司法書士の職責
(本日のフクダリーガル社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)
あなたが事故発生の可能性が高いと判断しているときに、依頼者から「司法書士を代える」(他の司法書士に依頼する)と言われたら、どうしますか?
ここで依頼者が「司法書士を代える」意図は、このままフクダリーガルに登記を担当させておくと、うるさいことを言われて登記が遅れるし、最終的には取引を中止せざるを得なくなる可能性が高いから、うるさいことを言わないで言った通りに登記してくれる司法書士に頼んでさっさと登記(取引)を終わらせる、というところにあります。
「言った通りに登記」するのは司法書士が受けた依頼の本旨ですから、(うるさいことを言わずに)言われたとおりに登記をすれば依頼の本旨を果たしたことになります。もし仮にその後、隠れていた危険を原因として問題が生じたとしても司法書士がそれに対する責任を負うことがないのが原則です。
それで良いのでしょうか?
これは司法書士の職責をどう考えるのかの問題です。
つまり、単に当事者に言われたことを、そのとおりに登記することだけが司法書士の職責であるという考えに立つなら、当事者から「あなたには頼まない」と言われれば「わかりました」と従うことになるでしょう。
しかし、司法書士の職責は言われたことをするだけではなく、取引そのものを安全に成立させるところにあるという考えに立つなら、「あなたには頼まない」と言われてもそう簡単に引き下がるわけには行かないでしょう(※)
ではどうするのか。
後者の考え方に立つフクダリーガルなら、こう答えます。
「司法書士を代えてもなんの問題解決にもなりません。他の司法書士に依頼したとしてもこの取引の危険性がなくなるわけではありません。その司法書士が、言われたことだけをやれば良いという考えの司法書士であるならともかく、そうでないなら、私達と同じことを言うでしょう」
しかし残念ながら、それでも「司法書士を代え」られてしまうことはあります。それによって問題が起きたことも(仄聞した限りですが)あります・・・。
続く。
※この立ち位置は、4月13日の本欄でご紹介した東京高裁平成27年 4月28日判決の考え方に似ている様に思えますが、大きな違いがあります。同判決は、「登記申請意思の真実性に疑念を抱かせるに足りる客観的な状況がある場合には」(調査をし、場合によっては依頼業務の遂行を差し控えるべし)と言っていますが、この立ち位置は、「客観的な状況がある」とまで言えない段階でも調査をすべき(調査を進言すべき)であるというものです。
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