最初はまたまたサッカーの話題で恐縮です(実は高校途中までサッカーコゾウ)。
日本チームは気迫に欠けている(それは間違いないでしょう、今朝のポルトガルとオランダの試合、凄まじかったですよね。レッドカードが飛び交って。これをコントロールしたロシア人レフェリーも凄かった=カード出しすぎなんかじゃないですよ。只汚ねーことはすんなよオランダ)とか、ジーコの選手起用がどうとか、システムがどうとか、理屈は色々立てられますが(何か理屈を付けないと「評論」が成立しない)、要は日本の実力がまだそのレベルまで行っていないということです。
もちろん、ワタシなんかはクロアチア戦を見ていて、良くぞここまで力がついた(ウチのムスメなんて「いい試合だった」と感涙にむせんでいた)と感慨深かったのですが、上を目指すにはまだまだ力不足だという事です。
そして、実力を付けるためには、国民全体(オーバーでなく)のサッカーに対する理解度のレベルが上がらなければダメだと思います。
スポーツマスコミはその点をリードしていって欲しい。視聴率や部数を伸ばす事も重要でしょうが、目先の数字に捉われることなく、真にサッカーの「民度」を上げていくことを考えてもらいたい。
それなのに、なぜヒーローインタビューは点を取ったフォワードだけなんですか。なぜフリーキックのリプレイは、キックするところからなんですか。そこまでの過程を見たい(聞きたい)とサッカー好きは思うはずです。国民が結果しか見ないのであれば、もっと奥深い喜びを見出せるように、国民を啓蒙して行って欲しいのです。特に独占放映権を買ったテレビ局は。サッカー協会もそういう事のできないメディアには放映権を与えるべきではないと思います。
そうならなければ真の理解は生まれず、真にサッカーを愛する国民とはならず、サッカーのレベルも上がっていかないでしょう。男の子が生まれたらサッカーボールを与える国にかなうようになるわけはないのです。
そういえば先日ジェイエル社長の清水さん(人脈社長、不動産起業塾塾長)が、サッカーは「間」のある相撲や野球と違って日本人のメンタリティーには合わないと思っていたという事を仰っていたと思いますが、ある意味同じ切り口なのかもしれません。野球も相撲も「過程」が実に分りやすい。
只、日本人には、碁や将棋といった、ダイナミックなメンタリティーもありますから、必ずしもサッカーが日本人に合わないとは思いませんが。
さて、本題です。こんな問題でした。
「遺言書がない事を確認した上で、相続人に対する普通預金の払戻手続きを行いましたが、手続き完了後に別の人に預金を渡すという遺言書が出てきた場合にどう対応すればいいのでしょうか。
また、その際、銀行預金を渡す、とされた人が相続を放棄していた場合はどうなりますでしょうか。」
この設問の事例をもう少し分りやすくすると、遺産分割協議により預金債権は共同相続人中のAさんが相続する事になり、その分割協議に基づき銀行はAさんにたいして払戻しを行ったが、遺言により当該預金は共同相続人中のBさんに相続させる(遺贈する)、または共同相続人以外のXさんに遺贈するとされていたため、BまたはXが自分に対して再度払い戻せと請求してきたというようなケースだと思われます。
では、先日ピックアップしてみた「論点」に従って検討を進めて行きたいと思います。
① 遺贈と遺産分割が矛盾する場合の効力
遺言内容が遺贈である場合は、受遺者は当然相続人に遺贈を主張できます。相続人は遺贈義務者の地位を承継するからです。
② 遺産分割方法の指定に従わない遺産分割の効力
遺言の内容が遺産分割方法の指定(「Bに相続させる」という文言)の場合、判例は相続開始と同時に分割の効力が生じ、遺産分割の手続きを要しないとしています(最判平成3年4月19日)。この考え方に従えば、相続開始と同時にB又はXに確定的に帰属し、「遺産分割」の余地はないという事になります。
③ 預金債権(可分債権)の相続
この判例は不動産に関するもので、金銭債権のような可分債権についても適用になるかどうか一応問題にはなります。可分債権は相続開始と同時に共同相続人各自に分割して帰属する事となると解するのが判例の大勢だからです(つまり相続人各人から払戻の請求を受けたら銀行は払わなければならない)。
しかし、本件ではこの点は争点になっていない(一人の相続人が、自分が相続したから払い戻せと言っている)ので、この点を検討する必要はありません。尚、預金債権も分割の対象となりうるとする裁判例も少なくありません(大阪高決昭和31年10月9日他)し、銀行実務もその様に扱っています。
④ 相続人と称していたが相続人でなかった者に対して預金の払戻をした場合の効力
となるといずれにせよ預金債権はB又はXが取得することになり、無権利者のAに対して支払ったことは無効であると主張されることが考えられます。
確かに、受領権限なき者への弁済は弁済の効力を生じず、債務は消滅しないということになるということも考えられます。
しかし、分割協議に基づき、遺言書がないことまで確認した上で支払った銀行に、支払いが無効であるというのは少々酷な感じもします。
この場合にそのような主張に対抗して銀行を救済できる方法として、債権の準占有者への弁済の規定(民法478条)の適用が考えられます。債権の準占有者とは、本当は債権者ではないのに、あたかも債権者であるような外観を有する者をいい、通帳と印鑑を盗んだ者が典型ですが、表見相続人もこれにあたるというところは争いないと思います。
但し、この規定の適用をうけるためには弁済者(銀行)には善意無過失が要求されます。つまり、銀行が債権者の外観を有する者が真の債権者であるかどうかを確認するために十分な注意を払ったかという事です。
この点、通常の銀行実務として相続人に対する預金の払い戻し又は口座名義の変更の手続きをするに当たり、戸籍謄本(及び遺産分割協議書)で相続人を確定した上で、法定相続人全員の署名捺印した「相続届」を提出させる(遺言書がないことも書面上で確認を取る-設問中の「遺言書がないと確認し」というのはこの事を指すものと解される)という手順を踏んでいると思われます。
ここまでやっていれば十分な注意義務を果たしたと言える、つまり過失はなく、弁済は有効に認められるのではないでしょうか。
⑤ 特定受遺者が、自分に対する遺贈があることを知らないで相続放棄をした場合の効力
まず放棄者は初めから相続人でなかったことになりますから、「相続させる」という遺言(遺産分割方法の指定)であっても、放棄者は分割の当事者ともなりえず、預金を取得することはあり得ないと解して良いでしょう。
仮に、自分が預金をもらえると分っていたら放棄しなかった(錯誤)という事を主張したとしても、これは動機の錯誤に過ぎず、無効主張は原則としてなしえないと考えるべきではないでしょうか。
次に、遺贈の場合、受遺者は相続人でなくても良いわけですから、放棄をした相続人も受遺者にはなれることになります。もちろん、特定遺贈を放棄することも可能です(民法986条)が、遺贈を受けていることを知らなかったわけですから、別途放棄の意思表示は必要になると解されます。仮に放棄しない場合でも上述した表見法理(債権の準占有者に対する弁済)で保護されることになると思います。
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