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2006年3月31日 (金)

プチ信託登記入門 5 信託の登記事項

_060330

いやー清水さん、昨日ほど私の携帯がカメラつきでなかったことを悔いたことはありません。昨日は某金融機関の仕事で静岡へ行ったのですが、S駅に降り立ったとたんに目に飛び込んできた冠雪の富士の雄姿、久しぶりでしたがやはりいつも新幹線の車中から見ているのとは迫力が全然違いました。東京でも以前は富士にはよく手を合わせていました(今の住まいからは残念ながら富士は見えません)。

というわけでこの写真はワタシの撮ったものではなく、静岡市観光協会HPから拝借したものです(今日はウチ司法書士のI君が同じところへ行って写真を撮ってくれているはずですので、週明けにはオリジナルの写真を掲載できると思います)。

では、本題です。

第二回目で、「信託」とは自己の財産の所有権を他人に移転するなどした上で一定の目的に従ってその財産の管理や処分をその他人にさせること(信託法1条参照)であると申しました。

言い換えると、信託の本質は次の3つに集約され(新井誠「」第2版2頁参照)、公示もその本質を公示(登記)するべきである、という事になります。

     目的財産の完全移転性(委託者から受託者に対して、対象財産権をその名義も含めて完全に移転させてしまうこと)⇒財産権の内容、財産権を移転した旨、財産権の元の帰属主体(委託者)、財産権の移転を受けた者(受託者)を公示

     管理主体と受益主体の分離性(管理処分は受託者が受益者のために行うこと)⇒財産の管理主体(受託者)、利益を享受する者(受益者)を公示

     対象財産の目的拘束性(移転された財産は受益者のために管理・処分するという制約が課されること)⇒拘束の内容(目的、管理・処分の方法などの信託条項)を公示

言うまでもなく、実務上も最も注意を要するのがこの「信託条項」です。

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2006年3月30日 (木)

プチ信託登記入門 4 「原簿」と「目録」の違いは何か

Photo_12 今日はブログの書きすぎ(?)で肩からクビ、そして側頭部までが凝り固まってしまったため、友人の鍼灸院に行ってハリを打ってもらいました。お陰ですっきり。最近はPC使用者の間でワタシのような症状の患者が増えているそうです。一番の対処法は姿勢に気をつける事(ノート型が一番よくないそうです)。ワタシのような症状のある方は南阿佐ヶ谷の梅津鍼灸治療院(03-3314-6455)へどうぞ。ヤキソバオヤジの高校の同級生で、信頼できる男です(商売っ気が全く無い)。

Photo_13 ところで左上の画像は「やきそばオヤジ」(の駄菓子。HPに掲載がないので今は発売していない?)でヤキソバオヤジとは関係ありません。ついでに下は「らあめんババア」。

さて、本題です。

2回目と前回の登記簿(登記記録)記載例で、「信託原簿」と「信託目録」という記載が見られるが、これらはどう違うのでしょうかというお問い合わせを頂きました。いずれ「信託目録」についてはご説明するつもりでしたので、今日はこの点をお話します。

信託目録と信託原簿は実質的には同じものです。昨年(3月施行)の不動産登記法の改正で、信託原簿に代わるものとして定められたのが信託目録です。

信託では信託条項(財産権の制限内容)を登記する必要がありますが、これは多岐にわたり量も多いので事項欄に記載すると登記の一覧性を害する(他の登記事項が見づらくなる)ため、別に目録を作って記載することとしたわけです。

不動産登記法の改正の目玉は登記申請のオンライン化ですが(改正の概要については)、その他に規定の整理・合理化、現代化という目的もありました。信託原簿→信託目録という変更もその一環です。

つまり旧不動産登記法では、信託原簿(となる書類)の添付を義務付け、原簿の記載内容を法定する(原簿は登記簿とみなされる)という形式の規定方法を取っていました(旧法110条の5、135条)。それに対し新法では原簿の記載事項という形式でなく端的に信託の登記事項を規定するとともに、目録に登記事項を記載するという形式に改めたということです(新法97条)。

他の一般の権利登記についても同じ改正がなされています。旧法では申請書の記載事項を規定し、それが登記簿に反映されるという形で間接的に登記事項を明らかにしていましたが、新法では登記事項を直接規定することにしています。

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2006年3月29日 (水)

プチ信託登記入門 3 個人が受託者

Photo 先日ある方と「個人が受託者になっている信託」の話をしていましたら、偶然そういった登記のされた物件の取引の依頼がありました。

次のような登記がされております(事項一部省略)

(甲区)

1|所有権移転

 |所有者 A

――――――――――――――――――――――

2|所有権移転

 |原因  ○年○月○日信託

 |受託者 B(個人)

 |――――――――――――――――――――

 |信託

 |信託原簿 第○○○号

(乙区)

――――――――――――――――――――――

1|根抵当権設定仮登記

 |債務者 A

 |権利者 X株式会社

 |――――――――――――――――――――

 |(余白)

 |

(信託原簿)

委託者 | A

――――――――――――――――――――――

受託者 | B

――――――――――――――――――――――

受益者 | A

――――――――――――――――――――――

信託条項

信託の目的  ・・委託者が第三者に対して負担する債務の返済資金に当てるために管理及び処分させる・・・。

※当該不動産は委託者(所有者)Aの自宅である。

受託者BはX株式会社の取締役である。

これを見ていただけばわかると思いますが(わからない?)、要は金融会社(所謂「マチ金」?)が融資をして、担保として債務者の居住不動産に根抵当権を設定(仮登記)するとともに所有権移転及び信託登記をしているということです。

根抵当権が仮登記なのも所有権移転が信託なのも登録免許税を節約するためであると解されます。

基本的な登記事項の勉強をする前にかなりめずらしい信託登記をご紹介することになってしまいましたが、たまたまこんな謄本が回ってきたものですから・・・。

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2006年3月28日 (火)

老後の世話をしてもらい、資産も保全するためには?

_060326 (前提)

A=配偶者死亡、直系尊属(両親、祖父母)死亡、子なし、兄弟あり

B=独身

(目的)

AはBに老後の世話をしてもらいたい。

世話をしてもらえるのであればAは自己の資産(不動産、現預金)をすべてBに譲渡してよい。

(解決案)

       養子縁組

死ぬまでの世話をしてもらうという約束のもとに養子縁組する。

養親が死亡すれば養子が全ての財産(負債含む)を相続する。

世話をするという約束を守られなかった場合は離縁可能だが、一方的には出来ない(協議離縁:民法811条1項、裁判離縁同814条)。

BがAの生前にAの資産を勝手に処分することはできない。

       遺贈

死ぬまでの世話をしてもらうという約束のもとに財産を遺贈する旨の遺言をする。

世話をするという約束を守られなかった場合、遺言は自由に撤回可能(1022)。

       死因贈与

死ぬまでの世話をしてもらうという約束のもとに自分の死後に財産を贈与する旨の契約をする。

世話をするという約束を守られなかった場合、遺言に準じて(民法554条、1022条)撤回できるとするのが判例。

       任意後見契約

Aがボケるなど判断能力が低下した場合に、Bが後見人となることを予め契約しておく。

Aの判断力低下した場合に裁判所に申し立て、後見監督人が選任され、後見が開始する。

BはAの財産管理の権限と義務を負う。

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2006年3月27日 (月)

プチ信託登記入門 番外編 信託登記は何を登記するか 予告編・・・。

the_dubliners_2 前回は信託登記は何のためにするかをお話しました。

では、何を登記するのでしょうか。

主な登記の局面としては次のようなものがあります。

・・・・・というような感じで始めようと思ったのですが、上のような状況ですので、本日はここら辺で失礼致します。

A先生、申し訳ございません。せっかく今日は信託の未来について素晴らしいお話をお聞きしましたのに・・。

清水さん、あとムラカミファンドさん、Jamesonは500円ので十分うまい・・。

それともう一人の清水さん(J.A.社)、ブログについての鋭いご指摘、評価ありがとうございました。

T社長(A.D.W.社)も早速ご覧頂いたそうで恐縮です。

ところでここは実はHOTSPOTだというところが良いのです。

 

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2006年3月26日 (日)

プチ信託登記入門 2 信託登記は何のためにするか

_060326 今年の桜は少し早いようですね。

これはウチの近所の枝垂桜です。

では、本題に入ります。

例えばAさんが自己所有の不動産をB信託銀行に信託したとき、その不動産の登記簿には次のような登記がされます(登記事項は一部省略してあります)。

2|所有権移転

 |原因  ○年○月○日信託

 |受託者 B信託銀行

 |――――――――――――――――――――

 |信託

 |信託目録 第○○○号

この下段の部分が「信託の登記」です。これをすることにより所有権の移転が「信託」のためになされたことを第三者に「対抗」(主張して認めさせる)することができます(信託法3条1項)。

言い換えますと、B信託銀行が所有者ですが、その所有権取得は「信託」のためであり、この不動産がB信託銀行の固有財産とは別個の財産(信託財産)であることを公示して、勝手な処分や強制執行を防止するのです。

つまり「信託」とは自己の所有権その他の財産権を他人に移転した上で一定の目的に従ってその財産の管理や処分をその他人にさせること(信託法1条参照)です。従って当然にその他人はその財産を自由勝手に処分することは出来ませんし(信託法31条参照)、その他人自身の債務についてその財産を差し押さえたりすることも出来ません(同法16条)。

そこで、その目的や管理・処分の内容を登記するわけです(不動産登記法97条1項)。具体的にはこの登記事項は「信託目録」に登記されます(同法97条2項、同規則176条)。

また、これらの登記事項に変更が生じた場合は、変更登記を申請しなければなりません(同法103条)。不動産の権利に関する登記については登記義務が課されていません(同法16条1項、36条参照)が、これはその例外という事になります。

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2006年3月25日 (土)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その25 仕事のできる奴はミスを恐れない

唐突ですが「法的思考シリーズ」の再開です。

このシリーズの「その1」、「その」のテーマ、「ビジネス文書と法的思考」の中で、「お詫び」の文書というものに少し触れました。これは業務上、何らかのミスを犯してしまった場合に登場する文書です。

そこで今回はこの「ミス」のお話を。

もちろんミスはしないほうが良いのですが、人間のやることですから100%ミスをなくすという事は不可能です。また、必ずしも自社でコントロールできない範囲で生じたミスでも、自社が責任をかぶらなければならないという事も起こり得ます。

そして、ミス防止と同等あるいはそれ以上に重要と言っても良いのが、ミスが発生した後の対処です。

では、まずミス防止のための法的思考について。

「法的思考」の核は「なぜ」と考える思考習慣です。この場合の「なぜ」は同じミスを繰り返さないという方向で働かせます。あるミスが発生したとき、あるいは伝統的にミスが発生しやすい事柄について、なぜミスが発生したかを考えます。もっとも案外この原因究明というのは難しいかもしれません。原因がわかっているのであれば対処は出来ているはずだからです。

ミスが発生してしまった場合にはまずそれによって発生した不都合を取り除くことが当然必要ですが、それと併せて「謝罪」や「反省」といった情緒に訴えることも重要なのです。

続きます・・・・。

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2006年3月24日 (金)

プチ信託登記入門  1 信託登記に関する条文

少々マニアックですが、信託登記に関するほんのさわりを。

まず、第1回目は信託登記にからむ条文です。

☆信託の対抗要件(信託法3条)

☆信託登記の登記事項(不動産登記法97条1項、59条)

☆信託目録の作成目的(同法97条2項)

☆信託の登記の申請方法(同法98条)

☆代位による申請(同法99条)

☆変更登記の義務(同法103条)、職権登記(101条)、嘱託登記(102条)

☆信託の抹消の登記の方法(104条)

☆登記申請代理権の不消滅(17条3号)

☆一つの申請情報による申請(不動産登記令5条)

☆信託登記の添付書類(同令別表65~67)

☆登記の実行方法(不動産登記規則175条)

☆信託目録の作成義務(同規則176条)

☆信託目録に記載された事項についての証明請求(同規則193条、197条)

☆みなし信託目録(同規則付則13条)

☆信託財産の移転の登記等の非課税(登録免許税法7条)

☆担保付社債の抵当権の設定登記等の課税の特例(同法14条)

☆信託の登記の登録免許税(同法別表第一、(7)

どうですか。信託登記の姿がなんとなく見えてきませんか?え、全然入門じゃないって?

でも「法的思考」野郎としてはまず条文を見てみないと気持ち悪いのです・・・。

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2006年3月23日 (木)

訂正です申し訳ございません。 担保権消滅制度は「使える」か? その3

先日(3月19日)ので、「住宅ローンを借りてマンションを買う場合に担保権消滅制度は利用できない」と断定的な書き方をしてしまいましたが、よく(「法的思考」を働かせて)考えてみますと(ご相談を受けた不動産会社の方からもご指摘を頂きました)手続きにおけるリスクは、(先日の記事でも少し触れました)差押(担保実行、一般債権者による強制競売、租税の滞納処分)、仮差押、仮処分などの付着している不動産の場合とさほど変わらないようにも思われます。

これらの場合も私たち司法書士が差押等の取下げ及び抹消登記嘱託が確実に行われることを確認することを条件に融資が行われています(金融機関によってははじめから取り扱わないところもあるようですが)。

担保権消滅制度の場合も同様に抹消登記嘱託が確実に行われることが確認できれば金融機関が融資に応じるという事は十分考えられます。

例えば納付する金員を融資金融機関から裁判所の口座に直接振り込むといった方法が考えられます。これはある意味差押・仮差押や仮処分の場合よりも確実ともいえます。

担保権消滅制度は住宅ローンを借りる場合でも十分利用する余地はあると言ったほうが良いかもしれません(あとは借入先金融機関にこの制度の内容と抹消手続きの確実性をいかに説明できるかですが)。

軽率に結論を出してしまい申し訳ございませんでした。

⇒「

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2006年3月22日 (水)

法的思考シリーズはまだまだ続きます・・・。

今日は時間がなくなってしまったのでこんなネタで失礼します。

法的思考シリーズの今後の予定(というか思いついたテーマ)です。

法的思考の出来る奴は・・・・・。

★段取りが旨い

★ミスを恐れない

★本の読み方がうまい

★講義の聞き方がうまい

★コミュニケーション能力が高い。

★就職活動がうまい

★人の言いなりにならない。

★多数意見やマスコミ報道を鵜呑みにしない。

★想像力・類推能力が高い

★謝り方を知っている

  

・・・・・・・・・・まだまだあります(というか思いつくでしょう)。

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2006年3月21日 (火)

養子は養親の「姓」を名乗らなければならないか 

久しぶりに「フクダリーガルwiki支店」からのご紹介です。

今日は「プチアロマ講座」。アロマテラピー検定1級の筆者が、花粉症から二日酔いまでアロマテラピーの効能をお話して参ります。リラックスや元気付けだけじゃなかったんですね~。奥が深い。フロントページ「フクダリーガル自由帳」のところにあります。

では、本題に入ります。

日曜日に、遺言のご相談でお伺いした先でこんな質問を頂きました。

養子縁組をしても、親(養親)の姓を名乗らなくても良い場合があると聞いたのだが・・・。

そこで今日はこの点についてお話したいと思います。

まず子は親の姓を名乗らなければならないという原則があります(親子同氏の原則、民法790条)。これは実の親子だけでなく、養子縁組をした親子(養親と養子)でも同じです(民法810条本文)。

例えば鈴木一郎さんが松井太郎さんの養子になると、一郎さんは松井の姓に変わり「松井一郎」となります。

また、夫婦の姓は同じでなければならないという原則もあります(夫婦同氏の原則、民法750条)。夫婦別姓は社会的には浸透しつつありますが、あくまでも「通称」であり、戸籍制度上認められているわけではありません。

従って鈴木一郎さんが長嶋シゲ子さんと結婚し、鈴木シゲ子になっていた場合、一郎さんだけが松井さんの養子となったとき、姓が松井に変わるのは一郎さんだけでなくシゲ子さんもです。

しかし、逆にシゲ子さんだけが松井さんの養子になった場合、シゲ子さんの姓が変わることはありません(民法810条但書)。

夫婦同氏を親子同氏に優先させているということです。

要するに冒頭のご質問の回答は、結婚して姓を変えた配偶者が養子縁組した場合は姓が変わらないということです。

これらの議論は、姓(民法上は「氏」)が家制度が廃止された新しい民法のもとでは戦前の古い民法のように「家」を表すものではなく「個人」を識別するものであるにもかかわらず、戸籍・氏が完全に個人単位ではなく、親子・夫婦といった「家族」を表わすものとなっているという矛盾を象徴するといえるのではないでしょうか。

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2006年3月20日 (月)

推定相続人全員の承諾の意義~売主がボケていれば登記しても永久に無効なのです。Part 4

土曜日の株式会社船井総合研究所のセミナー「司法書士事務所地域一番フォーラム」に参加していた司法書士の方から、地元の登記所(法務局)が統廃合でなくなったが、登記事項証明書(かつての「登記簿謄本」)は市役所で取れるようになったというお話をお聞きしました。

ネットで調べてわかった限りでは、現在愛媛県新居浜市、東京都武蔵野市静岡県伊東では、法務局の統廃合に伴い、市役所等の地方機関で登記事項証明書及び法人の印鑑証明書が取得できるようにしたとのことです。また、構造改革特区検討事項ともされているようです。

では、今日の本題です。「part3」の記事で、不動産の売主が痴呆などで意思能力が疑わしい時に、(推定)相続人全員の承諾を得てもまったく意味がないという事を書きましたところ、司法書士会のホームページにこの方法でできると書かれていたし、弁護士や司法書士がこの方法で大丈夫だと言っていたというご指摘を受けました。そこで今日はこの点についてご説明いたします。

正確には日本司法書士会連合会のサイトですが、ここで書かれているのは、意思能力がないと判断した場合のことではありません。一応意思能力はあると判断できるが、病気の進行その他の事情からあとあと問題にされる可能性があるような場合に、売却の目的や売得金の使途等諸般の事情を考慮して(これは家庭裁判所が成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可-民法859条の3-を与える際に検討する事項と共通するのではないかと思います)、トラブルの発生を最小限に抑えるための手段の一つとして用いるものであって、それによって無効(意思能力なし)を有効(意思能力あり)と出来るものではないという事です。

この意味では相続人全員の承諾を得るというのもまったく意味のないことではないといえます。

Part

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2006年3月19日 (日)

担保権消滅制度は「使える」か? その2

昨日は船井総合研究所のセミナー司法書士事務所 地域一番フォーラムのゲスト講師を昨秋に続いて勤めさせていただきました。独立開業後3年で急成長したという事でご指名いただいたのですが、船井のコンサルタントの先生方のお話を改めてお聞きして、まだまだ自分が「PULL型の営業」というものをわかっていなかったという事を実感しました(先日のジェイエル清水社長のセミナでもお話がありましたが-最近同じテーマを続けざまに提示されるという事がすごく増えています)

さて、昨日の続きです。

昨日の質問事項と結論をわかりやすく言いますと住宅ローンを借りてマンションを買う場合に新破産法の「担保権消滅制度」(186条以下)は利用できない、ということです。

※申し訳ございません、この点に関しては訂正させていただきます。こちらの記事をご覧ください。

住宅1戸ではこの制度を利用する必要がある程の多数の担保が設定されている場合は少ないのではないかと思われるかも知れませんが、複数の不動産を共同担保にしている場合などはよくあります。

買主に融資しようとする金融機関は、現在付いている担保が消滅することを条件(引き換え)に融資するのが原則です(最先順位の担保を要求)。従って融資実行時には確実に担保が消滅し、登記も抹消されるという事の確認が取れなければなりません。

しかし、この制度では売得金が裁判所に納付されませんと担保権が消滅しませんから担保登記の抹消の嘱託(裁判所から法務局に直接抹消登記を依頼する)もその後でないとなされません。

したがって、担保権消滅制度では抹消登記手続が確実に行われる保証がありませんので、金融機関の融資を受けるのが難しいというのが現状のようです。

同じような問題は破産の場合や担保権の場合に限らず、差押(担保実行、一般債権者による強制競売、租税の滞納処分)、仮差押、仮処分などの付着している不動産を売買する場合にも問題となります。これらの処理件数も少なくありませんが、これらついてはまた改めてお話したいと思います。

⇒「の1

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2006年3月18日 (土)

担保権消滅制度は「使える」か? その1

はじめに、昨日のトピックス2題から。

まず、人脈で不動産起業塾塾長の、ジェイエル清水社長に地下鉄内でバッタリ遭遇。やはり赤い糸で結ばれているのかっ!?・・・。

次に土地家屋調査士で恭英の山内社長先日のブログご紹介されていたマグカップ、「欲しい!!」とコメントしていたんですが、わざわざ買って(東中野のサミットで)届けてくださいました。オヤジ感激! 早速使わせていただきましたが、確かに冷めませんね。1時間経ってもアチッ(は大げさ)。

さて、今日の本題は、たまたま昨日破産案件を得意とされている不動産会社の方からお問い合わせがありましたので、破産手続きにおける担保権消滅制度のお話をしたいと思います。「売主がボケていれば登記しても永久に無効なのです」の続きはまた明日以降に。

昨年改正された破産法で、担保権消滅制度が設けられました(破産法186条~)。これは破産財団に属する財産を任意売却するにあたり、破産管財人が裁判所の許可を得て、当該財産に設定されていた担保権の全てを消滅させることが出来るという制度です。

従来ですと任意売却の際の担保権の抹消は、担保権者との話し合いによって個別の手続きが必要とされており、配当を受けられないような後順位の担保権者についても合意が必要で、いわゆる「判子代」として何がしかの金銭支払いが必要となることも少なくありませんでした。

そこで、そのような不都合を回避して任意売却を円滑に進めることが出来るように設けられたのがこの制度です。

詳しい手続きの説明は省略しますが、お問い合わせを頂いたポイントは、買主が融資を受けて売買代金を支払う事が可能かと言う点です。

つまり、この制度を利用すると、担保権者を手続きに関与させることなく担保権を消滅させることが出来るのですが、問題はそのタイミングです。というのは、この担保権が消滅するのは売買による売得金が裁判所に納付されたときであるとされているからです(同法190条4項)。

なぜこれが問題となるのかについてはまた・・・。

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2006年3月17日 (金)

売主がボケていれば登記しても永久に無効なのです。 Part 3

まず、「フクダリーガルwiki支店」から注目ページのご案内。

今日は、「うちのちえちゃん」。ちえちゃんは女性スタッフのお母さん。これが実にキャラが立ってます(はじめから)。「おっちょこちょいでおちゃめでかわいい」というよりかなり豪快(?)。是非ビジュアルも見てみたいですね。

では本題です。

(昨日までの記事のあらまし)

不動産の売買契約で、売主さんがご高齢などで取引(決済)にご出席できないので、フクダさん事前に会っていただけますかというご依頼を頂くことがあるが、面談して判断能力不十分と思われるときはどうするか・・・・。今までにこんな提案があった。

① 決済を延期して後見人を選任する

② 取引自体を中止する

③ そのまま代理人を立てて手続きを進める

④ やってくれる司法書士を探す

⑤ やってくれる弁護士を探す

⑥ 相続人全員から念書を取る(実印・印鑑証明書つき)。

(それでやってくれる司法書士がいるかどうかはなはだ疑問ですが)。

このうち③~⑥はまったく意味がありません

つまり、多少売主がボケていて意思能力が疑わしくても「OKです、登記しましょう」という司法書士や弁護士がいたとしても(いないとは思いますが)、それで取引が有効になるわけではないということです(相続人全員の承諾があっても同様)。

司法書士の責任だから任せてしまうと言う問題ではないのです。誰が責任を取ろうが(この場合は仲介業者さんの責任も半分ぐらいは問われますが)契約が無効であることには違いがないのです。

売買や所有権移転が無効でも、司法書士がそれなりの書類を作って登記申請すれば、登記は出来てしまいます。登記所(法務局)の係官(登記官)は原則として形式的審査権(提出された書面からのみ判断する)しかないからです。しかし、残念ながらわが国の不動産権利登記には権利創設的な効力はありません。無効な権利関係に基づく登記は無効だという事です。また公信力(仮に真実の権利が存在しない場合でも、登記を信じた者には権利が存在したと同様の法律効果が与えられる効力)もありませんから、善意で転売を受けたり、建売住宅やマンションを買った人たちも当然には保護されることはありません(権利を取得できない)。

もっとも誰も無効を主張するものがいなければ、そのままで済むかもしれません(それを狙って⑥のような方法を考えるのだと思います。)しかし、無効は永久に無効ですし、仮に誰かが無効を主張する代わりに金銭を目的としてクレームを付けてきたりすると大変厄介なことにもなりかねません(⑥の場合も相続人が合意してもその次の世代が蒸し返すことも有り得る)。そういう可能性もある訳ですし、企業の場合はコンプライアンス(法令遵守)上も大変問題があると思います。

ですからどうかアタマのカタいフクダリーガルがやってくれないんだったらもっと柔軟な司法書士を探そうなどと考えないで頂きたいのです。

それだけはくれぐれもお願いしたいと思います。

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2006年3月16日 (木)

売主がボケていれば登記しても永久に無効なのです。 Part 2 その2

遅くなりましたが本題に入ります。

(昨日の記事のあらまし)

不動産の売買契約で、売主さんがご高齢などで取引(決済)にご出席できないので、フクダさん事前に会っていただけますかというご依頼を頂くことがある・・・・。

ワタシはこれまで、数多くの老人や病人の「面談」を行ってきました。あるときはご自宅で、またあるときは老人施設や入院先の病院で。もちろん体は不自由になっても頭脳明晰で、判断能力(法律的な言葉でいうと「意思能力」)に何の問題もない方も沢山いらっしゃいました。

しかし最近、この判断能力に問題のある方の比率が増えてきたような気がします。多くは所謂老人性の認知証(痴呆。アルツハイマー型と脳血管性があるそうです)などの所謂「ボケ」です。

私が「面談」して、判断能力に疑問が残る場合は(当然ですが)、取引をストップしていただくことになります。契約段階(この時点での面談依頼は少ない)であれば、決済を引き延ばして頂いて、後見人選任手続きをして頂くことも可能ですが、決済直前の場合、決済自体を引き延ばすということは大変難しいことも多いのです。

では、ワタシがダメといった場合、一体どうなるのでしょうか。

以下はこれまで当事者の方から実際に提案されたことのある解決案です。

   

決済を延期して後見人を選任する

   

取引自体を中止する

 

そのまま代理人を立てて手続きを進める

   

やってくれる司法書士を探す

   

やってくれる弁護士を探す

   

相続人全員から念書を取る(実印・印鑑証明書つき)。

  (それでやってくれる司法書士がいるかどうかはなはだ疑問ですが)。

さて、どれを選びましょうか。

この続きはまた明日・・・。

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売主がボケていれば登記しても永久に無効なのです。 Part 2

今日は「ウィキ支店」のご案内はお休みして昨夜の青山でご講演された明豊ファリティワークスの坂田社長の事を。

正直申しまして、凄いカルチャーショックでした。ウチの事務所も比較的事務所設備やシステム化効率化そして仕事環境とモチベーションの関係には気を配ってきたつもりでしたが、最先端のオフィス作りはスタッフの意識も変える、というあり方、考え方をつきつけられて、ただただ驚くばかり、まさしくワタシは井の中の蛙でした。

しかも坂田社長の一言一言が経営者としての意識と道のりを示してくださっている感じで、思わずメモせずにいられませんでした。詳しくは同社のホームページを見ていただけばわかる(多分。わからない人にはわからない?)と思いますが、最も印象に残った言葉を一つ。

それは、坂田社長が内装業を始めた当初に従業員の皆さんにおっしゃったという「ウソをつくな」。

・・・・・素晴らしい出会いを演出してくださった社長の清水さん、本当にありがとうございました。すみませんあの立ち話の後虎ノ門の駅まで持たずに途中のアイリッシュパブに入って用を足したついでにアイリッシュウィスキーを飲みながらこれを書いてます。アイリッシュパブってなかなかゴツイガイジンばかりですが(2期生のバイリンガルオヤジTさんそっくり-髪型が-の方が沢山います)、Jamesonはなかなかです(18年ものだからあたりまえか)。それと今日話題になった「HOT SPOT」がここにあったという事も結構驚き・・・。

おっともう閉店時間だそうですので(でもアイリッシュオヤジたちはまだまだ盛り上がってます)続きはまた後ほど・・・。

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2006年3月15日 (水)

売主がボケていれば登記しても永久に無効なのです。 Part 1

今日の「フクダリーガルィキ支店」は「ちょっとした楽しみ」。女性スタッフたちの「フクダリーガル自由帳」にあります。「ちょっとした」といえば「ちょっとした」ものなんですが、読む方もこれがなかなか癒されるのです(文章もウマい)。ワタシのちょっとした楽しみにもなってます。これも惜しむらくはビジュアルのないこと。写メでよいので貼り付けておくと全然違います。といいながらワタシのブログに写真が殆どないのは、ワタシのケータイにはカメラがないの。唯一の写真である玉様(王様じゃないの舞踊公演は家人にやってもらいました。

はやくカメラ付きに買い換えなきゃ。

では、本題です。

今日のお話は不動産の売主の意思能力について不動産のプロの皆さんによーく認識しておいて欲しい事、です。

最近増加しているご相談(先ほども電話で土地仕入れの担当の方からご相談がありました)として、不動産の売買における売主の意思能力(主にいわゆる「ボケ」)の問題があります。

以前、不動産所有者とその近親者のためという視点でこの問題を取り上げましたが(「経営者のための成年後見制度利用のすすめ ケーススディ編対応」)、今回は不動産を買おうとしている方(特にプロフェッショナルの方)向けのお話をさせていただきたいと思います。

不動産、特に土地の売買で最近増えているのが、売主(地主さん)が大変高齢で、判断能力に疑問があるので、フクダさん確認してもらえませんかというご依頼です(大部分が買い手となる不動産会社の方、又は仲介業者の方から)。

そしてその大半が、司法書士は通常売主が残金決済の現場に出席することを要求するが、その売主が高齢(あるいは病気)のため決済当日出席できない。ついては司法書士さん事前に会ってもらえませんか、というものです。

そしてこのように決済直前にご依頼を頂くケースの殆どが、契約の際も売主本人には会っておらず、代理人によって契約を行っています。

※不動産の売買契約では、契約(手付金を支払います)によって拘束し、1ヶ月~3ヶ月あるいはそれ以上の期間(調査その他様々な準備期間)をおいてから「決済」(横文字系では「クロージング」、残金の支払い及び物件の引渡し)を行うというのが通常です。

そして決済が近づいてくると登記の段取りが必要になってきて、そういえば売主が当日出席できないんだったけど大丈夫かな、そうだ取りあえず司法書士に相談してみようということで、前記したようなご依頼を頂くことになるというわけです。

・・・明日に続きます。

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2006年3月14日 (火)

ライブドアの辿った道 号外 ついに上場廃止

ライブドアシリーで、ライブドアの上場廃止条件についてお話しました。

粉飾決算(有価証券報告書の虚偽記載)は上場廃止基準にあたりますが、それを東証が認定するためには起訴だけでは足りず、当該企業による訂正や証券取引等監視委員会の告発などが必要とされているというお話をしました。

新聞報道によりますと証券取引等監視委員会が昨日、ライブドアの堀江貴文前社長ら5人と法人としてのライブドアを証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で東京地検に告発しました。

これにより東証はそれを認定する要件が満たされた事になり、同社(及びライブドアマーケティング)株券の上場廃止を決定したということです。

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法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その24 仕事のできる奴はキャリアアップも速い 後編 5

今日のフクダリーガルwiki支店は「不動産登記法のチェックポイント」をご紹介します。こちらもコンテンツの充実度はまだまだですが、面白い視点からの記事もありますので注目です。(例えば会社法改正が不動産登記に与える影響とか)交代で毎日更新中ですのでどんどん進化して行くはずです。尚、「会社法改正が証券化ビジネスに与える影響」についてはHPのをご参照下さい。

それでは本題です。

昨日は、「法務」の基本理念について、「法務」という言葉の意義から説明いたしました。

結論として、「法務」の基本理念とは、「法務」分野を検討する場合には、それぞれの法律の制度趣旨を理解することが必要であるという、極めて基本的なことなのです。

なんだ、そんな事か、と思われた方もいらっしゃると思います。ところがこういった思考態度(法的思考)というのは案外身についていない方が多いのです。このシリーズでは、「法的思考」とは「なぜ」と考えることだとお話してまいりました。それによってどんなことができるかも、たとえ話とともにご説明しました。

「なぜ」という疑問は誰もが子供のころは素直に抱いていた発想だと思います。しかしだんだん成長し、知識が増え、世の中のことを知るようになるとこういった「なぜ」という疑問を持つことが少なくなってくる人が多いようです。特に現代の高度情報化社会で激しい競争に勝ち抜くためには、既存のルールや与えられた情報についていちいち疑問を持たずに業務を素早く処理することが必要なのです。

しかし、そこに大きな落とし穴があることは、昨今の様々なニュースが証明してくれています。

私が「法的思考」(前回お話したよう「広義」の)という事を強調するのも、もちろん今まで色々な仕事人を見てきて切実にその必要性を感じたという事が理由の一つではありますが、もう一つは、最近続々とおこっている様々な問題(前のシリーズで取り上げたライブドア事件の他、構造計算書偽装問題やホテルの違法建築、株式の誤発注事件、送金メール偽造事件等々)がここから始まっているような気がするからなのです。

少々長くなりましたが、「法務」に関する「基本理念」、ご理解頂けたでしょうか。

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2006年3月13日 (月)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その23 仕事のできる奴はキャリアアップも速い 後編 4

まず例によってフクダリーガルウィキ支店からのご紹介です。

今日は「新会社法の達人」です。スミマセンまだまだ「達人」と言えるほどのコンテンツではないですし、内容もバラバラですが、連日更新していますのでドンドン進化して行きます。トップページからどうぞ。

では、本題に入ります。

まず復習。昨日までは、他分野の業務の経験を積んだり勉強したりするにあたって、「法的思考」を働かせて各分野の「基本理念」を理解することが重要であるということをお話しし、「会計」と「税務」の基本理念を見てみました(余談として「法的思考」という言葉の意味についてお話しました)。

今日は、「法務」の基本理念についてみてみます。

結論から申しますと、「法務」の基本理念とは、「法務」分野を検討する場合には、それぞれの法律の制度趣旨を理解することが必要であるという、極めて基本的なことです。

以下、ご説明いたしますが、この結論を見て、そんな事は当然身についているという方は読んで頂く必要はありません。

まず、「法務」というコトバの意味です。ここでは「税務」「会計」と並んで実務上検討すべき分野の一つと言う意味で用いています。「法律」というくくりで行けば、税務や会計も当然ですが法律による規制の下にあるわけで、法律分野という意味で同じ範疇に入るといえるわけですから、「法務」は法律分野のうち税務と会計を除いた部分といっても良いでしょう。

つまり、極めて広範な領域を示すのですが、学問としてそれを極めようという事ではもちろんなく、ある業種について、またあるプロジェクトにおいて、そして日常的な業務に取り組むにあたって、それぞれ考慮すべき法律領域は何か、そこで発生しうる問題点は何か、それに対する対処方法は何か、といったことを検討し、解決を与えるという「業務」であると言ってよいと思います。

では、その業務における「基本理念」とは何でしょうか。もちろんそれぞれの業務において検討を要するそれぞれの法律に基本理念というものがあります。言い換えればそれぞれの法律毎にその法律が設けられた目的(制度趣旨)があるわけです。そして公法・私法、民事法・刑事法、実体法・手続法、と様々に分類される多種多様な法律がありそれぞれに制度趣旨が存在します。

もちろんそれぞれの法律の適用が問題となる場面で、それらの法律の制度趣旨を理解する必要はあるわけですが、ここで言う「法務」の基本理念とはそれぞれの法律についての制度趣旨のことではありません(これについてはいずれ改めてお話したいと思います)。むしろ、この点が重要だという事に気がついて欲しいという事です。

・・・・・この続きはまた明日・・・。

⇒法的思考シリーズ次回の記事(その24「キャリアアップ」後編

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2006年3月12日 (日)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その22 仕事のできる奴はキャリアアップも速い 後編 3

まずフクダリーガルウィキ支店からのご紹介、今日は第3回目です。

今日は「食べ歩き日記」です。自称「食の小悪魔」が、そのグルメぶりをいかんなく発揮しています。惜しむらくは画像がないこと。やはり食べ物は(食べ物に限りませんが訴求力を持たせるには)「シズル」が重要・・・。トッページ「フクダリーガル自由帳」にあります。

では、本題に入ります。

まず復習。昨日までは、他分野の業務の経験を積んだり勉強するにあたって、「法的思考」を働かせて各分野の「基本理念」を理解することが重要であるということをお話しし、「会計」と「税務」の基本理念を見てみました。

今日は専門の「法務」について「基本理念」を見てみましょう。いわば「法的思考」の故郷(?)です。

ところで、先日も少し弁護士で早稲田大学法科大学院教授の浜辺陽一郎さんの著書「法的思考力(リーガルマインド)のある人は仕事ができる」(日本実業出版社)ですが、やはり少し気になったので取寄せてみました(紀伊国屋書店Book Web)。

もちろんこのシリーズの題名は浜辺先生の著書からパクッたものではありませんし(浅学にしてこの本の存在を知りませんでした)、「法的思考」という言葉の意味もかなり違うニュアンスで使っています。

ワタシの場合の「法的思考」とは「法律家の思考の手順を法律問題以外の場面でも活かそう」という、勝手に言わせていただけば広い意味での「法的思考」です。

これに対し、浜辺先生の「法的思考」とは(まだ拾い読み程度で乱暴なくくり方かも知れませんが)、これまた勝手に言わせて頂けば「法的常識力+狭義の法的思考」といえるのではないでしょうか。先生は「法律的に考えてみるというのは、いろいろな問題を裁判所で争ったらどうなるかをシミュレーションしてみること」(同書240ページ)とおっしゃっています。少なくともヤキソバオヤジのように法律問題以外の場面での適用はお考えになっていないようですので、「狭義」と言わせていただいてもあながち外れてもいないのではないかと思います。

もちろん「仕事ができる」というフレーズを別にすれば「法的思考」という言葉は一般的に色々と使われておりますが、「狭義」で使われているものが大半(というか全て)だと思います。

今回「法的思考力のある人~」と一緒に陶久利彦さんの「法的思考のすすめ」(法律文化社)を購入しました。こちらは比較的法律知識に関する比重は低く、むしろ法的な思考方法を重視されていると感じられたため購入したのですが、それでも「法的にものをとらえるということは、世の中に発生するできごとを法的ルールによって整理するという作業を中心にしています」「法律など何も知らない素人の思考からだんだんと法的な思考へと歩みだしてもらう」と言われています(「はじめに」)から、やはり「狭義」と言ってよいでしょう。

そもそもヤキソバオヤジ流思考方法に(広義という留保をつけるとはいえ)法的思考という言葉を当てはめることがそもそも一人よがりなのかもしれません。むしろ「考える技術」(バーバラ・ミント「考える技術・書く技術」(ダイヤモンド社))に近いと言えるかもしれません。この本もまだ読み始めたばかりです(あまりにも著名な本なのでその存在は知っていましたが)が、非常にヤキソバオヤジ流「法的思考」と共通する点が多いと感じております。いつかヤキソバオヤジ流法的思考という切り口からブックレビューを書いてみたいと思っています。

・・・と、色々言い訳(?)をしてきましたが、今のところ他に適当な呼び方が見つかりません(もっともこの区別にさほどの意味はないのかもしれませんが。内容を見ていただけばわかることですから)ので、当面は引続き「法的思考」というコトバを使わせて頂きたいと思います。

という事で余談が長くなりましたので、「法務」に関する基本理念については、また明日・・・。

⇒法的思考シリーズ次回の記事(その23「キャリアアップ」後編

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2006年3月11日 (土)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その21 仕事のできる奴はキャリアアップも速い 後編 2

まず、フクダリーガルウィキ支店からのご紹介第2弾です。

今日は「司法書士補助者日記」です。司法書士アシスタントであり受験生である筆者が、毎日の体験を中心に、写真入りで軽妙に綴って行きます。トッページからどうぞ。

では、本題に入ります。

まず復習。昨日までは、他分野の業務の経験を積んだり勉強するにあたって、「法的思考」を働かせて各分野の「基本理念」を理解することが重要であるということをお話しし、「会計」と「税務」の基本理念を見てみました。昨日は「税務」における第一の疑問点、なぜ税金を払わなければならないか=納税根拠論(利益説と義務説)のところまでお話しました。

ところで、納税根拠論は、課税の目的が国等の公的サービスを提供するための収入を得る点にある事が前提でしたが、税制度の創設・運用はそれ以上に様々な政策的目的でわれています。これが理解できていないと、「なぜ税金を払わなければならないか」という理解が十分にはいきません。

次に、法的思考者は、誰がいくら税金を払うのか、またそれがどういった基準で決定されるのかという点に疑問をもつ筈です。

そして、現実に支払っている税金の実態を見てみたり、税金に関する解説書などを読むと、現在の税制は何らかの財産的な対象物に対して、その多寡に応じた額の金銭の支払い義務が発生するという仕組みになっていることがわかってくると思います(事実関係から一定のルールを見つけ出すというのも「法的思考」の重要な要素です)。

もう少し具体的にはこういうことです。税金をかける基準とされる「対象物」は、厳密には「物」だけでなく、「行為」や「事実」も含みますが、税法上では「課税物件」と総称されています。この課税物件によって、税の種類は次の4種類に大きく分類することができます

     収得税(所得税、法人税、住民税、事業税等)

     財産税(相続税、贈与税、固定資産税、自動車税等)

     消費税(消費税、酒税、たばこ税等)

     流通税(登録免許税、印紙税、不動産取得税等)の4種類に分けられます。

これらの課税物件の発生に際し、又は継続的存在に対し、その帰属主体等に対して、一律に一定の課税標準・税率が設定され課税されます。その詳細は前回も触れました租税法律主義(憲法84条)により、法律によって規定されています。

税に関して規定した法律としては、各課税物件毎に課税の内容(納税義務者、税額の計算の方法、申告や納付の手続等)を定めた法律(例えば所得税法、法人税法、相続税法、消費税法、登録免許税法等)と、それら諸税に共通の事項を定めた法律(国税通則法、国税徴収法、地方税法等)があります。

そして法的思考者は果たしてこれらの法律に規定されていることや、その解釈・運用の仕方が果たして正当なのかどうかという疑問をもつ筈です。そしてその際の根拠になるのが「基本理念」であり、前回お話した「納税根拠論」に戻っていくという事になるわけです。

今日はここまで・・・。

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⇒法的思考シリーズ回の記事(その22「キャリアアップ」後編

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2006年3月10日 (金)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴その20 仕事のできる奴はキャリアアップも速い 後編 1

え~。ニフティのブログ(ココログ)の管理用サイトが昨日朝から都合30時間(メンテナンス含む)アクセスができなくなりました。お陰でブログ開設以来継続してきた毎日更新の自己記録(私以外誰も気にしてませんが)が途切れました。読者の皆さんはココログ利用者ばかりではありませんから言い訳(誰も気にしてないって)はこのぐらいにしておきますが・・・(*''*)

さて、ウチの事務所では「フクリーガルWiki支店」という「ウィキ」(みんなで作るブログ)を立ち上げたのですが、今日から注目記事を1つずつピックアップしてご紹介して行きたいと思います。

まず、プチいけばな教室」(4回目)女性スタッフが中心に連載している「フクダガル自由帳」のなかでも比較的ビジュアル重視のページです。生け花の全国大会で表彰されたという腕前のスタッフが、自慢の作品と薀蓄を披露しています。

是非、ご覧あれ・・・。

それでは本題です。

まず復習。昨日までは、他分野の業務の経験を積んだり勉強するにあたって、「法的思考」を働かせて各分野の「基本理念」を理解することが重要であるということをお話しし、まず、「会計」の基本理念を見てみました。

今日は「税務」についてみてみましょう。

私達や私達が関係する企業は様々な場面で税金の支払いを求められます。このような要請に直面したときに、「法的思考者」は何を考えるでしょうか。そうです。なぜ、税金を払わなければならないのか、という事を考えるでしょう。

まず考えられる答えは、法律(諸税実体法、手続法)、さらに憲法(第30条納税義務、84条租税法律主義)によって規定されているからということです。

これに対しては、なぜ憲法は納税を国民の義務としたのか、という疑問が当然湧いてきます。

これはとりもなおさず、税とは何かという問題です。これに関しては皆さん色々な答えをお持ちかもしれませんが、一般的には次のように定義づけられているようです。

税(租税)とは「国又は地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付としてではなく、これらの団体の財政需要を満たすための収入の目的をもって強制的に私人に対し賦課する金銭給付」である(「法律用語辞典」有斐閣)。

要は、税とは国(及び地方公共団体)が公的サービスを提供するために強制的に資金を調達する手段であるという事です。

ここから敷衍して、納税根拠論は、大きく2つの説に分けられています。一つは、公的サービスの提供の対価として当然支払うべきものであるとするもの(利益説)、もう一つは国(地方公共団体)は国民(住民)が生活を営む上で必要な共同機関であり、共同機関が必要とする財源を負担するのは国民として当然の義務であるとするもの(義務説)です。

利益説では利益がなければ課税されないということになりますが、現在の税制をみると、国等から受ける利益と国民等が払う税金の間には対応関係はありません(多くの利益を受ける者が多くの税金を支払っているという事実はありません)。

現在の税制下では義務説が最も妥当するといえます。但し、もうお気づきのようにこの根拠論というものは課税の根拠として政策的に利用され得るものであり、事実そういう利用をされてきています。

今日はこのくらいにしておきます・・・。

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⇒法的思考シリーズ次回の記事(その21「キャリアアップ」後編

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2006年3月 8日 (水)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その19 仕事のできる奴はキャリアアップも速い 中編

昨日の続きです。

まず、昨日の話の中で、コトバ足らずな点や不正確な表現がありましたので補足します(思いついたことをそのまま書いてるもので・・・)。

まず復習です。昨日は、キャリアとして、複数の得意分野を持っていたほうが良いが、他の分野を勉強する際に「法的思考」を働かせることが必要であることをお話しました。そして他分野(隣接分野)の経験を積んだり勉強をしたりする際にその分野の「基本理念」を理解することが重要(それがとりも直さす「法的思考」)であること、そしてその「分野」の例として、法律と税務と会計をとり上げることにしました。

その中で、その分野のノウハウ・スキルを身につけるために経験が不要というようなことを書いたのですが、言いたかったことは、経験を積むに当たって「法的思考」ができるかできないかで、その経験が生きるか否かが格段に異なるという事です。

さて、今日はそれぞれの分野についての基本理念を見て行きたいと思います。

まず、「会計」から。

「会計」とは「ある経済主体の経済活動に関する情報を利害関係者に伝達するシステム」と定義付けられます(若杉明編・会計用語小辞典)。簡単に言えば、経済活動の「まとめ」です。家計簿から国家会計まで様々な規模・目的のものがありますが、その「まとめ」を、それを必要とする人々に伝える手段が会計です。

ここでまず(法的思考を発揮して)理解しなければならないのは、「誰のためにまとめるのか」という点です。これに関しては、企業外部の利害関係者(株主、債権者=銀行・取引先等や当局)のためのもの(「財務会計」)と企業内部の関係者(経営者や管理職)のためのもの(「管理会計」)との2種類があります。

次に理解しなければならないのは、何のためにまとめるのか、という事です。つまり会計の「機能」ということです。企業会計の機能は「責任(経営者の株主に対する責任)解明」機能、「利益分配」機能、「資源配分」機能の3つだといわれます(伊藤邦雄「ゼミナール現代会計入門」)。

これらの機能を発揮するために求められる理念(「特性」)は次のようなものです。

責任解明⇒「信頼性」・「検証可能性」(数値の根拠を確認できる)・「中立性」、利益分配機能⇒公正性(このために「企業会計原則」が必要とされました)、資源配分機能⇒有用性(将来のリターンとリスクをできるだけ合理的に予測することを可能にすること)(前掲書)。

これらの基本理念を常に念頭においておかないと、会計実務の経験をいくら積んだとしても良い仕事はできないという事です。

続きはまた明日・・・。

⇒このシリーズの最初の

⇒法的思考シリーズ次回の記事(その20「キャリアアップ」後編1)

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2006年3月 7日 (火)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その18 仕事のできる奴はキャリアアップも速い 前編 

ある不動産ファンド関係の会社の方とお話しした時に、人材の話になりました。

この会社では不動産取引・契約・登記・金融の各分野についての経験とスキルを持った人材を探しているがなかなか適当な人材が見つからないという事でした。

ウチの事務所では新規ビジネス立ち上げに向けてまさしくそういう人材を育成しつつあるのですが、今すぐにそういった分野の業務について100%のパフォーマンスを発揮できる人材はまだまだ限られています(募集も行う予定ですのでご興味のある方はホームページ経由でご応募下さい)。

しかし、重要なのはここでも「法的思考」なのです。

そこで今回は法的思考と人材募集、いや売れる人材になるためのキャリアアップの方法についてお話しします。

もちろん一つの分野しか知らない人材よりも多くの分野に豊富な経験を積んだ人材の方が望ましいものであることは言うまでもありません。しかしそのような経験を積むにはかなりの時間を要しますし、必ずしも経験を積む必要があるのかと言うと実はそうでもないのです。それぞれの分野のコンセプト(基本理念)を理解できているかどうかという事の方が重要です。これはまさしく法的思考そのものです。それぞれの専門分野独特の概念や用語というものはありますがそれは知識の領域でありそれを補うことはさほど難しいことではありません。しかし知識をいくら増やしても思考力を養う事はできないのです。

もちろん基軸となる専門分野を持っているというのは強みです。その分野についてある程度深い知識・経験を有する人が他の分野(隣接分野)の勉強をするということは、大変効果的な事だと思います。しかしその場合も「法的思考」ができているか否かでは結果に大きな開きができてくるのです。

そしてここで注意を要するのは、「隣接分野」といっても学問的なそれではなく、実体取引において同時に問題となって来る分野のことに過ぎない(同じ分野-例えば不動産ファンド-を扱うという意味においてのみ共通する)ということです。例えば法律と税務と会計。同じ事象を対象にするものであってもその基本理念(価値観)が異なるということをまず理解することが必要です。

それぞれがどんな基本理念の下にあるかを知るために、「法的思考」を発揮する必要があるのです。

では、法的思考を用いて、各分野の基本理念を見てみましょう・・・。

この続きはまた明日・・・。

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⇒法的思考シリーズ次回の記事(その19「キャリアアップ」中編

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2006年3月 6日 (月)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その17 仕事のできる奴は文書もうまい 後編

先週、ある養子縁組の相談を受けました。ご主人に先立たれ、お子様のない方が、親戚の方を養子として迎え、老後の面倒を見てもらいというお話でした。こういう話はよくありますが、実際のところ美談だけでなく、大変なトラブルの原因となることの多いものでして、今回私も、もろ手を挙げて賛成というわけには行きませんでした。

そこでこの日私がご提案させていただいたのは、「任意後見」の制度の利用です。これは高齢化社会の進展に向けて現在司法書士が力を入れて利用を推進(成年後見センタリーガルサポート)している制度です。これに関しては私も不動産取引と絡めて、「日経ベンチャー経営クラブONLINE」というサイトの「税・会計・法務の針盤」というコーナーで解説(ケーススタディ編対応編)を行っておりますのでご参照下さい(現在はホームページにも転載しております)。またまた宣伝でスミマセン。

こういった養子縁組の問題に関してはやはり「法的思考」シリーズで機会を改めてお話させていただきたいと思っております。

さて、昨日の続きです。

昨日は、良いビジネス文書を作るための「法的思考」の手順として、①文書で伝えるべきか否かの判断→②純粋なビジネス文書なのかどうかの判断→③事務連絡なのかそれ以外かの判断→④相手に最も伝えたいことは何かの判断→⑤それを真っ先に書く、というところまでお話しました。

ここで気を配ると良いことに、最も訴求したいことが論理的側面か、情緒的側面かということがあります。例えば、単純な事務連絡文書であれば論理のみというものが大半でしょうし、「お詫び」の手紙であれば「言い訳」という論理面よりも「謝罪」という情緒面を強調したほうが相手方に訴求する力は大きいでしょう。営業的文書であれば商品の良いイメージ(欲しいと感じさせる)という情緒面を強調したほうが効果的でしょう。

それに続いて書くべきことは、その目的を相手に受け入れてもらうための補足的な事柄です。ここの部分も、その文書の目的によって書くべきことが異なります。単なる業務連絡文書であれば用件以外の補足的事項は不要な事が多いでしょう(もちろんそれだけでは「ぎすぎす」してしまうと思うのであれば、「情緒的」なことを付け加えるのも良いことかもしれませんが)。

最後に気を配るべきなのが形式面です。例えば書式。これも意外と重要です。文書の第一印象となるからです。それと文章自体の構成や論理性。如何に一つの文を短くするか。敬語の使い方も(これも私は重要だと思っています)。

と、ここまで書いてきて大事なことを忘れてました(思いつきで書いているのでとりとめがなくてスミマセン。尤も「法的思考」シリーズの他の記事も殆ど思いつきなので整理がされていなくて読みづらいと思います―ブログですから許されよ)。まず考えるべきなのはその文書を作るべきかどうかという事です。情報を相手に伝えるのに文書で伝えるべきなのか、直接会って伝えるべきなのか、電話で済ませられることなのか。この判断も「法的思考」を要することではありますが、これについて話すと長くなりますので、機会を改めて「コミュニケーションと法的思考」というテーマでお話したいと思います。

今日はこのくらいで・・。

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2006年3月 5日 (日)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その16 仕事のできる奴は文書もうまい 前編

最近ウチの事務所で「フクダリーガルWiki支店」というWiki(大勢で書くブログのようなもの)をはじめたことは何度か宣伝させていただきました。そこに「みんなのグッド&ニュー」というスタッフ全員の「日報」のコメントを掲載しているコーナーがあります。文法的におかしかったりするものはワタシが修正しているのですが、先日「あれが勉強になる」という事を言われました。また、たまに業務上の対外的文書に目を通すこともあるのですが、これについても先日Wikiで「また添削お願いします」という要望が寄せられました。

そこで今日は「ビジネス文書と法的思考」についてお話します。

ビジネス文書の「上手さ」って何でしょうか。何が「良い」ビジネス文書なのでしょうか。

こういった疑問に答えるときにも「法的思考」が役に立ちます。良いビジネス文書の条件として最も重要なこと(と少なくともワタシは思います)は何のためにその文書を作るのかを考えるということです。これは別にビジネス文書に限ったことではありませんが。

まず働かせるべき法的思考は、自分が書こうとしている文書がビジネス文書なのかどうかという根本的なところです。つまり、何のためにその文書を書くのかという事です。ビジネスのためなのかプライベートなものなのか。これは単純な様でそうでもないのです。分類すると次の4つに分けられます。①純粋なビジネス文書②純粋なプライベート文書③ビジネス目的を持ったプライベート文書④プライベート目的を持ったビジネス文書。ここでは①の純粋なビジネス文書についてのみお話して行きたいと思います(そのほかのものについてはまた機会があればお話します)。

さて、自分の書こうとしている文書がビジネス文書であることが分かったら、次に考えるべき事はその文書をどんな目的で書くのかという事です。

ビジネス文書の目的は大きく二つに分けることができます。一つは単なる事務連絡文書。もう一つは事務連絡以外の目的を持つ文書。事務連絡以外の目的も二つに分けられます。一つは過去に関する文書、もう一つは将来に関する文書。さらに将来に関する文書は営業・広報的文書とそれ以外の文書に分けることができます。

まず、こういった目的を認識することが必要です。これこそ「法的思考」です。それによってどういう文書を作成すべきかが決まってきます。

次に目的がはっきりしたら、その目的のために最も相手に伝えたい事は何かを考え、それを文書の冒頭に持ってくるのです。用件を強く印象付けることが必要ですし、忙しいビジネス人に無駄な時間を費やさせることのないようにすることも重要です。場合によってはその部分だけを読んでもらえれば済んでしまう事もあるでしょうし、それ以外の部分はそもそも不要だったということもあるかもしれません。

この項続きます・・・。

⇒このシリーズの最初

⇒法的思考シリーズ次回の記事(その17「文書」後編

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2006年3月 4日 (土)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その15 仕事のできる奴はだまされない 後編その4

「だまされないための法的思考」を検証するための格好の材料がちょうど今新聞・テレビをにぎわせていますので今日はそれについて。

皆さんよくご存知の、民主党の「送金メール事件」です、これは、民主党の永田寿康議員が2月16日の衆議院予算委員会で、ライブドアの堀江貴文前社長(ワタシの記事、「ライブドア辿った 復習編 」~をご参照下さい)が昨年8月、社内メールで自民党の武部勤幹事長の二男に、選挙コンサルタント費として3000万円振り込むよう指示していたと指摘、武部氏や二男らの参考人招致まで要求し、さらに翌日、そのメールのコピーを公表したというものです。結果的にはそのメールのコピーが偽物であり、送金についての証拠もなかったという落ちでしたが。

永田議員は謝罪し、民主党の野田国対委員長が辞任しましたが、さらに衆議院では懲罰委員会により登院停止30日の処分がされる見込みです。

さて、皆さんが永田議員の立場にいて、このメールを示されたとしたら、どの様に考えるでしょうか。そのメールをじっくり眺めて、「法的思考」を働かせようとするでしょうか。おそらくそうではないと思います。まず、そのメールを持ってきた人について考えるのではないでしょうか。その人の情報は信頼するに足りるのであろうか、その情報を自分にもたらした目的は何なのだろうか、という事をまず考えると思います。

証拠書類というものは情報の真贋を判断する材料の一つに過ぎません。以前「権利書」はなぜ大切か。そんな大切な「権利書」が「なくなる」とは。という記事の中で、権利書が本人確認資料として重要な役割をになっているというお話をしました。そこで権利書や運転免許証の偽造や「地面師」のお話をいつかしましょうという事を申し上げたと思います。世の中には証拠書類を偽造して人をだまそう(金銭を騙し取ろう)という人はいくらでもいます。

そういう危険から一般の人たちを守るのも私たち司法書士職責の一つです。

おっとっとまたまた話が逸れはじめていますね。えーと何でしたっけ、そうそうまず情報提供者に対して「法的思考」を働かせるという事です。昨日までの話で、Xさんの言動にたいして法的思考を働かせたのと同じです。今回のケースでは情報提供者(フリーランスの記者らしいですが)が信用できるか、あるいはその人が過去提供してきた情報自体が信用のおけるものだったかどうかを調査する必要があります。

そして、今回の追及の対象となった事実について信憑性があるかどうかを直接ヒヤリングするとともに、他の情報源からの調査(所謂「ウラ」をとる)も必要となります。これは証拠書類(メールのコピー)自体の信用性の問題とはまったく別のところで行われるべきものです。今回、このヒヤリングが十分行われたとは思えませんし、情報提供者について(色々な噂のある人物だったようですが)、あるいは少なくとも今回の情報の信用性についての検証がされたかどうかは疑わしいころのようです。

証書書類自体の吟味は最後になります。情報自体の信用性を補完するという位置づけだからです。そして書類自体の「ウラ」もとる(作成・発行自体の信用性を調査する)必要があります。今回はこの書類自体もはなはだ信用性に乏しいものだったようです。メールであるにも関わらず、データでの提供でなくハードコピーだったこと、さらに黒塗りのまま提供されたものであること。通常ではこういった書類が、情報の信用性を高めてくれるものとはとてもいえないのではないでしょうか。

この様に「法的思考」というのはそれを働かせる対象とその順序を誤らないことも重要です。むしろその用い方を正しく行うための判断も含めて「法的思考」であると言ったほうがよいでしょう。

私たち司法書士が、例えば不動産取引の安全を守るために行っている判断は、不動産登記その他の制度と長年の情報の蓄積に裏打ちされ体系化された「法的思考」であることは言うまでもありません(たまには宣伝させてください・・・?)。

「法的思考」シリーズはまだまだ続きます・・・。

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⇒法的思考シリーズ次回の記事(その16「文書」前編

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2006年3月 3日 (金)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その14 仕事の出来る奴はだまされない 後編その3

ウチの事務所の求人に応募して下さった方が受験生(司法書士試験や司法試験等の国家試験の)である場合に必ず話すことがあります。

それは「受かりたいんだったら仕事をしてはいけない」ということです。仕事を求めて来た方に対していう事としては矛盾しているかも知れませんが、お互いの幸せのために本当にそう考えているのですから仕方ありません。

もっともそういわれて「はいわかりました」と言える人は殆どいませんが。皆色々な事情を抱えてウチへ応募して来てくださったわけですから。でも、単なる意地や見栄や遠慮で親(や家族)の脛をかじるのをためらっているような人は、もう1年だけでも頼ったほうがよいのです。そうせずに1年ですむところを3年も5年もかかったとしたら、そのほうが不幸です。

もちろん仕事をしながら資格をとる人だっているわけですが、大多数の人にとっては仕事をせずに集中して勉強して短期間で合格したほうが、長い目で見ると得だと思います。

現実には弊事務所にも正社員として入社した受験生も数名おります(彼らはワタシの忠告にも拘わらず、どうしても正社員じゃないと、ということで入って来たのです)。彼らには絶対に今年受かって欲しいと思っておりますが、みずから正社員を望んだ者たちですから、仕事も半端じゃなくこなしてくれます。事務所にとっては有難いのですが・・・・。

さて、本題です。

「だまされない」ための「法的思考」とは、ある人がなぜそういう言動を取ったのか、考えてみよう(考える習慣をつけよう)という事です。

特にこの場合、法的思考を発揮する場面かどうかの判断がまず難しいところです。自分に命題が突きつけられているのかどうか判断できるのかということです。

今回の事例で言うと、XさんがM君たちをかばうような言動をとったときにまず「あれ~ヘンだぞ」と感じることができるかということです。

それが出来ればあとは与えられた色々な事実から推論を働かせるだけです。

事例で言うと、バザーでジューススタンドをやったこと、チケット1枚でお代わり自由だったけど、ジュースが少なくなってしまい、事情を説明した上で1杯だけに限定したこと、後でお客だった人からクレームがついたこと、園長先生が責任者だったXさんに事情を聞いたところ、M君たちをかばうような言動をしたこと。

なぜかばったか・・・①義侠心、②他に理由・・・・他の事実を見る・・・・クレームのつきにくいはずなのにクレームがついた・・・表向きの理由以外の理由・・・・日頃のご近所に対するXさんの態度の悪さ・・・そういったことが露見しないように、かばうふりをした・・・・ご近所との関係を重視する幼稚園からにらまれたくない子供の進学に悪影響があるから・・・・という事実が明らかになった、等。

Xさんの行動はやはり信頼の置けるものではない、従って今回の勧誘についても疑わしいものである可能性が大変高いと言う結論になるのでした。

続く

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2006年3月 2日 (木)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その13 仕事のできる奴はだまされない 後編その2

昨日は中途半端で失礼しました。大変上機嫌だったもので・・。西麻布の「K」。旨かったです。ネットにも出てきません(ぐるなびでも)から実名は差し控えますが、かなりしっかりした仕込みです(焼き鳥とおでんが主力)。それなのにさほど混んでない。この店を神楽坂にもっていったら大変な人気になるでしょうね。「T」顔負けの。

今日はスミマセン午後から休んで、坂東玉三郎様の公演を観に行かせて頂きました。 

                          _060302 

いや~参りました。あの目、あの表情、背中がゾクゾクしました。人間とは思えない美しさ。芝居は何度か拝見していましたし(もちろん素晴らしかった)歌舞伎のプログラムの中での踊りも観てはいたのですが、やはり踊りだけの公演のせいか(最前列というのもよかったのですが)まったく違う印象を受けましたね。時間が経つほどじわじわと感動が沸いてきます。連れは手相なんか見てましたが(あの方両手とも「ますかけ」だとか・・・)

さて、余談はさておき、昨日の続きです。

人の言動に「法的思考」を働かせるというのは、つまりその人が「なぜ」そういう言動を取ったのか考えるということです。

今回のケースですと、XさんがなぜM君達をかばうような事を言ったのかということです。もちろんXさんが義侠心に富んだ人で、人のせいにできなかったのかもしれません。しかし、おかわりを断った理由はジュースが残り少ないからという事でしかもそれをお客様にも説明した上での事ですから、さほど責められるべき事でもないのです。敢えて「かばう」必要のあることでもないのです。

そこのところを「おかしい」と思うかどうかが「法的思考」が出来ているか(そのセンスがあるかどうか)という事になってくるのだと思います。人に言われたことに何の疑いも抱かずに信用するのか、命じられたことに疑問を持たずに従うだけの人なのか、ということにもつながります。

この場合も「法的思考センス」のある人はおかしいと感じ、むしろ他に何か理由、目的があるのではないかと考える(感じる)はずです。

こんな言い方をすると、まるで人を信じるな、疑え、と言っているように聞こえるかもしれませんが、それは違います。人に「信じられる人」と「信じられない人」がいるわけではありません。ある人のある行動を信じるか信じないか、不誠実な行動があったときにそれを見抜ける力を付けなさいということなのです。同じように「プラス思考な人」と「マイナス思考な人」がいるわけではなく、物事の受け止め方・考え方をどの様にするか、ひとつひとつの出来事について考えればよい問題なのです。

おっと、話がだいぶそれてしまいました。今日はこのくらいにしておきますか・・・・・。

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2006年3月 1日 (水)

法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その12 仕事のできる奴はだまされない 後編

はい。ご指摘の通り、L先生はやわらちゃんのおじいちゃんの言葉遣いをパクッてます・・・・。すみませ~ん。

ええっと、決して酔っているのではなく、ラベンダーとベルガモットを間違えただけで~す。いずれにしても上機嫌なことに違いはありませんが。

えーと、昨日の話(余談)の続きという事になるんですが、別にワタシはボランティア活動をしているわけではありません。

でも、一つ、いや二つだけ言わせていただきたい! いきなり腕をつかまないでください。アナタの親切心は素晴らしいと思いますが、自分が目をつぶっているときに突然二の腕をわしづかみされたら、心臓麻痺を起こしても不思議じゃないですよね。

それと、乱暴な、蔑んだような言葉遣いはやめてください。健常者に対してあなたはそんな言葉遣いはしていないはずです。きのう、若い女性が、「ぞんざいな」言葉使いをしていると言いましたが、自分が日頃そんな言葉遣いで接しられているとしたら、自分もそういう言葉遣いをするようになっても責められませんよね。

さて、昨日の続きです。

なぜご近所の方がそんなクレームを提出したのか、Xさんとの間になにがあったのか、勘のよいあなたならわかるはずです。・・・言わなくてもよいですが。

問題はそこにあるわけではないので。

法的思考をはたらかせたかどうなのかです。

つまり、なぜ、M君をかばうようなことを言ったのか、おかしいなーと思えるのかということです。

・・・すみませんちょっと限界ですすこしアタマ冷やしてから・・・。

 

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