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2006年3月 4日 (土)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その15 仕事のできる奴はだまされない 後編その4

「だまされないための法的思考」を検証するための格好の材料がちょうど今新聞・テレビをにぎわせていますので今日はそれについて。

皆さんよくご存知の、民主党の「送金メール事件」です、これは、民主党の永田寿康議員が2月16日の衆議院予算委員会で、ライブドアの堀江貴文前社長(ワタシの記事、「ライブドア辿った 復習編 」~をご参照下さい)が昨年8月、社内メールで自民党の武部勤幹事長の二男に、選挙コンサルタント費として3000万円振り込むよう指示していたと指摘、武部氏や二男らの参考人招致まで要求し、さらに翌日、そのメールのコピーを公表したというものです。結果的にはそのメールのコピーが偽物であり、送金についての証拠もなかったという落ちでしたが。

永田議員は謝罪し、民主党の野田国対委員長が辞任しましたが、さらに衆議院では懲罰委員会により登院停止30日の処分がされる見込みです。

さて、皆さんが永田議員の立場にいて、このメールを示されたとしたら、どの様に考えるでしょうか。そのメールをじっくり眺めて、「法的思考」を働かせようとするでしょうか。おそらくそうではないと思います。まず、そのメールを持ってきた人について考えるのではないでしょうか。その人の情報は信頼するに足りるのであろうか、その情報を自分にもたらした目的は何なのだろうか、という事をまず考えると思います。

証拠書類というものは情報の真贋を判断する材料の一つに過ぎません。以前「権利書」はなぜ大切か。そんな大切な「権利書」が「なくなる」とは。という記事の中で、権利書が本人確認資料として重要な役割をになっているというお話をしました。そこで権利書や運転免許証の偽造や「地面師」のお話をいつかしましょうという事を申し上げたと思います。世の中には証拠書類を偽造して人をだまそう(金銭を騙し取ろう)という人はいくらでもいます。

そういう危険から一般の人たちを守るのも私たち司法書士職責の一つです。

おっとっとまたまた話が逸れはじめていますね。えーと何でしたっけ、そうそうまず情報提供者に対して「法的思考」を働かせるという事です。昨日までの話で、Xさんの言動にたいして法的思考を働かせたのと同じです。今回のケースでは情報提供者(フリーランスの記者らしいですが)が信用できるか、あるいはその人が過去提供してきた情報自体が信用のおけるものだったかどうかを調査する必要があります。

そして、今回の追及の対象となった事実について信憑性があるかどうかを直接ヒヤリングするとともに、他の情報源からの調査(所謂「ウラ」をとる)も必要となります。これは証拠書類(メールのコピー)自体の信用性の問題とはまったく別のところで行われるべきものです。今回、このヒヤリングが十分行われたとは思えませんし、情報提供者について(色々な噂のある人物だったようですが)、あるいは少なくとも今回の情報の信用性についての検証がされたかどうかは疑わしいころのようです。

証書書類自体の吟味は最後になります。情報自体の信用性を補完するという位置づけだからです。そして書類自体の「ウラ」もとる(作成・発行自体の信用性を調査する)必要があります。今回はこの書類自体もはなはだ信用性に乏しいものだったようです。メールであるにも関わらず、データでの提供でなくハードコピーだったこと、さらに黒塗りのまま提供されたものであること。通常ではこういった書類が、情報の信用性を高めてくれるものとはとてもいえないのではないでしょうか。

この様に「法的思考」というのはそれを働かせる対象とその順序を誤らないことも重要です。むしろその用い方を正しく行うための判断も含めて「法的思考」であると言ったほうがよいでしょう。

私たち司法書士が、例えば不動産取引の安全を守るために行っている判断は、不動産登記その他の制度と長年の情報の蓄積に裏打ちされ体系化された「法的思考」であることは言うまでもありません(たまには宣伝させてください・・・?)。

「法的思考」シリーズはまだまだ続きます・・・。

⇒このシリーズの最初

⇒法的思考シリーズ次回の記事(その16「文書」前編

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