2006年5月19日 (金)

ライブドアの辿った道 その13 保釈、公判前整理手続き 後編

今日もサッカーがらみの話題から。昨日の日経朝刊で、ワールドカップの主審を務める上川徹さんの話が出ていました。その中で、「主審とは正しい判定をすれば良いというものではなく、トラブルを未然に防ぐ努力が大事である」という意味の事を仰っています。

これはワタシ達法律家も同じです。特に弁護士さん達とは違い、訴訟をしてもさほど良いビジネスになりません(すみませんこういう事を言ってはいけませんが、霞を食って生きていくことも出来ないので)から、出来るだけ訴訟にならない様に解決する努力が不可欠です。

先日もある喫茶店の契約更新トラブルのご相談を受けましたが、よくよく話を聞くと、どうやら話の行き違い(間に不動産屋さんが入っていましたが)があることがわかり、論点を整理して双方にきちんと説明し、落としどころを見つけて無事円満に(お互い譲歩して)解決に導くことが出来ました。

このときも先ず先方と初めて話すときは、司法書士であることすら明かさずに話しました。弁護士ほどではありませんが、司法書士が出てきたということで、相手方に宣戦布告と受取られては困るからです。

ということで(前フリとは直接関係ありませんが)今日の本題です。

昨日「保釈」制度の意味について簡単に触れました。

堀江被告も約3ヶ月もの拘留期間を経て「保釈」されたわけですが(保釈保証金は3億円だそうです!)、容疑に関して全面否認しながら公判前に保釈されるのは大変珍しいケースであると言われました。

060514_005 これは、保釈の要件に関わってくることです。裁判所は、保釈の請求があったときは、原則として、保釈を許可しなければなりません(刑事訴訟法89条)。但し、もちろん無限定に許す必要があるわけではなく、死刑無期に当たるような重罪の場合など、いくつかの除外事由が定められています(同1号~6号等)。

その中に、「罪証を隠滅する」おそれというのがあります(4号)。一般的な言い方では「証拠隠滅の恐れがある」という事です。被告人が否認している場合はこの恐れが高いということから、当該除外事項に該当し、保釈が却下されるケースが大半だったという事です。

ちなみに、保釈請求がなされた者のうち保釈が許可された者の割合は49.1%(1999年~2003年の地裁平均)だそうです。但し拘留された者のうち保釈が許可された者の割合は15%(以上の数字は田口守一「刑事訴訟法」弘文堂 第4版補正版258頁から)。

しかし、これに対しては被告人(公訴提起後)の場合は被疑者(公訴提起前)の場合とは異なり、既に証拠は確保されており、罪証隠滅の余地は少なくなっていることが多いなどの理由から、否認をそのまま罪証隠滅の恐れと結び付けるべきではないという批判があります(同 259頁)

そして今回の堀江被告の場合は、上記のような実質的な判断が行われただけでなく、「公判前整理手続」(316条の2以下)との関係を無視することは出来ません。

公判前整理手続とは、公判の充実とスピードアップを図るために最近(平成17年11月施行)設けられた制度です。公判の前に事件の争点と証拠を整理するためのものです。「裁判員制度」の運用のためという意味もあるようです。

堀江被告に関しても、裁判所は公判前整理手続きの導入を決め、第一回目が去る5月10日に行われました。これによって公判自体はかなりスピードアップされ、1週間程度で終わるのではないかといわれています。

国民の注目度の高い事件に関して早期の保釈と公判前整理手続きを導入することにより、司法制度改革をアピールし、裁判員制度(今回のようなケースでは採用されることはないと思いますが)の導入をスムーズに進めるという意図があるのかも知れません。

写真は久しぶりの「看板」シリーズ。場所は、見る人が見ればわかると思います・・。

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の、前回の記事

⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の

⇒「会社法よくある質問」シリーズの第1回目の記事、前回の記事

⇒「プチ信託登記入門」シリーズの第1回目の

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2006年5月18日 (木)

ライブドアの辿った道 その12 保釈、公判前整理手続き

060518 今日は税理士の右山昌一郎先生の事務所(税理士法人)を表敬訪問。うちの会社法務グループの精鋭2人とお伺いしたのですが、先生はフクダリーガルを大変高く評価して頂いており(私ではなく彼ら会社法務グループのことを、だと思いますが)、来月22日のセミナー(六本木ヒルズクラブ)にも参加するようにと仰って頂きました。

残念だったのは、ある会計人の交流会での講師(会社法に関する)として、右山先生がウチを推薦して下さっていたのですが、行き違いもあり他の司法書士さんの方に決めてしまったということで、ウチの会社法務チームの、当該交流会へのデビューが遅れることになってしまったことです。

ワタシの怠慢のせいなのですが、これは昨日のケースとは違い、いささかがっかり(身から出た錆とはいえ、わがチームには罪はないので)。

もっとも、次の機会は間違いなく頂きます! と既に立ち直ってますが(最近我ながらホントに立ち直りが早い)。S事務局長、よろしくお願い致します!!

060518_002 ところでまたまた「じゃがポックル」の話題(しつこい?)。昨日、北海道の方達に話題を提供!と書きましたが、こんな感じです↓(ミクシー経由で頂いたメール転載しちゃいます)。

じゃがポックル。。
会う知人ごとに聞くと名前だけは2,3人、
食したことのある知人は、おりませんでした~~
気になって気になって。。眠れません~^^
内地の方に北海道限定の品切商品の情報(しかも初耳)を頂くなんて
不思議な感覚でした☆ お菓子のお話なのに。。。」

_060518 そして写真は中身の御紹介。

見た目はまんまフライドポテト。

食べると軽-い・・・。

さて、それでは今日の本題へ。久しぶりにライブドアシリーズです。

ちょっと時間が経ってしまいましたが、ライブドア前社長の堀江貴文被告が、起訴事実全面否認のまま保釈され(4月27日)、第一回「公判前整理手続」が行われる(5月10日)など、耳新しい事が多かったので、今日はそれについて。

まず、基本的なところから。犯罪容疑者を逮捕したのに、お金(保釈金)を積むと解放されますね。堀江さんもそう。なぜそれが許されるのか(これは「法的思考シリーズ」のテーマにしたいですね・・)。

ではなぜ逮捕・拘留されるのか。「悪いことをしたのだから当たり前」(それ自体が罰)と考える方もいらっしゃるかも知れません。しかし、そもそも「本当に」悪いことをしたかどうかは神様にしかわからないことです。その「真実」を人の手で明らかにして、罰を与えるべきかどうかを決めるわけですから、それが公平で正義にかなった方法で行われなければなりません。

そのために用意された制度が刑事訴訟(裁判)の制度です。これに参加させるために身柄を拘束するのが逮捕であり拘留なのです。

ですからその手続き(公判手続き)のために必要がなければ、つまり逃亡の恐れ(さらに証拠隠滅の恐れ)がなければ、解放しても構わないわけです。むしろ、本人が自分の身の潔白を証明するなどのために出来るだけのこと(防御)が出来るようにする「当事者主義」)ためには、身柄を拘束しない方が良い、という要請もあるのです。

その要請にこたえるのが「保釈」の制度なのですが、無限定に身柄を解放してしまえば、そのまま戻ってこない危険性もありますから、それを金銭で縛るために保釈金(正確には保釈保証金)を積ませるわけです。

以下続きます・・・。

⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の、前回の記事

⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の

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2006年4月14日 (金)

プチ信託登記入門  13  「REIT」

用語説明の続きです(4月12日の記事から)。

「REIT」(リート)。Real Estate Investment Trust,不動産投資信託の事です。日本の場合は「投資信託及び投資法人に関する法律」で規制され、「J-REIT」と呼ばれています。

簡単に言えば、不動産に対する出資を証券として市場で取引できるようにするというものです。今日の日本経済新聞証券欄を見ると、三井不動産他の「日本ビルファンド」からモリモト他の「ビ・ライフ」まで、32の銘柄が東京証券取引所他に上場されています。

証券欄といえば、ライブドア株が本日付で上場廃止となりますね(上場廃止に関してはこちらのをご参照下さい)。同じ日経の別の記事では、USENがライブドアを子会社化することを検討しているが「難題」があるとしています。

株価が下落している(13日の終値で94円)とはいえ、1000億円近い時価総額(株式総数約10億株)のライブドア株を取得するにはそれなりの資金が必要ですし、現金の調達が不要な株式交換(こちらの記事をどうぞ)の方法による場合、USEN側はもちろん、強制的に株式を取り上げられる(USEN株と交換させられる)ライブドア側の株主総会の承認も必要になるのが「難題」であるということです。

話が横道にそれてしまいましたが、要はREITとは不動産に対する出資について、株式と同様な小口投資を可能とし、流通性を高めるものであるということです。

先日(11)のお話で、受益者が有限会社であり投資法人になっていないのでこれはREITではないと言いましたが、J-REITの場合、証券化の器(ビークル)が「投資法人」に限られるという事です。

この様にJ-REITでビークルが(設立・運営に厳しい制限のある)投資法人に限られるのは(本場米国ではビークルの限定はない)、不動産投資信託の最大のメリットである「課税所得の90%超を配当すれば配当分は法人税非課税」にあるとされています(佐藤一雄「不動産証券化の実践」107頁)。

⇒前回の      

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2006年3月14日 (火)

ライブドアの辿った道 号外 ついに上場廃止

ライブドアシリーで、ライブドアの上場廃止条件についてお話しました。

粉飾決算(有価証券報告書の虚偽記載)は上場廃止基準にあたりますが、それを東証が認定するためには起訴だけでは足りず、当該企業による訂正や証券取引等監視委員会の告発などが必要とされているというお話をしました。

新聞報道によりますと証券取引等監視委員会が昨日、ライブドアの堀江貴文前社長ら5人と法人としてのライブドアを証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で東京地検に告発しました。

これにより東証はそれを認定する要件が満たされた事になり、同社(及びライブドアマーケティング)株券の上場廃止を決定したということです。

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2006年2月16日 (木)

ライブドアの辿った道 復習編 その11 投資家の救済(損害賠償請求)2

(昨日の続き)

取締役の会社に対する責任の追及は株主が会社に代わって訴訟を提起する制度が設けられています(株主代表訴訟制度、商法267条、会社法847条)。会社に対して責任を負っている取締役に対していわば「身内」の取締役が責任を追及することは期待し難い場合も多いからです。

次に、「偽計、風説の流布」(証券取引法158条、本シリーズでは参照)の点ですが、法令違反行為、任務懈怠行為として取締役又は執行役は会社に対して損害賠償責任を負います(商法26615号、監査特例法21条の17第1項、会社法423条第1項)。

そしてさらに不法行為責任(民法709条)を問うことも可能です。不法行為とは故意又は過失によって他人の権利を侵害し、損害を生じさせる行為であり、不法行為者はその損害を賠償する責めを負います。

ちなみに西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載事件の場合、証券取引法違反および不法行為を理由として、西武鉄道、コクドおよび両社役員を被告とする損害賠償求訴訟(原告数は1次2次併せて約280名)が提起され、現在も係属中です(詳細は弁護イトをご覧ください)。

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2006年2月15日 (水)

ライブドアの辿った道 復習編 その10 投資家の救済(損害賠償請求)1

堀江氏は起訴され、「被疑者」から「被告」になりましたが、依然として起訴事実を否認しているようです。これは堀江氏の「犯罪」を裁こうとするものですが、彼の行為によって損害を被った投資家はどのような救済を受けられるのでしょうか。

まず、「粉飾決算」(本シリーズでは)に関しては、商法は、取締役又は執行役が貸借対照表その他の決算書類の重要事項につき虚偽の記載をした場合、自ら注意を怠らなかったことを証明しない限りそれによって生じた損害を第三者に対して連帯して賠償する責任を負うと定めています(商法266条の32項、監査特例法21条の222項、3項、会社法4292項)。

また、証券取引法は、役員(取締役、執行役、監査役等)および公認会計士、監査法人が、有価証券報告書その他のディスクロージャー書類に虚偽の記載をした場合、善意(虚偽記載があることを知らない)の「投資家」(有価証券を取得した者)に対して損害を賠償する責任を負うと定めています(証券取引法2111号他)。

(続きます)

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2006年2月14日 (火)

ライブドアの辿った道 復習編 その9 起訴と上場廃止

昨日(13日)、東京地検特捜部はライブドア前社長の堀江貴文氏他を証券取引法違反で起訴しました。起訴事実としては、この記事でも取り上げてまいりましたように、旧バリュークリック・ジャパンの株価を引き上げて売却し、利益を上げることを目的に、すでに投資事業組合の実質的支配下にあったマネーライフをバリュー社が子会社化する旨を発表、これが「偽計」に当たるとされた点が一つ(「」)。もう一つはバリュー社の利益を水増しして発表、いわゆる粉飾決算を行ったとされた点です(「」)。

では、この起訴によって上場廃止となる可能性はあるのでしょうか。結論としては、起訴そのものが上場廃止基準に該当することはないようです。

昨日書きました東証マザーズの上場廃止基準に照らし合わせますと、廃止基準に該当する可能性として現在問題視されているのは、粉飾決算、すなわち有価証券報告書の虚偽記載の点です。そして、それを東証が認定するためには起訴だけでは足りず、当該企業による訂正や証券取引等監視委員会の告発などが必要とされています。

現在、ライブドアサイドによる訂正は期待できませんし告発もされておりません、そこで、「株券上場廃止基準」のうちの一般条項「公益または投資者保護」という基準の適用が現在検討されているようです。有価証券報告書虚偽記載罪で起訴されたことをもって「公益」または「投資者の利益」を害するものであるという判断を下すと言うことでしょうか。

(それにしても過去記事を読み返してみて、ホントに読みづらいですね。長いし、箇条書等の工夫もされていないですし・・・。反省です。)

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2006年2月13日 (月)

ライブドアの辿った道 復習編 その8 上場廃止?

読者の皆様から、記事が長すぎるし難しい(良く言うと「アカデミック」)という声(声なき声?・・コメントがほとんどないので)が寄せられましたので(実は書く方もいささかしんどかったのです)今後は少し短めにかつより噛み砕いた内容のものにさせて頂きたいと思います。

コメントもお待ちしてます(と言いましたら「読むだけで精一杯」という声も)。

・・・・・・・・・・・・・・・

ライブドアの株が上場廃止になる可能性があるそうです(すでに管理ポスト割当)。なぜでしょうか。ためしに務所のスタッフ達に尋いてみましたところ「証券取引法に違反したからじゃないですか」「上場基準に抵触するからじゃないですか」という答えが返ってきました。まあ大体そういったところです。厳密には東証マザーズの「上場廃止基準」に該当してしまうことになるからですが、証取法に違反するだけで上場廃止になるのでしょうか。上場基準、そして上場廃止基準とは何でしょうか。

株式の「上場」とは、簡単に言えば株式市場において売買取引の対象となる株式とすることです。

ではなぜ株式を上場するのでしょうか。この上場の目的が理解できれば、上場の基準(すなわち上場廃止基準)も理解できるはずです。

株式上場の目的としてはまず会社・創業者サイドのものとして、資金調達(流通性の高い株式ほど投資家は投資しやすい)、会社の対外的信用度・知名度を高める、従業員の目的意識を高める、人材獲得、創業者利潤の実現といったところが上げられます。

次に投資家サイドからのものとして、投資インフラの享受(有価証券報告書、適時開示規則等によるディスクロージャー、信頼できる契約・決済システム、不公正取引防止システムの提供)、信頼できる投資対象の存在、流動性の享受、といったところです(これらに関しては久保先生上場基準・審査ハンドブック中央経済を参考にさせていただきました)。

すなわち、これらの上場目的を達成するために設けれられているのが上場基準というわけです。

具体的に東証マザーズ基準を見てみますと、次のようなものがあげられています。

上場株式数、株式分布状況(株主数)、上場時価総額(10億円以上)、売上高、虚偽記載・不適正意見等(がないこと)

この裏返しですが上場廃基準は次のようになります。

売上高(1億円未満)、上場時価総額(5億円未満等)、株主数(150人未満等)、売買高、債務超過、その他(会社の信用状況の悪化、有価証券報告書虚偽記載等)。

では、今回、ライブドアの株式はなぜ上場廃止になる可能性があるのでしょうか。

(答えは明日・・・・)。

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2006年2月12日 (日)

ライブドアの辿った道 復習編 その7 バリュークリックジャパン株式の100分割

先日、「福田さんを見かけたよ」という方がいらっしゃいました。日本橋かどこかの駅を歩いていたのを「発見」したのだそうです。そしてその様子が「いつもと同じだった」というのです。え、どういう意味かな、と思ったのですが、要は「よく、普段はとても明るくて愛想が良いのに一人でいるときは全然違って暗いとかって人がいるけど、あなたの場合は全く普段と変わらなかった」から「つまらなかった」ですって。これってどう受け取ればよいのでしょうね・・・。

今度見かけたときは声をかけてくださいねH編集主幹。

さて、本題です。

2004年11月、バリュークリックジャパンは自社株式を100分割すると発表しています。株式の分割自体は一株をいくつに分割しようが法律上全く問題はありませんが、この分割は株価の上昇を目的としたものであるとされています。東京証券取引所は1月18日この株式分割の経緯、買収との関係、証券取引法違反の認識の有無について適切な開示をするよう要請しました。それに対してライブドア自身は当然それを否定する発表をしております(これが説得力あるかどうか、そのレをご覧ください)

株式の分割は、現在は会社が自由に行うことが出来ます。そして理論的には(法律上は)それによって全体の株式の価値は変わらないはずです。例えば1本の羊羹を10切れに切ったとしても羊羹の量が増えるわけではないということと同じです。むしろ小さくて食べやすくなります。株式の分割も通常は羊羹を食べやすくするのと同じ目的で行われます。つまり、取引単位(1株当りの金額)を小さくして、個人投資家等が買いやすくするために行われるのです。

ところが現実には市場価値が上がってしまう場合があります。この主な理由は供給不足から来るとされています。例えば1株を100株に分割した場合、市場に10000株出回っていたとして、100万株になりますが、新たに99万株の株券を発行しなければならず、その期間が4~50日かかるため、市場では供給不足がおこり、株価が上昇するというわけです(詳細は先にご紹介した葉玉匡美氏ブログをご参照ください)。      

しかし、これは適正な株式の評価とはいえないとして問題視され、東京証券取引所も上場企業に対して5分割以上の分割は自粛するよう要請していました。さらに、分割後の株式は株券が発行される以前に売買可能とし、この問題は解決されたとされています。

ただ、このときは思惑通りバリュークリックジャパンの株価は急上昇し、マネーライフ株との交換によって取得した株を「VLMAⅡ」は市場で売却し、数億円の利益を計上したといわれています。

この利益が最終的には出資者である(間に複数の組合等が介在し、さらに海外の口座や海外証券会社等を利用したマネーロンダリングの疑惑も出ているようですが)ライブドアに還流したという結末のようです。

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2006年2月11日 (土)

ライブドアの辿った道 復習編 その6 子会社化発表は「偽計」か

ハンドルネーム占いというサイトを発見。ハンドルと生年月日を入れると大吉から大凶まで7段階の評価とコメントが・・。例えば「末吉」は「いまいち危なっかしいです。一歩間違えば貴方に悪運が・・・。」、「大吉」だと「おお!貴方にピッタリのハンドルをお使いになられてますね。運気も最高ですので将来安泰。」

でも、「福田龍介」で入れたら「凶 う~ん、イマイチ。愛着がなければすぐ改名しよう!」だって。信じませんこんな占い!!

では、本題です。

昨日、バリュークリックジャパンがマネーライフを完全子会社化する旨を発表し、その方法が「株式交換」であったとお話しました。

問題はこの株式交換にあるのではなく、子会社化するという発表をした点にあります。バリュークリックジャパンは当時ライブドアの子会社でしたが、マネーライフも既に投資事業組合「VLMAⅡ」の傘下にあり、実質的にはライブドアの支配が及んでいたわけで、そういう意味では既に買収は完了していたといっても良いともいえます。この時点でさらに子会社化すると発表したのは証券取引法158条の「偽計」、即ち「他人の正当な判断を誤らせるような謀略的行為」に当たり、それが「相場の変動を図る目的をもって」為された場合は5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処するとされています。

要は、例えばA社の子会社B社がC社の株式を全株所有している場合に、A社がC社の株式を取得するあるいは株式交換を行ってC社を子会社化するとしても、それによってA社の価値が増加するというわけではないというのと同じ事です。

ですから、この場合は子会社化がA社の評価(株式の市場価格)に影響することはありません(A社とC社が無関連の場合は当然影響してきます)。これはB社が株式会社でなく組合(所謂投資事業組合)だった場合でも同です。今回もそのような関係を第三者(マーケット)が知っていれば、A社(バリュークリックジャパン)の評価に影響するようなことはなかったはずです。ところが、この組合との関係が明らかでなかったため、子会社化が評価に影響した(少なくとも影響させることを目論んで子会社化を発表した、これが良くない(証券取引法違反)ということになったようです)。

繰り返しになりますが、これらのことを会計的に見ると、B社(組合)が子会社だとすると、A社にとってB社(組合)は「連結対象」であるということになります。つまりA社の決算書はB社のものも取込んで(合算して)作らなければなりません(連結決算書)。そして親子間で売買をした場合、その売上と経費は相殺しなければならず、売り上げに計上することは粉飾となる可能性があるということです。

また、東証の適時開示規制との関係も先に述べたおりです。

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