会社法よくある質問 4 そもそも既存の有限会社はどうすべきか ① SPCとしての有限会社

キュリアス様、kid83様、コメント有難うございます。

もちろんワタシもベビーカーを使う事そのものにまで文句を言いたくはありません。使い方の問題で、例えば混雑した電車の中でバックパック(リュックサック)を背負っていたりする甚だ迷惑な行動に対する腹立ちとある意味同じことなのですが、ベビーカーの場合、「赤ちゃん」という社会的にも守られるべき存在を「盾」(?)にベビーカーそのものも守られるべき存在でもあるという幻想を抱いているのではないかとしか思えない態度で闊歩している事が腹立たしいのです。

繰り返しになりますが、ベビーカーは決して子供自身のためにあるわけではないのです。

さて、今日は家で、久しぶりに「料理」しました。作ったのはサンドイッチ。スーパーの「自家製」ローストビーフに市販のたれをからめたものと、剥き身の海老をいためてこれも市販のソースに絡めたものをレタスと玉葱とパンで挟んだだけのものでしたが、家族には大好評。ポイントは「新玉葱」だったようです。

本当に家で包丁を持つなんて、すごい久しぶりで、次女に言わせると「オヤジスペシャル」(味噌と牛乳とチーズで作るおじや)以来だから10年ぶり(自分が小学生)くらい、だそうです。

では、本題です。

会社法の改正に伴って既存の有限会社はそもそもどうすべきか、ということなんですが、前回までは、法改正によって不利益を被ることはないように手当てがされているという事を中心にお話しました。

これは、つまり、今のままでもすぐに問題が生じてくることはない(原則として登記をしたり、アクションを起こす必要はない)という事なんですが、会社によっては当然検討を要すべきところも出てきます。

前回も少し触れましたが、証券化のビークル=SPCとしての有限会社の場合です(基礎知識は)。少々マニアックな話になりますが、不動産に関わる者として、証券化の話は避けて通れないもの(になる)ですので。

今後設立するSPCとしては当然有限会社はだめなので、株式会社か合同会社(LLC)かという問題になりますが、既存の有限会社がそのままでもよいのか、という問題があります。

ここで問題になるのは、(前回も言いましたが)は特例有限会社も株式会社として会社更生法の適用を受けることになり、これが「倒産隔離」というSPCに求められる要素から、会社更生法の適用を受けない、株式会社以外の会社形態(特に合同会社=LLCに組織変更した方が良いのではないかという点です(社債は特例有限会社のままでも発行できるのでここでは問題にはならない)。

一般的には会社更生法の適用を受けない方が倒産隔離の要請からは望ましいとされていますが、これには懐疑的な意見もあります。渋谷陽一郎「証券化のリーガルリスク」(日本評論社)64頁は、「そもそもSPCに対し、多数の利害関係人の存在を前提とした会社更生法の厳格な手続きが申請される事態を想定することは難しいだろう(会社更生法申請行為自体が大変な作業であり、裁判所との事前打合せを要する)。会社更生法は、あくまで、オリジネーター破綻の局面で、真正売買や法人格否認の問題等の論点とされる」としています。

つまり、会社更生法の適用の有無がSPC選択の要素とはならないと言っているわけですが、最終的には投資家ないし格付機関がそれをどう評価するかという事になると思います。

⇒「会社法FAQ」シリーズの第1回目の記事、前回の記事

⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の記事

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の

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2006年4月14日 (金)

プチ信託登記入門  13  「REIT」

用語説明の続きです(4月12日の記事から)。

「REIT」(リート)。Real Estate Investment Trust,不動産投資信託の事です。日本の場合は「投資信託及び投資法人に関する法律」で規制され、「J-REIT」と呼ばれています。

簡単に言えば、不動産に対する出資を証券として市場で取引できるようにするというものです。今日の日本経済新聞証券欄を見ると、三井不動産他の「日本ビルファンド」からモリモト他の「ビ・ライフ」まで、32の銘柄が東京証券取引所他に上場されています。

証券欄といえば、ライブドア株が本日付で上場廃止となりますね(上場廃止に関してはこちらのをご参照下さい)。同じ日経の別の記事では、USENがライブドアを子会社化することを検討しているが「難題」があるとしています。

株価が下落している(13日の終値で94円)とはいえ、1000億円近い時価総額(株式総数約10億株)のライブドア株を取得するにはそれなりの資金が必要ですし、現金の調達が不要な株式交換(こちらの記事をどうぞ)の方法による場合、USEN側はもちろん、強制的に株式を取り上げられる(USEN株と交換させられる)ライブドア側の株主総会の承認も必要になるのが「難題」であるということです。

話が横道にそれてしまいましたが、要はREITとは不動産に対する出資について、株式と同様な小口投資を可能とし、流通性を高めるものであるということです。

先日(11)のお話で、受益者が有限会社であり投資法人になっていないのでこれはREITではないと言いましたが、J-REITの場合、証券化の器(ビークル)が「投資法人」に限られるという事です。

この様にJ-REITでビークルが(設立・運営に厳しい制限のある)投資法人に限られるのは(本場米国ではビークルの限定はない)、不動産投資信託の最大のメリットである「課税所得の90%超を配当すれば配当分は法人税非課税」にあるとされています(佐藤一雄「不動産証券化の実践」107頁)。

⇒前回の      

⇒このシリーズの第1回目の

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の

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2006年4月 8日 (土)

アクイジション・クロージング業務

昨日は事務所の歓送迎会。新人2名と司法書士受験準備のため休みに入る1名、そして某REITの組成・上場準備のため、ある企業に送り出す1名。会は例によって(?)大いに盛り上がり、閉店時間を大きくオーバーし終電の終わる時刻まで続きました。

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送り出す人間の中でもこの最後の「出向」者がやはり一番気になるところでした。彼もプレッシャーが強すぎたのか、少々飲みすぎたようでした。しかし、非常に高いポテンシャルを持った男ですから、きっとうまくいくと思っています。もっとも全く新しい取り組みですから100%うまくいかなくても仕方ないと思っていますが(それを知るだけでもでも大きな収穫です)。いつでも戻る場所はあるのですし。

ウチの事務所のビジネスモデル(?)として、今まで手がけたことの無い仕事でもどんどん受けて、勉強させてもらいながらノウハウやスキルを身に付けていくというところがあります。

今回もREITのための所謂「アクイジション・クロージング」と言われる業務で、デューデリジェンスから始まって目論見書対応、クロージングドキュメンテーション(現物・受益権の売買契約書、信託契約書、信託目録等々・・)まで広範な実務経験と知識が要求されるものですが、この全てに一人で対応できる人材は残念ながら弊事務所にもおりませんでした。

おそらくこの実体不動産取引の部分の知識経験と、高度な法的知識の双方を兼ね備えた人材と言うのは業界にもそんなに数が多くは無いのではないでしょうか。

先日新聞報道もされた、JPモルガン・チェース銀行、JPモルガン信託に対する金融庁の処分の対象となった案件は恐らくそういった人材不足にも一因があるのではないかと思われます。

ウチの事務所では今後こういった人材をどんどん育成し、証券化だけでなく不動産取引全般に渡っての実体取引及びリーガルの両面での支援をするビジネスを展開していくつもりです。

今回の弊事務所の動きに対して、大変勇気付けられるアドバイスを頂いた弁護士の「ROOT」先生、本当に有難うございました。これからもまた頼らせていただくことがあると思いますので、よろしくお願い致します。

写真は最近の「ジャケ買い」(CDじゃなくて本)の一冊、吉野万理子の「秋の大三角」。装丁と書名が一目で気に入り、衝動買いしました。今夜は久しぶりにゆっくりと読書でもしようかと思っています(衝動買いしても大体はしばらく飾っておくだけなので・・)。

⇒「プチ信託登記入門」第1回目の

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