2018年4月30日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。~事後のトラブルの防止方法 3~

④ 「登記されていないことの証明」を取得すること
   
   
 これは、本人が成年後見制度を利用していない(後見人がいない)ことを証明する資料であり、法務局(本局)で取得できる。
  
   
 つまり、「成年被後見人」は意思無能力者であるため、「認知症」患者について成年後見に関する登記がなされると、意思無能力者であると認定されてしまう。
   
  
 そこで、成年被後見人として登記されていないことの証明書は、「認知症」患者でも意思能力があると認定されるための資料となるのである。
  
   
 ⑤ 不動産活用の公正証書化又は公証人の認証を受けること

 「認知症」患者の不動産の活用行為について、「公正証書」や「公証人の認証」を受けた文書にして残しておくことである。
   
  
 「公正証書」とは、法律の専門家である公証人が作成する公文書であり、不動産の活用行為(売買等の取引、遺言)を公証人が証明するものである。
   
  
 また、「公証人の認証」とは、私署証書(作成者の署名又は記名押印のある私文書=不動産売買契約書等)が作成名義人の意思に基づいて作成されたことを公証人が証明するものである。

 「公正証書」「公証人の認証」は、法律の専門家が書面の作成に関与するため、訴訟になった場合の証明力が通常の私文書に比べると格段に高い

 もっとも、「公正証書」の作成(遺言を除く)も、「私文書の認証」も、本人が公証人と会う必要がないため、あくまでも自分達の本人に意思能力ありという判断を補強するためのものであるという認識を持っていることが重要である。

◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年4月23日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。~事後のトラブルの防止方法 2~

① 医師の診断書を取得すること
   
  
 これは主治医に依頼することが望ましいが、できるだけ具体的に書いてもらうことが重要である。
   
  
 例えば、認知症か否か、認知症であった場合いかなる型か(アルツハイマー型、レピー小体型、脳血管性、前頭側頭型など)、、どのような異常がいつ頃から始まり、その異常の程度の経過(段々ひどくなるのか等)について、具体的に書いてもらう。
  
   
 弊社で取り扱った例では、「不動産の売却についての判断能力がある」旨を書いてもらったことがある。
   
   
 ② 本人からヒヤリングした内容を記録すること
   
   
 これも具体的会話内容を記録する。
    
  
 特に、本人が何を話したかが重要である。話した内容を具体的かつ正確に記録しておく必要がある。話した内容に整合性があれば、意思能力があることの有力な資料となるからである。
  
   
 こちらの質問に対して、「はい」と答えただけではダメである(敗訴の例あり)。この場合、本人が質問の内容を理解した上で真意で賛同したか否かが不明であり、その質問に誘導された可能性を否定できないからである。
  
    
 ③ 本人の行動のビデオ撮影又は本人の発言の録音
  
  
 撮影や録音について、本人やその家族の承諾を得るのが難しい場合もあるが、できるだけ本人の行動の動画本人の発言の記録は残しておきたい。

 本人の行動や発言に合理性があれば、意思能力があることの有力な資料となるからである。
  
  
つづく
◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年4月16日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。~事後のトラブルの防止方法 1~

7 事後のトラブル発生を防止する方法とは?
 
 ⑴ 推定相続人全員の承諾書を取得しておくこと
  
 
 そもそも訴えられる等のトラブル発生を防止するために、「認知症」患者の不動産の活用(売買等の取引、遺言)について、推定相続人全員の承諾書を取得しておくことが必要である。
 
  
 最もクレーム源となる可能性が高いのが親族、特に本人に万が一のことがあった際に不動産を相続するはずであった「推定相続人」だからである。
  
 
 つまり、推定相続人は、被相続人の不動産の活用行為が「認知症」ゆえに意思能力がなく無効であると主張して、訴えを提起する可能性が高いのである。

 ⑵ 意思能力ありの判断に「過失」を認定されない資料を用意しておくこと

 ⑴の承諾書を用意していれば訴えられる可能性は低いが、万が一訴えられた場合でも責任追及を回避する、つまり「意思能力」や「遺言能力」ありとの判断に「過失」を認定されないための資料を用意しておくことは不可欠である。

 以下の5つが考えられる。

180129

つづく

 

◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年4月 9日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。~事後へのトラブルへの対処法を備える必要があるか~

6 事後のトラブルへの対処法を備える必要があるのか?
 
 
 事後への備えは、、意思能力ありと判断した場合に特に重要である。
 

 「認知症」であり判断力が低下している場合に不動産を活用するのであるから、活用後に意思無能力」ないし「遺言能力なしを理由に、売買等の取引や遺言が無効であると訴えられる等のトラブルが発生する可能性があるからである。
 
 
 もちろん、きちんとした手順を踏んで意思能力や遺言能力ありと判断している訳であるから、公明正大、誰に対しても、「意思能力」や「遺言能力」があることの主張を躊躇する必要はない。
 
 
 もっとも、事後のトラブルに対処して解決するために、「意思能力」や「遺言能力」があることをきちんと主張して、誰に対してもそれを納得させるだけの資料を用意しておかなければならない。
 
 
 すなわち、最悪、訴訟になっても勝てるだけの証拠を整えておくということである。
 
 
 それには、次の準備が必要である。

つづく

 

◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年4月 2日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。~ 意思能力の有無の判断方法~

5 「意思能力」があるかどうかを判断する方法は?
 意思能力の有無をどのようにして判断するのか?


【第一段階】
 まず、本人と何度も「会話」をする。
 これは、日常会話のなかから意思能力の程度をつかみとるということである。
 この場合、専門家の行う認知症の簡易テストの方法が参考になる。
 

 例えば、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」や「ミニメンタルステート検査(MMSE)」等である。
 

 これだけで「意思能力」の程度を判断できる場合もあるが、判断できない場合は、次の段階に移る。

【第二段階】
 

 次に、周辺からの「情報」を集める。


 「周辺」とは、本人について多くの情報(本人の生活全般に関する情報等)を持つ方達を意味する。 
 すなわち、家族介護・看護担当者主治医、市区町村・地域包括支援センターの福祉関係者等である。


 これでも判断がつかない場合、次の段階に移る。

つづく

◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年3月26日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。~意思能力の有無を判断するための行動指針とは~

4 意思能力があるかどうかを判断するための行動指針とは?
 
   
 ⑴ 意思能力が疑われる兆候を早期に把握すること
  
   
 まず、意思能力を疑うべきかどうかを早い段階で判断することが必要である。
  
   
 それは、意思能力がないことを窺わせる兆候を早くつかむことを意味する。

180122

 
 次のような情報をキャッチしたときは、意思能力がないことを窺わせる「兆候あり」と判断しなければならない。
  
 
 ① 高齢である 
 ② 日常生活に介助が必要である 
 ③ 要介護状態である(要介護認定を受けている)
 ④ 老人福祉施設や知的障害者施設に入所している 
 ⑤ 病院に入院している 
 ⑥ 契約書の署名が代理署名である、又は、本人の署名だが字が著しく乱れている
 ⑦ 不動産の取得時期が古い
 ⑧ 売買条件が本人に著しく不利である(売却代金が低廉である等)

⑵ 本人に会って会話すること
 
  
 これらの情報をつかんだら、次に行うべきことは、本人と「会う」こと、そして本人と「会話」することである。
  
  
 もちろん、「認知症」か否かの判断は医学的判断であり、意思能力の有無の判断は法律的判断である。
  
  
 したがって、いずれにしても、最終的に専門家の判断を仰ぐ必要がでてくる場合もある。
  
 
 もっとも、専門家に頼らなくても判断が可能な場合も多い。
 
  
 それは、①誰が見ても意思能力に問題がないと感じる場合と、②逆に誰が見ても完全に意思能力がないと感じられる場合である。
  
  
 このような場合、本人に会って話をすれば業界人なら判断できる(はずである)。
 問題となるのは、どちらとも判断がつかない場合である。
 
   
 この場合に行うべきことは、さらに本人に関する情報を集めることが必要である。


つづく

◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年3月19日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。 ~認知症と意思無能力の定義及び関係~

2 「認知症」と「意思無能力」は、どのような概念か?
 
 ⑴  「認知症」とは、「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の機能の質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能低下した状態をいう。」(介護保険法第5条の2)

 ⑵  「意思無能力」とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く」ことをいう(民法7条参照)。つまり、自己の行為の結果について合理的な判断をする能力(=意思能力)がないことを意味する。

 分かりやすく言うと、「意思無能力者」とは、「日常的な買い物も自分一人ではできないような方」である。(「わかりやすい成年後見制度の手続」最高裁判所)
 
  
 ⑶ また、有効に遺言ができる「遺言能力」とは、遺言の内容と結果(効果)を理解し判断できる能力を意味する。これは行為能力の程度よりも低くてよく(民961条[満15歳以上で遺言可能])、少なくとも「意思能力」があれば足りると解されている。
 
 
 実際にも、 「遺言能力」は、財産管理能力とは異なり、自己の財産を誰に取得させるかという比較的単純な事項を理解できる程度で足りるとする裁判例(平成23年12月12日東京地裁判決)もある。

180114

 「認知症」と「意思能力」の関係は?
   
 
 ⑴ そうすると、「認知症」とは一定レベルまでの「判断力の低下」を意味するが、必ずしも「自己の行為の結果について合理的な判断をする能力がない」=「意思無能力」であるという訳ではないのである。
  
   
 確かに、「認知症」を発症している高齢者は判断能力が低下しており、「意思無能力」である場合も少なくはない。
 
  
 しかし、反面、「認知症」により意思能力が低下していても、完全に意思能力を失っているとは言えないレベルの高齢者(=意思無能力者ではない)も、少なくはないのである。
   
 
 そのような高齢者であれば、「認知症でも不動産の活用はできる」のである。
  
 
 ⑵  また、意思能力の判断は、医学的な判断ではなく、法的な判断であり、行われる法律行為の内容等に照らし個別具体的にその有無が判断される。
 
 ⑶ 実際にも、「認知症」の診断を受けた者が行った不動産の活用(売買・贈与等の取引、遺言)が有効とされた裁判例も意外に多い。

 例えば、平成20年10月 8日東京地裁判決は、「認知症」で徘徊行為までしていた者が行った不動産の売買について、取引経緯や当人の経歴等を総合的に勘案して有効であるとしている。
  
 
 また、平成29年6月26日東京高裁判決は、「認知症」の遺言者にせん妄症状が現われるのは夜間と早朝に限られ、その症状の程度は重くはなく、遺言作成は日中に行われ、公証人遺言能力を問題としていない等を理由に、遺言を有効としている。

 ⑷ では、どうすれば「認知症」の診断を受けている、あるいは高齢で判断能力が低下している者が、有効に不動産を活用できるのであろうか?
 
  
 それには、まず、意思能力の有無の判断方法を知ることが必要である(第2回)
 
  
 次に、後日トラブルにならないように備えることが必要である(第3回)


つづく


◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年3月12日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。 ~認知症でも不動産の活用できるのは当たり前~

1 認知症患者が単独で不動産の活用ができるのか?

 売主が「認知症」だというだけで、司法書士から、「ダメダメ後見人を立てなきゃ、一人で不動産の活用なんてできませんよ!」と言われた経験のある読者は多いのではないだろうか。

 しかし、「認知症」患者でも、後見人を立てずに単独で不動産の活用ができる場合があるのである。
 
  
 「本当なのか?」と疑いの目を向けている読者の顔が見える(笑)。

 そう思われるのも無理はないが、もちろん本当である。そして、それはさほど難しい話ではない。

 つまり、「認知症」=「意思無能力」ではないというだけのことである。
 
  
 「意思無能力者」の行為は無効である(改正民法3条の2)。
 そうであれば、  「認知症」患者でも「意思無能力者」でない場合は、その認知症患者が行った行為は法律上有効に成立するのである。
 
 では、まず「認知症」と「意思無能力」、それぞれの定義から見てみよう。


つづく


◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月 7日 (金)

認知症対策シリーズ

去る3月1日、「認知症対策シリーズ」の中の一講座として「認知症と不動産取引」の講座をやらせて頂いた。やはり関心の高い方が多く、シリーズの中では最も受講者数が多かったそうだ。

約60名の参加を頂いたが、今回の特色は弁護士の方が多かった事だ。某有名事務所の弁護士さんの他、1割以上が弁護士だった。

170301 アンケートに答えて頂いたのは20数名だったが、2名の方を除き「大変参考になった」、または「参考になった」と答えて下さった。頂いたコメントは次の通り(そのまま掲載する)。

◆もっと居住用財産の処分に関する許可についての実例が聞きたかった。

◆実務的な内容が多く、これからの業務に役立つことが多かった。
◆最初は認知症と不動産取引の内容と違った。
→冒頭に認知症以外のトラブル実例についても紹介させて頂きました。

◆実際の診断書の文例があり参考になりました。

◆最初のほうで事例の結果をHPで、というのは少し不親切に感じました。
→認知症とは違うテーマの問題だったことと、HPにアクセスして頂きたいという計算からです済みません。170301_2
◆テキストが文字情報ばかりで事例図解が欲しい。
→なるほど。今後改善する様努力します!

◆非常に参考になりました。高齢者の契約関係を多く取り扱っている為、かなり注意して行わなければリスクが高いとわかりました。

◆項目ごとにスライドがわかれており、見返す上で使いやすいと思います。

◆量が多いため、説明をしない部分もあり、消化不良の部分もあった。

◆質疑応答に関してはわかりやすかった。
◆大変勉強になりました。

◆高齢化に伴い、認知症の問題は益々重要。

◆最後に「最近の質疑応答」をまとめているのは非常に良いと思いました。

ありがとうございました。

つづく

◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら

◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年2月18日 (土)

「認知症と不動産」 大阪では税理士さんの関心が高い?

先日(2月9日)、「認知症と不動産取引」の講演を大阪でやらせて頂いた。前回東京でやらせて頂いたTAP実務セミナーの大阪版だ(東京版の内容についてはこちら)。

東京では不動産業4割、税理士3割であったが大阪では税理士の方が5割を超え、不動産業の方は3割程であった。しかし中には沖縄から来られた方もいらっしゃって、やはり熱心に聞いて頂いた。認知症と不動産のかかわりについての関心の高さが感じられた。

質問内容は東京に比べると基本的な事が多かったかもしれない。例えば次のような内容だ。

Q:後見人候補として子など推定相続人がなるのは問題がないのか
A:問題はないが相続人間の関係によっては選任されない場合もある

Q:後見人は株主総会での議決権行使ができるのか
A:後見人は可能

Q:売買の場合と賃貸の場合の違いは
A:不動産の処分ということであれば基本的に考え方は同じである。

Q:不動産の買主は後見人と取引すれば問題はまったくないのか
A:原則として後見人は不動産を売却する権限を有するが、必要かつ適正という制限がある。

尚、3月1日にもほぼ同一内容の講演を「認知症対策シリーズ」の一講座として東京でやらせて頂く予定である。詳細はこちら

◆同じカテゴリの前回の記事は→こちら
◆フクダリーガルとは・・・ホームページはこちら
◆フクダリーガルの求人ページはこちら

| | コメント (0) | トラックバック (0)