2016年3月24日 (木)

用地仕入れ担当者向けリスク管理セミナー

先週、某開発・分譲会社様の用地仕入れ担当者向けの研修の講師を務めさせて頂いた。
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テーマは「土地仕入れリスク管理の基本的知識」。対象は本支店の用地仕入れ担当の若手、中堅社員の方25名程。遠隔地の支店にはテレビ会議システムで同時中継された。

約2時間に渡って土地の調査から仕入れ完了後に至る諸段階でリスク防止のために仕入れ担当者に必要となる知識・スキルについて、実例(実際に弊法人が事件・事故を未然に防いだ数例)も交えて講義させて頂いた(項目については後述)。

2時間では少々駆け足だったかと思ったがやはり講義後、受講者代表の方から「私や、ある程度経験の長い他の社員も
各項目についてもう少し掘り下げてお聞きしたいと感じています」というメールを頂いた。Img_6878_2

一方同席した弊司法書士法人の若手司法書士達からは「日頃自分達が扱っている事について取引当事者の側に立って考えるという視点が新鮮だった」「日頃の疑問が解消された」という感想。

不動産開発分譲会社の用地仕入れ担当者も販売担当者も営業的な観点(商品化に相応しい土地を良い条件で購入する/良い商品を作り良い条件で販売する)だけでなく、リスク管理の視点も持つことが必要である。勉強する事が多く大変だとは思うが、競争が激しくなればなるほどリスク管理の重要性は増してくる(購入元、売却先の対象範囲を広げざるを得ない)ので頑張って勉強して頂きたいと思う。

私達も出来るだけお手伝い致しますので。

・・・・

尚、今回の講義の概要(目次)は下記の通り。

※こうやって見てみると確かに2時間では足りなかったかも・・・。

Img_6882_2 一. 調査段階

1.
 登記簿の確認

 注意を要する登記原因

I.   相続

(ア)  問題の所在

(イ)  確認資料

II.   譲渡担保

III. 代物弁済

IV. 買戻特約

V.   残存仮登記

VI. 休眠担保権

VII. その他

 旧登記簿の調査

 登記されてからの期間

 詐欺師に狙われやすい登記

二. 検討(交渉)段階

1. イレギュラーな取引形態

 一体不可分

 中間省略

 一部払い下げ

 その他

2. 高齢者の場合

3. 相続登記未了の場合

三. 契約段階(問題発生の防止)

1. 本人確認

 本人確認は何故必要か=何を確認するか

 方法

 法の要請

2. 手付

 意義

 ゼロ契約

 仲介預り

3. 瑕疵担保責任

 意義

 対象(土壌汚染・地中障害他)

 免責・期間

4. 条件

四. トラブル発生後

1. 契約解除

 意義

 種類

2. 損害賠償

3. 当事者の責任

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2015年12月 3日 (木)

宅建法定研修で中間省略と認知症対策を講義

昨日、公益社団法人全日本不動産協会東京都本部港支部の法定研修会で講師を勤めさせて頂いた。

151202_9 テーマは「新中間省略登記の基礎」と「高齢者との取引における認知症トラブルの回避」。

支部とのことなので数十名の参加かとタカをくくっていたら豈図らんや300名もの参加者!151202_10

2つのテーマで2時間と、時間は全く足りなかったが皆さま非常に熱心に聞いて頂いた。居眠りする人は全く見当たらなかった・・・・。 151202_11

質問も活発で時間オーバーする程。有難うございました!

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2015年10月28日 (水)

不動産取引現場での認知症リスク

先日大手仲介会社さまの社内研修で、「高齢者との取引における認知症トラブルの回避」というテーマで講義をさせて頂いた。

次の様な内容だ。

・ 認知症発症者が不動産取引に関わった際の問題点=取引無効リスク、トラブル発生リスク、責任追及(損害賠償請求)リスク

151023_1_3 ・ 売買当事者の意思能力の有無を疑わせる客観的事情にはどんなものがあるか、またその事情があった時に何を、どのようにすべきか

・ それによって導き出される判断=全く意思能力なし、著しく低下、低下など

・ 判断がつかない場合はどうするか=情報収集(対象者、内容)

・ 上記でも判断が付かない場合はどうするか=法務セクションへの報告連絡相談→専門家への依頼

・ 認知症だが意思無能力とまで言えない場合に何に気を付けるか=トラブル防止、責任追及(敗訴)阻止

・ 上記のために何をするか=証拠となる資料の徴求、準備151023_2_4

・ 意思能力が認めらなかった場合=成年後見制度の利用

・ 成年後見制度利用の注意点=期間的問題、限界等

・ その他=代理人の注意点、意思能力あっても無効とされる例、等

もっと詳しくお知りになりたいという方は弊事務所までお問合せ下さい

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2015年9月18日 (金)

司法書士はリスクコンサルタントたるべしと高裁も認めた

私はかねてより、司法書士の仕事は取引当事者が決めた事をそのまま登記に反映するだけの手続屋ではなく、当事者の決定内容自体がそもそも妥当(安全)なのかどうかまでを調査・検討し取引続行の可否を助言出来るリスクコンサルタントでなくてはならないと主張して来たし、弊事務所(フクダリーガルコントラクツ&サービシス司法書士法人)もそういう仕事の仕方を貫き通して来た。

そしてこのノウハウは金融機関や不動産会社の社内研修でも提供させて頂いてきた(来月も某大手財閥系不動産仲介会社での研修を予定している)。

しかし残念ながらこれまで一般的には司法書士は決められたことをその通りに登記するだけの存在であるという認識が多くを占めていた。裁判所もそういった理解で、司法書士の責任を重く認める事はなく(全責任に対して)平均20%程度の責任しか認めて来なかったと言われている。

しかし最近、その認識に変化が見受けられる。司法書士に重い責任を負わせる裁判例が登場しているのである。大変喜ばしい事だ。

直近ではこんな裁判例がある。

高齢の不動産の売主の意思能力(判断能力)が問題となった事件。

第一審の東京地裁は従来の考え方を踏襲し、「司法書士は,登記手続の専門家ではあるが,意思能力について専門的な知見を有するものではなく・・・登記手続の委託を受けた場合,依頼者に意思能力がないかどうかについて調査確認すべき義務を一般的に負っていると解することはできない・・・・本件取引経過の詳細まで承知して,登記手続の委託を受けていたと認めるに足りる証拠はなく」司法書士は責任を負わないと判示した(平成26年12月 3日)。

これに対し控訴審の東京高裁はこの判断を覆し、「司法書士は,・・・依頼者の属性や依頼時の状況,依頼内容等の具体的な事情に照らし,登記申請意思の真実性に疑念を抱かせるに足りる客観的な状況がある場合には,これらの点について調査を尽くし,上記の疑念を解消できない場合には,依頼業務の遂行を差し控えるべき注意義務を負っている」として司法書士の責任を全面的に認めた(平成27年 4月28日。確定)

まさしく東京高裁は、「司法書士はリスクコンサルタントたるべし」と主張しているのである。

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