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2018年3月26日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。~意思能力の有無を判断するための行動指針とは~

4 意思能力があるかどうかを判断するための行動指針とは?
 
   
 ⑴ 意思能力が疑われる兆候を早期に把握すること
  
   
 まず、意思能力を疑うべきかどうかを早い段階で判断することが必要である。
  
   
 それは、意思能力がないことを窺わせる兆候を早くつかむことを意味する。

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 次のような情報をキャッチしたときは、意思能力がないことを窺わせる「兆候あり」と判断しなければならない。
  
 
 ① 高齢である 
 ② 日常生活に介助が必要である 
 ③ 要介護状態である(要介護認定を受けている)
 ④ 老人福祉施設や知的障害者施設に入所している 
 ⑤ 病院に入院している 
 ⑥ 契約書の署名が代理署名である、又は、本人の署名だが字が著しく乱れている
 ⑦ 不動産の取得時期が古い
 ⑧ 売買条件が本人に著しく不利である(売却代金が低廉である等)

⑵ 本人に会って会話すること
 
  
 これらの情報をつかんだら、次に行うべきことは、本人と「会う」こと、そして本人と「会話」することである。
  
  
 もちろん、「認知症」か否かの判断は医学的判断であり、意思能力の有無の判断は法律的判断である。
  
  
 したがって、いずれにしても、最終的に専門家の判断を仰ぐ必要がでてくる場合もある。
  
 
 もっとも、専門家に頼らなくても判断が可能な場合も多い。
 
  
 それは、①誰が見ても意思能力に問題がないと感じる場合と、②逆に誰が見ても完全に意思能力がないと感じられる場合である。
  
  
 このような場合、本人に会って話をすれば業界人なら判断できる(はずである)。
 問題となるのは、どちらとも判断がつかない場合である。
 
   
 この場合に行うべきことは、さらに本人に関する情報を集めることが必要である。


つづく

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2018年3月19日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。 ~認知症と意思無能力の定義及び関係~

2 「認知症」と「意思無能力」は、どのような概念か?
 
 ⑴  「認知症」とは、「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の機能の質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能低下した状態をいう。」(介護保険法第5条の2)

 ⑵  「意思無能力」とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く」ことをいう(民法7条参照)。つまり、自己の行為の結果について合理的な判断をする能力(=意思能力)がないことを意味する。

 分かりやすく言うと、「意思無能力者」とは、「日常的な買い物も自分一人ではできないような方」である。(「わかりやすい成年後見制度の手続」最高裁判所)
 
  
 ⑶ また、有効に遺言ができる「遺言能力」とは、遺言の内容と結果(効果)を理解し判断できる能力を意味する。これは行為能力の程度よりも低くてよく(民961条[満15歳以上で遺言可能])、少なくとも「意思能力」があれば足りると解されている。
 
 
 実際にも、 「遺言能力」は、財産管理能力とは異なり、自己の財産を誰に取得させるかという比較的単純な事項を理解できる程度で足りるとする裁判例(平成23年12月12日東京地裁判決)もある。

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 「認知症」と「意思能力」の関係は?
   
 
 ⑴ そうすると、「認知症」とは一定レベルまでの「判断力の低下」を意味するが、必ずしも「自己の行為の結果について合理的な判断をする能力がない」=「意思無能力」であるという訳ではないのである。
  
   
 確かに、「認知症」を発症している高齢者は判断能力が低下しており、「意思無能力」である場合も少なくはない。
 
  
 しかし、反面、「認知症」により意思能力が低下していても、完全に意思能力を失っているとは言えないレベルの高齢者(=意思無能力者ではない)も、少なくはないのである。
   
 
 そのような高齢者であれば、「認知症でも不動産の活用はできる」のである。
  
 
 ⑵  また、意思能力の判断は、医学的な判断ではなく、法的な判断であり、行われる法律行為の内容等に照らし個別具体的にその有無が判断される。
 
 ⑶ 実際にも、「認知症」の診断を受けた者が行った不動産の活用(売買・贈与等の取引、遺言)が有効とされた裁判例も意外に多い。

 例えば、平成20年10月 8日東京地裁判決は、「認知症」で徘徊行為までしていた者が行った不動産の売買について、取引経緯や当人の経歴等を総合的に勘案して有効であるとしている。
  
 
 また、平成29年6月26日東京高裁判決は、「認知症」の遺言者にせん妄症状が現われるのは夜間と早朝に限られ、その症状の程度は重くはなく、遺言作成は日中に行われ、公証人遺言能力を問題としていない等を理由に、遺言を有効としている。

 ⑷ では、どうすれば「認知症」の診断を受けている、あるいは高齢で判断能力が低下している者が、有効に不動産を活用できるのであろうか?
 
  
 それには、まず、意思能力の有無の判断方法を知ることが必要である(第2回)
 
  
 次に、後日トラブルにならないように備えることが必要である(第3回)


つづく


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2018年3月12日 (月)

認知症でも不動産の活用はできる。 ~認知症でも不動産の活用できるのは当たり前~

1 認知症患者が単独で不動産の活用ができるのか?

 売主が「認知症」だというだけで、司法書士から、「ダメダメ後見人を立てなきゃ、一人で不動産の活用なんてできませんよ!」と言われた経験のある読者は多いのではないだろうか。

 しかし、「認知症」患者でも、後見人を立てずに単独で不動産の活用ができる場合があるのである。
 
  
 「本当なのか?」と疑いの目を向けている読者の顔が見える(笑)。

 そう思われるのも無理はないが、もちろん本当である。そして、それはさほど難しい話ではない。

 つまり、「認知症」=「意思無能力」ではないというだけのことである。
 
  
 「意思無能力者」の行為は無効である(改正民法3条の2)。
 そうであれば、  「認知症」患者でも「意思無能力者」でない場合は、その認知症患者が行った行為は法律上有効に成立するのである。
 
 では、まず「認知症」と「意思無能力」、それぞれの定義から見てみよう。


つづく


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