会計参与、会社法施行前の設置は可能? その3
今日は不動産フォーラム・第二期信託法研究会の第4回。株式会社サタスインテグレイト本社にて、日立キャピタル信託株式会社の高井敏男経営管理部長を講師にお招きして、日本で未だ4社しかない運用型信託会社の免許取得まで、そして営業開始半年間の、極めて興味深いお話をお聞かせいただきました。
コーディネーターは信託法の権威、筑波大学法科大学院長の新井誠先生。新井先生、質疑応答で二度に渡って話題を振って頂いたにも関わらず満足なお答えが出来なくて申し訳ございません!
エスクローの倒産隔離に関して証券化ストラクチャーが使えないかという事は以前検討したことはあったのですが、信託宣言の応用というところには考えが及んでおりませんでした。お恥ずかしい限りです。セキュリティトラスティに関しても、勉強不足で申し訳ございません(改正信託法案をさらっと読んでわかったような気になっていました)。
最終回までには名誉挽回いたします・・・。
さて、今日の本題です。
昨日の記事で、会社法施行前の会計参与設置(選任)は、現行商法上に根拠規定が存在しないためそもそも決議不可能であるとする「会社法施行前後の法律問題」(郡谷大輔編著、商事法務)の見解を紹介しました。
しかし同書は、会社法施行前であっても、「会計参与設置会社となる旨」の「定款変更決議」は可能であるとしています(4頁)。
この違いはどこにあるのでしょうか。
同書によれば、「定款の変更は、現行法の定款変更の規定に基づくものであり、条件付で会社法の制度を前提とした規定を設けることができるかどうかは、当該規定に基づく定款変更の内容の話であり、定款変更自体は、現行商法に根拠があるものといえる。」
しかし、「会計参与設置会社となる」ということも、現行商法上は根拠規定がないわけですから、やはり設置(選任)自体と同様に会社法施行前には決議不可能であると考えざるを得ないのではないでしょうか。
逆に、会社法が公布されている以上、施行日前であっても総会において十分な議 論が可能であり、決議自体が可能である(効力は施行日まで発生しない)と解することもできるのではないでしょうか。
確かに、定款という会社の根本規範を定める行為と、会計参与選任という個別具体的な決定とを同レベルで考えるのは妥当でないかもしれません。条件付決議を認めるか否かについて、定款変更とそれ以外とで別異に取り扱うというのも不合理ではないかもしれません。
しかし、その理由を前掲書のように現行商法上の規定の有無で説明するのは今一つ説得力に欠けるのではないでしょうか。
それよりも、葉玉匡美さんのブログ(会社法であそぼ)にあるように(質問いろいろ(2))、「条件付定款変更は、これまでも例があるので良いけれども、定款以外の決議については、条件付が広がるのは良くないのではないか」という、実質的判断に基づくものであると正直に言った方が良いのではないでしょうか。
⇒会計参与の条件付決議の最初の記事
⇒「法的思考シリーズ」の第1回目の記事
⇒「ライブドアシリーズ」の第1回目の記事
⇒「プチ信託登記入門」シリーズの第1回目の記事
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