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2006年2月 2日 (木)

住宅の共有持分はどのように決めるべきか/住宅ローン控除との関係は?

この時期(確定申告前)になると多くなる仕事の一つに、所有者(持分)更正の登記というものがあります。昨日もそのご依頼がありました。そこで今日は更正(訂正)の必要のない共有持分の決め方(住宅ローン控除も関連)についてのお話をさせて頂きたいと思います。

不動産の共有持分割合(不動産を共同で購入したときのそれぞれの所有割合)はどのように決めればよいのですか、と聞かれることが良くありますが、どうすれば良いかという問題ではなく、各人がいくら負担するかによって自動的に決まるものなのです。つまり自分が出したお金に見合った権利を取得するという至極当然のことで、不動産に限ったことではありません。

例えば1000万円のクルーザーを買うのに、一人100万円ずつ出し合って10人で買ったとします。この場合、各人の共有持分は10分の1ずつになるというのはすぐ分かると思います。これが二人で、一人は100万円、もう一人が900万円出したのであれば10分の1と10分の9です。このとき900万円出した人が実は銀行から借金して支払ったとしても同じです。

仮にこのケースで、二人で話し合って、出資額に関わらず持分を2分の1ずつにしましょうということになれば、それは可能です。一人は100万円で500万円分の所有権持分を手に入れ、もう一人は900万円出したのに500万円の持分しか手に入れられないということです。これは900万円出した人が取得している所有権(持分)の内400万円分を100万円しか出していない人に移転(所有権移転)する合意をしたということです。

そしてこの移転を何の見返りもなく行えば「贈与」、金銭を支払えば「売買」ということになります。贈与も売買も自由ですが、税金に注意が必要です。贈与税です。個人から財産の贈与を受けると原則としてがかかります。

従って、持分を移動させる場合には贈与税を支払ってまでするメリットがあるかどうかを十分検討する必要があります。特に相続課税制度は贈与者が65歳以上の親で、相続税の心配がある場合は検討の価値があるでしょう。

さて、冒頭にお話したように、この時期に所有者更正登記や持分更正登記の依頼が多いというのは、以上説明したような検討をせずに持分を決めてしまい、税務署から指摘を受けて出資額どおりの持分に更正(訂正)する(しないと贈与税の対象となる)というケースです。

典型的なのが、収入のない妻(頭金も出していない)に、「内助の功」として持分を半分持たせるという場合です。気持ちは分かりますが、この場合は贈与税の対象となってしまいます(結婚20年以上の場合は所謂控除の利用が可能です)。

その他に利用できる制度として、父母や祖父母から住宅取得資金贈与場合の特例があります。住宅取得資金については先にのべた相続精算課税制度つい特例があります。

そしてもう一つ気をつけなければならないのが、所謂住宅ロー控除です。といいますのは、住宅ローン控除を受けられる金額は自己の持分が上限となるからです。例えば、夫婦が共同して住宅ローンを借りており(連帯債務)、共有名義としている場合、夫のローン負担額が持分を越えていても、控除を受けられるのは自己の持分が限度となります(夫の単独借入れでも同じ)。

たまにあるご質問として、妻は今仕事をしているが、1~2年で退職して子育てに専念したいので、夫がなるべく多く控除を受けられるようにしたいというものがあります。

この場合、夫の単独所有(妻が現金出資をしている場合はそれを除いた部分全部を夫の所有)とし、ローンの返済も夫だけがすれば、夫がローン全額について控除を受けることが可能です。

いずれにしましても、不動産購入時に適正な持分にしておきませんと、後で思わぬ手間とコストの負担を強いられる可能性があります。不動産業者さんや私達司法書士(登記のついでに)にお問い合わせいただくか、税理士さんや最寄の税務署の相談窓口にご相談されることをお勧めいたします。

尚、本文中でリンクさせていただいておりますサイトは国税庁のサイトですので(内容の信頼度は高い)安心してご利用下さい。

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