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2018年3月19日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。 ~認知症と意思無能力の定義及び関係~

2 「認知症」と「意思無能力」は、どのような概念か?
 
 ⑴  「認知症」とは、「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の機能の質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能低下した状態をいう。」(介護保険法第5条の2)

 ⑵  「意思無能力」とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く」ことをいう(民法7条参照)。つまり、自己の行為の結果について合理的な判断をする能力(=意思能力)がないことを意味する。

 分かりやすく言うと、「意思無能力者」とは、「日常的な買い物も自分一人ではできないような方」である。(「わかりやすい成年後見制度の手続」最高裁判所)
 
  
 ⑶ また、有効に遺言ができる「遺言能力」とは、遺言の内容と結果(効果)を理解し判断できる能力を意味する。これは行為能力の程度よりも低くてよく(民961条[満15歳以上で遺言可能])、少なくとも「意思能力」があれば足りると解されている。
 
 
 実際にも、 「遺言能力」は、財産管理能力とは異なり、自己の財産を誰に取得させるかという比較的単純な事項を理解できる程度で足りるとする裁判例(平成23年12月12日東京地裁判決)もある。

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 「認知症」と「意思能力」の関係は?
   
 
 ⑴ そうすると、「認知症」とは一定レベルまでの「判断力の低下」を意味するが、必ずしも「自己の行為の結果について合理的な判断をする能力がない」=「意思無能力」であるという訳ではないのである。
  
   
 確かに、「認知症」を発症している高齢者は判断能力が低下しており、「意思無能力」である場合も少なくはない。
 
  
 しかし、反面、「認知症」により意思能力が低下していても、完全に意思能力を失っているとは言えないレベルの高齢者(=意思無能力者ではない)も、少なくはないのである。
   
 
 そのような高齢者であれば、「認知症でも不動産の活用はできる」のである。
  
 
 ⑵  また、意思能力の判断は、医学的な判断ではなく、法的な判断であり、行われる法律行為の内容等に照らし個別具体的にその有無が判断される。
 
 ⑶ 実際にも、「認知症」の診断を受けた者が行った不動産の活用(売買・贈与等の取引、遺言)が有効とされた裁判例も意外に多い。

 例えば、平成20年10月 8日東京地裁判決は、「認知症」で徘徊行為までしていた者が行った不動産の売買について、取引経緯や当人の経歴等を総合的に勘案して有効であるとしている。
  
 
 また、平成29年6月26日東京高裁判決は、「認知症」の遺言者にせん妄症状が現われるのは夜間と早朝に限られ、その症状の程度は重くはなく、遺言作成は日中に行われ、公証人遺言能力を問題としていない等を理由に、遺言を有効としている。

 ⑷ では、どうすれば「認知症」の診断を受けている、あるいは高齢で判断能力が低下している者が、有効に不動産を活用できるのであろうか?
 
  
 それには、まず、意思能力の有無の判断方法を知ることが必要である(第2回)
 
  
 次に、後日トラブルにならないように備えることが必要である(第3回)


つづく


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