会社法は体系を知らないとコワい。 「法的思考のできる奴が仕事のできる奴」 その30
スポーツグラフィック雑誌の「ナンバー」というのがあります(創刊の時は第一号で「Number 1」なので、「ナンバーワン」という雑誌かと思いました)。 その最新号でカズ(そのプロフェッショナリズムという点で日本最高のサッカー選手だと思います)こと三浦知良選手と、ヒデこと中田英寿選手が対談しています。
その中でヒデがこんなことを言っています。
今の日本代表について「一生懸命やるとかやる気を見せるとか、そういうのはやっぱり本人にしか分らないし、実際やっていると思うんだけど、表現の仕方が昔に比べて下手なんじゃないかと。周りの人に伝わらないんです。伝える必要はないかもしれないけど、周りから見えないのはどうか・・・。」「おとなしいという意味じゃなくて。表現するというのは、相手にもそういう態度を見せるということで、恐怖を与えられるかもしれないってこと。」「対戦したときに『あ、このチーム、見た目がヤバいな』とか」「そういう印象を与えるだけで、相手の戦い方もだいぶ変わってくる。」
この点を「ナンバー」は「オーラ」という言い方をしています。
これは私達の仕事の上でも似たようなことが言えますよね。いつもいつもしつこく言い続けている「挨拶」なんて、そのもっとも基本的なところです。と思っていたら今朝(6月10日)の日本経済新聞の別刷り「NIKKEIプラス1」の「何でもランキング」、テーマは「集合住宅、本当は言いたい苦情」。その第一位は「顔をあわせたら、きちんとあいさつして」。理由として多かったのは、「あいさつは近所づきあいの基本中の基本」。
ヤキソバオヤジもマンションに住んでいるのですが、子供でもきちんと元気に挨拶できる子がいると思えば(もちろん親がその様に躾けているということですが)、いい年をしたジジイ(失礼!)でもろくすっぽ挨拶の出来ない人もいます。挨拶の仕方も問題です。明るく、大きな声で、はきはきとやってもらいたい!・・・いやマンションの住人にはそこまでは言えないか。でも人の気持ちを暗―くさせるような挨拶の仕方はやめてもらいたいっ!!
余談はこれくらいにして(少々興奮しました)、本題に入りましょう。
法的思考シリーズの第30弾。今日の「法的思考」の要素は、法律の「体系」(構成)を理解していること、です。これは「狭義の」法的思考の問題といえるのかも知れません。以下はウチの担当者のレポートから。
大企業(一部上場)A社では全ての子会社に株券不発行の定めを設定し、株式譲渡制限をしていない会社については譲渡制限を設定することにしました。株式譲渡制限を設定するには、効力発生の20日前に株主に通知することが必要だったのですが、この点をA社は見落としていたのです。
もちろんA社も上場企業ですから、法務・登記に関しても担当セクションが十分に準備をしていたことと思います。実際、A社ではマニュアル(書類雛形付き)を作成してグループ全社に配布していたそうです。にも関わらずこの点を見落とししてしまったそうです。この通知書が登記の添付書類ではなかったということも、見落としの原因になったのかもしれません。
ウチの担当者が、この点に気がついて指摘し、通知書のひな形も提供させていただきました。登記の事しか考えていない担当者でしたら、気付くことも指摘することもなかったと思います。
総務・法務ご担当者の皆様、御社では大丈夫ですか?只、今日申し上げたいのはこの点ではありません。なぜこのような見落としが生じたのかという事です。担当者はこれに関しても鋭い分析をしております。つまり、ウチの担当者は「法的思考」を働かせることが出来たという事ですね。
「なぜ落としてしまったのかと言うと、それは『条文の配置』にあるのだと思います。六法で条文を見ていただければ分かりますが、商法では譲渡制限を定める際の規定は348条からまとめて記載してあり、何の手続きが必要かそこだけ見れば、まぁ分かります。これに対して会社法では全部の株式の内容として譲渡制限が置ける旨が107Ⅰ、決議要件は309Ⅲ、株券提供公告が必要な場合が列記されているのは219Ⅰ、株式買取請求権を行使できる場合が列記されているのが116Ⅰ、その場合に株主へ通知が必要とする116Ⅲ・・・と、ある程度会社法全体の構成を分かっていないと、どんな手続きが今回必要なのかを漏らしてしまうおそれがあるということです。」
いかがでしょうか、総務・法務(登記)ご担当者の皆様。十分「法的思考」を働かせてください。そして、難しいなーと思ったらウチの事務所にお任せ下さい(笑)。
※写真は上から、「ナンバー」、今日の迎え酒、今日の昼食(ソーニヤのピロシキ)、そして、護国寺の骨董市で見つけた50年前のスイスの腕時計。
⇒「会社法よくある質問」シリーズの第1回目の記事、前回の記事
⇒「プチ信託登記入門」シリーズの第1回目の記事
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