2006年6月16日 (金)

所有者のいない土地の譲渡、続き。

 

一昨日はライブドアの臨時株主総会だったそうです。

で、今日の写真は、ライブドアとニッポン放送の株券不動産起業塾第3期生の「Oヒルズに住む社長」M氏のご提供。

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次が第3期から参加のアイビー女史の「手」。で、でも、ク、クスリ指に・・。

060614_001_1 さて、12日の記事で、「所有者のいない」突っ込み道路の登記名義を宅地所有者名義に変える方法は?というなげかけをさせて頂きました。コメントも頂きまして、有難うございます。

まず、土地の「名義を変える」とは所有権が移転するということであり、所有権が移転するためにはその原因となる契約(売買や贈与)や事実(相続等)が必要です。

このケースで、例えば宅地開発をした会社から宅地所有者がこの「つっこみ道路」も併せて購入していれば、売買契約により所有権が移転しており、単に所有権移転登記を忘れてしまったという事になります。

もし、道路については売買契約の対象としていなければ、あらためて売買や贈与などの契約をして、所有権の移転を受ける必要があります。但し、開発会社はその契約に応ずる義務はないことに注意を要します。

そこで、開発会社の意思に関わらず所有権を取得する方法として、「時効取得」が考えられます。「所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を」20年間(善意無過失なら10年間)占有した者は所有権を取得します(民法162条)。私道なので、「占有」と言えるかどうか微妙なものがありますが、時効取得が成立する余地は十分あると思われます。

次の問題は、当事者がいない(会社が解散し、清算も結了)という点です。所有権取得原因が成立している場合(売買にしろ時効取得にしろ)一番簡単なのは、裁判所に特別代理人を選任してもらうという方法でしょうね(民事訴訟法35条)。清算人の選任をしてもらうという事も可能だと思いますが、訴訟手続きの中でおこなわれる特別代理人の選任の方が簡便だと思われます。

これから売買契約を締結するという事であれば裁判所に清算人を選任してもらい、清算人との間で売買契約を締結するという事になるでしょうね。

                   

⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の、前回の記事

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の、前回の記事

⇒「会社法よくある質問」シリーズの第1回目の記事、前回の記事

⇒「プチ信託登記入門」シリーズの第1回目の

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2006年6月12日 (月)

所有者のいない土地を譲り受けたい 

今日はネタがなくなってしまったので、問題提起だけ。

住宅地の私道、所謂突っ込み道路なんですが、所有名義が開発をした不動産会社のままになっている。ところがその会社が今はない。つまり法人が解散し、清算も結了して50年近くたっている。

この土地の名義を住宅所有者のものに変えたい(所有権移転)のだが、何か方法はないか、というご相談が以前にありました。

さて、どうすれば良いでしょうか。 

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2006年6月 1日 (木)

外国人名義の不動産を取得するには?

今日は時間がなかったので、過去のネタを引っ張り出してきました。久しぶりに司法書士らしい(?)題材です。

以前にこんな質問を受けました。

《日本人女性が中国人男性と結婚し、日本に居住。夫(中国籍)名義で住宅(土地付一戸建)を買った。その後夫は中国へ帰国。帰国の際、夫は住宅の権利を放棄する旨の念書を妻の許に残した。

この場合妻名義に所有権移転登記をすることが出来るのか。出来るとすればどんな書類を取得する必要があるか(住民票や印鑑証明にあたるもの)。また、夫には何がしかの「ハンコ代」のようなものを支払う必要はあるのか》

それに対してこんな回答を致しました。

まず、「権利放棄」する旨の念書があるという事ですが、それは奥様に譲渡すると解釈できるものでしょうか。不動産所有権を「放棄」しても、その不動産は誰のものでもないということになり、法の規定により国のものになるだけです(民法239条2項)。

不動産が奥様との共有であり、自己の持分を放棄するという事であれば、その持分は奥様に移転します(「譲渡」と同じ)。民法255条。

次にこの「譲渡」の意味ですが、これは奥様に贈与するという事でしょうか。あるいは奥様が対価を払って買い取ったという事でしょうか。買い取ったというのであれば代金の授受が必要ですが、代金の授受が無ければ贈与となり、贈与税がかかる可能性があります。これは共有持分の放棄であっても同じであり、対価の支払いが無ければ贈与となります。

上記の問題がクリアされたとして、登記に必要な印鑑証明書や住民票に代わる書類は、住所の変更について、及び登記委任状にされた署名が本人のものである事についての在日中国大使館・領事館又は中国公証人の証明書です(昭和25.2.15-民甲432民事局長回答、昭和34.11.24民甲2542民事局長通達)。


また、この場合贈与証書又は売渡証書(登記原因証明情報)も作成が必要で、これについても署名が必要となります(先の念書にその旨の記載があれば別ですが)ので、同様の証明書を取得することが望ましいでしょう。但し、本人が公証人役場へ出向いて、その場で委任状及び贈与証書・売渡証書に署名する必要があります。

登記の手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士が本人の意思確認をすることが必要になります。面談して本人性及び売却意思の確認をしなければなりません。帰国前に司法書士による確認が出来ていない場合は、日本に来て頂くか、司法書士がこちらから出向いて確認を行う必要があります。来日される場合は、先の証明書は在日中国大使館又は領事館で出してもらうことも出来ます。

面談での意思確認が難しい場合は司法書士に委任することは困難だと思われます(書面の授受は郵送でも可能ですが)ので、本人申請(書類作成及びアドバイスのみ司法書士に依頼)でやって頂くことになると思います。

ところで「ハンコ代」という事ですが、上記の権利関係が解決しているのであれば、特に心配する必要は無いと思いますが、新たに署名したり公証人の証明書を取得してもらったりという手間がかかりますので、その実費と手間賃程度はお支払いした方がよいでしょう。所謂利害関係人(例えば後順位担保権者)に支払うような額の「ハンコ代」までは不要だと思います。

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2006年5月15日 (月)

ビルのトイレは誰のもの?

いやー久保はずれましたね。で、が入った。

060515 これ、臨時ニュース(妻メール、しかも画像入り)で来ました。

事務所のサッカーフリークW君に教えたら、奥さんサッカー好きなんですかと聞かれました。全然そんなことはないのですが、昨日からテレビその他の媒体では大騒ぎで、今日特別番組(?)で流したとかで、だれでも俄かサッカーファンになってしまったようです。

ワタシは「松井が見てみたかった」と言ったらW君は「平山を入れて欲しかった」とか。

でも一番つらいのは監督かも。

060515_005 もう一つの事務所トピックはKタロー君登場!

ウチの主婦司法書士の一人(現在育休中)の長男(9ヶ月)が事務所デビューです。

もう女性陣を中心に大騒ぎ。写真はその時の「一部有志」と。

もう一人、夜は大先輩司法書士のK先生と、蕎麦屋で一献傾けました。

顧客サービスの提供の仕方、人脈の活用の仕方等々、色々と奥深いお話をお伺い致しました。

今日の「手」はその時のK先生。

0605145k_1 さて、今日はこんな質問が。

区分所有建物(オフィスビル)の各フロアー毎にあるトイレが専有部分として登記されている(家屋番号がついている)場合の利用関係はどうなるか(そのフロアーを所有乃至賃借していないものは、そのトイレに関する権利を持たないか)。

考えられるケースとしては次の3パターンがあります。

        トイレを専有部分所有者が所有し、付属建物として登記する。

        トイレを規約共用部分とする(登記する)。

        トイレを一部の者の所有とし、利用関係を管理規約で定める。

①、②は登記簿を見ればわかります。③は登記簿を見てもわかりませんが、①又は②の登記がされていれば、管理規約を確認する必要はないでしょう。

「①」は、1フロア1専有部分であれば十分考えられます。他の専有部分(フロアー)の所有者は当然にはトイレを使用する権限を持ちません。

「②」の場合は、原則として全専有部分所有者の共有となります。法定共用部分のように一部共用部分とする事が可能かどうか、争いがありましたが、近年の実務の取り扱いでは可能であり登記できるようです。つまり、「101号室~109号室までの専有部分についての共用部分である」という事が登記できるそうです。この場合他の部屋(フロア)の所有者はこの1階のトイレの利用権はやはり当然には持ちません。

「③」の場合は、トイレは誰か(専有部分所有者と一致しなくて良い)の所有であり、内部的に利用関係を定めているだけですから、登記簿をみてもわかりませんし、登記しない以上第三者に対抗することも出来ません(建物の区分所有等に関する法律第4条第2項)。

⇒「会社法よくある質問」シリーズの第1回目の記事、前回の記事

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2006年4月29日 (土)

差押、仮差押、仮処分のなされている不動産を安全に買うには

昨日から、会社法について書いておりますが、会社法に関する最新情報については、フクダリーガルウイキ支店

を是非ご参照下さい。会社法だけでなく、登記や法務全般にわたりウチの精鋭スタッフが交代で執筆しております。エッセイも豊富(やはり交代で執筆)ウチの事務所を知って頂く「窓」としても面白いと思います(と自画自賛)。

さて、先日破産法の担保権消滅制度記事で、差押等がある場合の取引について書きましたところ、もう少し詳しく教えて欲しいという声が上がっていたのですが、なかなかその話題に触れることが出来ず、今日になってしまいました。

不動産の売買で、対象不動産には担保や処分制限(の登記)が付着していることは少なくありません。次のようなものがあります。

・(根)抵当権(本登記、仮登記)

・賃借権(同)

・地上権(同)

・所有権移転仮登記(売買予約、代物弁済予約等)

・差押

①税務当局(国税、地方税)による税金滞納処分

②担保権(抵当権・根抵当権)の実行手続

③一般債権者による強制執行(競売)の実行手続

・仮差押 一般債権者による強制執行対象物件の保全のため(民事保全法20条)

・仮処分 係争物の保全のため(民事保全法23条)

・地役権(承益地)

・買戻権(正確には買戻の特約=解除権留保特約)

これらを確実に消滅させられることを保証するのもワタシ達司法書士の仕事の一つです。

当事者の契約に基づいて設定されている権利(抵当権、賃借権、地上権、売買予約・代物弁済予約、買戻権等)については、相手方(金融機関等)から抹消の委任を受け、書類を預かります。通常は売買代金の中から債務を弁済しますから、お金の支払いと同時(引換え)にこれらの書類を預かることになります(もちろん事前に全て確認しておきますが)。

契約に基づかないもの(差押、仮差押、仮処分等)も基本的には考え方(支払いと引換え)は同じですが、違うのは抹消登記が「嘱託」(裁判所や税務当局が直接登記所に依頼)という手続きでされるという点です。

つまり、契約に基づく場合とは異なり、抹消登記の委任を司法書士が受けることができないので、代金支払い後すぐに(所有権移転と同時に)抹消登記の手続きをすることが出来ないということです。

税金滞納の場合は差押登記抹消嘱託書を司法書士に渡してくれますので(その場で納付手続きをしたのを確認した上で)、同時抹消は可能ですが、裁判所の手続き(差押、仮差押、仮処分)の場合はそうは行きません。

債権者が裁判所にそれらの取下げの手続きをし(もちろん債務の支払いと引換えに)、裁判所がそれを受理した後、登記所(法務局)に抹消登記の嘱託(郵送)がされます。

そこで司法書士としては確実に取下げられるかどうか(取下げの要件)を確認することが不可欠となります。この手続きについて経験の豊富な司法書士に依頼したほうがよいでしょう。

尚、破産登記がされている場合は所有権移転(任意売買)登記後に破産管財人から裁判所に対して抹消登記の嘱託を請求すると言う順序になります。

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2006年4月13日 (木)

プチ信託登記入門 12 土地信託と建物登記

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⇒今日の「ジャケ買い」。当然まだ読んでませんが、賑やかしということで・・・・。

ここで少し用語の説明をしておきましょう。

まず「土地信託」。これは、不動産を対象とする信託のうち、特に土地所有者が土地の有効利用を目的として、信託銀行等に土地を信託し、受託者がその土地に建物の建設を行い、そこからの収益(賃料収入、まれに分譲収益)を受益者(=受託者)に分配するというものです。

この場合の建物の登記が特徴的です。

建物の登記記録(甲区)の記載・・

1|所有権保存

 |所有者 東京都○○区○○四丁目5番6号

|      ★★信託銀行株式会社

 |――――――――――――――――――――

 |信託

 |信託目録 第○○○号

※所有権保存登記とは初めてする所有権の登記のことです。

信託銀行が建物を建築して原始取得者(始めての所有者)となりますが、土地信託の場合、あくまでも信託として所有権を取得したという事になるのが通常です。

というのは、信託財産である土地を担保として融資を受けて建物を建てるのが通常で、その場合建物も信託財産となるのです(物上代位性、信託法14条)。従って、所有権保存登記と同時に信託登記をする必要が出てくるわけです。

これが建物信託(既存の建物を信託する)であれば、登記の内容は土地と同様、所有権「移転」登記と信託登記を同時に行う、という事になります。

1|所有権移転

 |平成○○年○○月○○日信託

 |受託者 東京都○○区○○四丁目5番6号

|      ★★信託銀行株式会社

 |――――――――――――――――――――

 |信託

 |信託目録 第○○○号

なぜか所有権保存登記の場合は「受託者」でなく「所有者」と登記されます。

藤原勇喜先生は信託行為の本質論について実質的法主体説(四宮説)を支持する根拠の一つとして、登記実務上所有権移転の場合に「所有者」と表示せずに「受託者」と表示する点を上げています(「信託登記の理論と実務」改訂増補版172頁)。

ところが所有権保存登記の場合は(信託という原因が使われないから)受託者でなくて所有者と記載すると言う考え方で処理しているとしています(同、登記研究469号142頁)。

信託行為論に関しましてはまた改めてご説明いたします。

⇒前回の      

⇒このシリーズの第1回目の

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