法的思考のできる奴が仕事のできる奴 その3 説得の技術
今日はこんなたとえ話から・・・。
うちの事務所のM君(「フクダリーガルWiki支店」の「司法書士補助者日記」の執筆者)が彼女とデートの約束をしたとします(まぁ例え話ですから別にM君でなくても良いのですが)。「今度の土曜日に表参道ヒルズに行こう。10時に原宿駅前で待ち合わせね。」とメールをしたところ彼女からは「OK♥」という返信がきました。にも関わらず彼女は当日約束の時間に現れません。30分待っても来ないので、M君ケータイに電話したところ通じません。さて・・・・。(これはあくまでもフィクションであり実際にあったことではありませんので念のため)
この場合彼女が約束を忘れていたとしたら、M君は当然約束を果たすよう要求するでしょう。そしてこの時たぶん彼は無意識に「法的思考」を働かせて、なぜ10時に原宿まで来なければならないかを説明するはずです。「だって約束したじゃない!」と。そうです彼女は自分の意思で約束(彼の提案に対して「OK♥」という返信)をしたのですから。自ら行った約束だから守らなければいけないのです。こうやって相手が何故約束を守らなければならないかを説得力のある論理で説明するのが「法的思考」の一つの機能なのです。
よく、「法律は人を説得するための道具である」という事が言われます。昨日、法的思考とは「何故か」を考える事、自分に突きつけられたルールに何故従わなければならないかを考えることだと言いましたが、法律は自分と違う考え方の人に自分の主張を納得させる道具だというのです。
この法律による「説得」というものにも程度の違いがあります。それこそ判決に基づいて強制的に法律に従わせるというものから、当事者同士の話し合いでお互い納得するというレベルのものまで。しかしそこで使われる思考方法はすべて同じ、「法的思考」なのです。
たとえばこの最も強力な、判決に基づく強制の場合、なぜこの判決という「決まりごと」に従わなければならないのでしょうか。それは「法律」に基づくものだからです。では何故「法律」に従わなければならないのでしょうか。それは法律を定めたのが「自分(達)」だからです。国を統治する権利は国民にある、すなわち法律を制定する権利も国民にあるというのは国の根本規範である憲法によって保障されているものなのです(国民主権)。手法としては法律は国民の選挙によって選出された国会議員からなる国会によって定められるという方法を採用していますが。
法律が説得の道具だというのは説得・強制の根拠を力の源泉まで遡って論理的に導き出すことができるという事です。もちろん説得の道具となるのは「法律」だけではありませんが、なぜルールに従わなければならないかという説得の根拠として誰がそのルールを定めたのかと言うところまでさかのぼって説得するというのが「法的」思考です。
相手を説得するという機能のほかに、「法的思考」のもう一つ重要な機能として、ある目的のためにどのようなルールを定めるべきかを考えるというものがあります。これは昨日の「申請書の綴じ方」の例の場合です。そして三つ目の機能として、「問題解決」があります。
・・・・・・・・・
話がだんだん膨らんできてしまいましたのでこのテーマはもう少し続けます。
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コメント
なるほどですね!
まず、待ち合わせによる説得!
個人的には、待ってるのは好きです。
忘れて来ないのは、寒いですが・・
登記官になったつもりになれ!
っと、言うのは正に真ですね。
私は、新人スタッフにお客様の求める出口(答え)を
確認し、導く方法と実行を考えて下さい。っと言います。
福田先生の文章は勉強になります。
相手の立場に立った想像力は大事ですね!
投稿: 山内@恭英 | 2006年2月20日 (月) 08時22分