瞬間湯沸し器事故と法的思考
瞬間湯沸器の一連の事故は、安全装置が劣化して誤作動し点火しなくなるため、利用者からの要望で、安全装置を作動しないように「改造」したり取り外したりしたことが原因の大半を占めているという報道がありました。
サービス業である以上、お客様にとってメリットのあるサービスを提供しなければならないのは当然です。安全装置の誤作動で湯沸し器が動かなくなったら、それに迅速に対処するのはあたりまえの事です。
しかし、如何に顧客の要望だったとしても「安全」が脅かされる危険性のあるものであれば、そのような対処方法を取ることは厳に慎まなければなりません(たとえ顧客が危険性を容認しているとしても)。
司法書士も似たような判断を迫られることがあります。
典型的なのが、土地や建物など不動産の売買で、売主が高齢などの為、本当に売る意思があるのか、明確に確認が取れない場合です。
この場合、家族全員が賛成していて、当然買主もその物件が気に入っており是非欲しいと思っている、仲介の不動産業者さんも、自分が責任を持つからと言っている、というような条件の下でも、軽々に私達がOKを出すわけにはいかないのです。
誰が責任を持つかなどという問題ではなく、そもそも取引自体が無効とされてしまう危険性があるという事なのですから。
これは、瞬間湯沸し器の改造について、顧客が「改造」について、危険は重々承知だ、事故が起きても責任は持つ、と言ったとしても軽々しくOKをしてはいけないというのと同じことです。責任の問題ではなく、人命が脅かされる危険があるという事なのですから。
法律家というのは、法を操って経済活動や国民の権利保護に奉仕する仕事です。法律は手段に過ぎませんから、達成しようとしている目的を常に認識している必要があります。何を目的としているかを理解するというのは、まさしく「広義の」法的思考の一つの働きです。
サービス業に従事する人達には、常にCSという目的を理解する、という法的思考力が必要なのです。
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コメント
以前、私が自宅の底値を購入した際も、とっても怪しかったです。
持ち主ではなく、息子がサインした、売買契約書を持って、地上げ屋さんが、戸別訪問。
昔からお住まいの方が、借地の契約書のサインと比べてみて、違う字だってわかっていたのですが、結局は、それぞれがそのまま売買契約を結んだようでした。
なくなるまで、誰も会えなかったようです。
投稿: キュリアス | 2006年7月25日 (火) 12時21分
ほほー、それは今でも無効の可能性はあります(取得時効成立するまでは)。
ただ、それを言う人がいないというだけで。
投稿: ヤキソバオヤジ | 2006年7月26日 (水) 01時55分
ヘーーー、びっくり!!
多分ある高級住宅地で、120件くらいの売買が行われました。
私は、業者が一度買い取ってから、その後で売買したたった一軒だけだったのですが・・・。
投稿: キュリアス | 2006年7月26日 (水) 20時54分
はい。何件あろうと、転売だろうと、登記がされようと関係ありません。
初めの売買が無効であれば、全てひっくりかえされることがあり得ないとはいえません。
投稿: ヤキソバオヤジ | 2006年7月27日 (木) 16時04分
あのぉ、ちなみにわたしも、転売してしまったのですが・・・。
もし、今、この件で、トラブルが起きた場合、いったいどんなことが起こるのでしょうか?
投稿: キュリアス | 2006年7月27日 (木) 18時14分