実体のない登記を依頼されたら その4
(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)
昨日、実体のないことを察知できる兆候について書きましたが、こういう兆候が全くなくても実体がないことはあり得ます。
それはあたかも地面師が詐欺のために偽物を精緻に作り出すように、実体がある場合と寸分違わぬ外形が作り出されている場合です。
むしろ当事者が本物であり、従って書類や資料も本物である以上、偽物の外形を作り出して司法書士を騙すことは、地面師の場合より容易だとも言えます。
例えば売買の意思のない売主と買主が売買契約を締結し代金も送金し、所有権移転行為も行うなどです。
この契約は虚偽表示で無効ですから(民法94条)、実体は存在しないと言えます。しかし、彼らがその内心(通謀)を秘している以上、見破ることは極めて困難です。
ただ、知らずに依頼を受けて登記しても、実体が不在である兆候がない限り司法書士に過失はなく、責任を問われることはない場合が多いでしょう。
尚、仮装行為の背後に強制執行妨害などの違法な目的があった場合、売主の資産状況にまで目を光らせることを求めるのは酷かも知れません。
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