トップページ | 2005年9月 »

2005年8月23日 (火)

司法書士間でも熱い議論があったのです / 証券化記事の補足もさせてください。

伊藤さん、コメント有難うございます。

実体の反映が「理想」なのは私も十分理解しているつもりです。

でも、それが「義務」とされていないことも確かです。

そして、「義務」でない以上、登記するかしないかは本人の選択に任せる余地もありうるのではないでしょうか。

もちろん、登記をしないことを選択する理由の大半が登録免許税の節約にあることも確かです。ですから、ご提案のような税制改正を求める運動をすることも意味のあることだと思います。

しかし、それだけではなく、「理想」というものが、義務がないものを強制する(中間省略登記を禁止する)根拠となるのか、というところが今一つ納得できていないのです。

ですから、税金の問題とはまた別に考えて行きたいのです。

ところで、日本司法書士会連合会の、司法書士専用のサイトで、中間省略登記について熱い議論が繰り広げられているというのを初めて知りました。

やはり色々な意見の司法書士がいるのですが、中にその考え方、行動について筆者が全面的に支持したい、と思える方がいらっしゃいました。いずれご本人の了解を得てご紹介したいと存じますが、その方も「第三者のためにする契約」の方式を推奨されており、実務上の実績もおありのようです。

さて、昨日に引き続き「証券化」ネタです(私も中間省略しか知らないわけではないことを見せないと)。

昨日三井住友銀行銀行統括部藤瀬セミナに参加してまいりました。さすがに証券化ビークルとしての有限責任中間法人の利用を「発案」された方だけあって、大変柔軟な発想を持った方でした。

テーマは「会社法の改正で変わる証券化ストラクチャー」で、昨日紹介した筆者の記事(NETdeBIZ.com経営塾)とかぶるのですが、1点だけ筆者の記事で補足した方が良い点が見つかりましたので、この場で補足致します(読者層はあまり重ならないかも知れませんが)。

有限会社制度廃止後、既存の有限会社は「特例有限会社」として存続は可能なのですが(ここまでは後編の記事の中に書いてあります)、会社更生法の適用は受けることになるため、合同会社への組織変更をした方が良いケースが出てくるということです。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2005年8月21日 (日)

「第三者方式」の法的検証。

村田さん、コメント有難うございます。

村田さんは「第三者のためにする契約」がなぜ今まで利用されて来なかったのかという疑問を提示されていらっしゃいます。確かにこれまで通常の不動産売買の場面ではあまり使われてこなかったとは思います。

しかし、実は「通常」の売買でない場面では頻繁に使われて来ているのです。資産の流動化・証券化の場面における信託契約がそれです。信託はまさしく第三者のためにする契約を基本構造に含むものなのです。

また、業界団体の作成している売買契約書の雛型には「買主または買主の指定する者に引き渡す」という規定の仕方がされています。この「買主の指定するものに引き渡す」はまさしく(地位の譲渡ではなく)売買契約を維持したまま、履行を第三者に対して行うものであり、「第三者のためにする契約」に他なりません。

さらに、第三者のためにする契約自体は、契約当事者と第三者(受益者)との間の対価関係を問題とはしておりません(受益の意思表示を必要とするのみ)。これは、第三者のためにする契約が売買・贈与等の契約諸類型の一つというよりは、各契約に共通して採用される特約としての位置づけにあるからだと思われます、法的には対価関係の有無に関わらず第三者のためにする契約は有効に成立します。

要は、(通常の売買で)「第三者のためにする契約」が利用されて来なかったのは、その必要がなかったからという事に尽きると思います。

他人物売買についての業法上の規制についてもクリアしています。業法では不動産を取得する「契約」を締結していることばかりでなく、その効力の発生が条件に係るものでないことも要求していますが、本方式では契約の効力発生自体が条件にかかるものではありませんので全く問題ありません。

ところで、信託を用いることにより証券化スキームでは登録免許税を始めとする不動産諸税の節減が実現されているため、中間省略登記の「代替案」として信託スキームを考えた方もいらっしゃるのではないかと思いますが、実体関係を相当見直さなければならないこと、さらに緩和されたとはいえ信託業法上の制限もあることから、採用は難しいと思います。

さて、今日は、証券化の話が出ましたのでそれに関連したPRを一つ。

NETdeBIZ.com経営塾というサイトの「税・会計・法務の羅針盤」というコーナーで、「商法改正が証券化ビジネスに与える影響(有限会社制度廃止後、SPCとしての適格性を有する企業体は何か)」という記事を書かせていただいております。会員制のサイトですが、登録及び利用は無料です。不動産関連ばかりでなく、税務、会計、会社法務などについての有益な情報が掲載されておりますので、是非ご覧になってみて下さい。筆者は参加団体の一つであるビジネス会計人クラブのメンバーとして、定期的に情報を提供させていただいております。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2005年8月19日 (金)

諸先生方、残暑お見舞い申し上げます。

根井先生、コメント有難うございます。

先生のような経済の最先端でご活躍されている弁護士の方に意見を寄せていただけるのは、心強い限りです。

「第三者のためにする契約」による方式はまさに先生の仰る「契約行為に中間者を関与させつつ、所有権については中間者に一度も移転しないようにして、実体と登記をあわせる工夫」であり、「小手先の技術的な発想ではなく、公示制度や租税制度に反することなく正々堂々と手続をすることを意味するのであり、むしろ正攻法」であると考えております。

そして「取引関係者のニーズにあわせて柔軟な対応が出来るよう」努力するというのは法律家としての司法書士の職責でもあり、結果として(前の記事でご紹介した川上先生も援用されている)日本司法書士会連合会の提唱する「国民の権利の保護に寄与する」ことにもなると信じております。

内藤卓先生、ブログで取り上げて頂き、有難うございます。

只、少々異論があります。「中間者の利益追求的発想であり、本来保護されるべきエンドユーザーの利益を保護する視点はないように見える。」と仰っていますが、流通過程でのコストは、最終売価に転嫁されますから、中間者のコスト削減は結局「エンドユーザー」の利益保護のためでもあるわけです。事実、旧法下での中間省略登記についてエンドユーザーに説明するに際して、売買代金額を抑えるためであるという説明がされています。

「司法書士のひとりごと」mo-chanさん、ご紹介いただき、有難うございます。

そしてご意見ごもっともです。「第三者のためにする契約」による方式の当局承認についてはもう少々お待ち下さい。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2005年8月17日 (水)

こんなスタンスの司法書士もいるのです。

 夏休み特集第二弾として、昨日の方とはかなりスタンスの違う司法書士さんの文書をご紹介します。これは謂わば公開質問状であり、ネット上でも既に公開されておりますので目にされた方もいらっしゃるかとは思いますが、改めてご紹介させていただきます(再録についてご本人の了解は頂いております)。

日本司法書士会連合会 御 中

             中間省略登記について

 平成17年3月22日

                    大阪市中央区谷町1丁目6番4号

                    天満橋八千代ビル9階

                    司法書士 川 上 憲 一

1.連合会・単位会の対応への疑問

 先般、新不動産登記法が施行され、暫くの間は各司法書士の現場で手続的に若干の混乱が生じることは止むを得ない。

 しかし、実体法上の請求権の問題として捉えなければならない中間省略登記に関して、各研修会・連合会における対応・説明が全く実体法と判例を無視し、あまりにも制度と手続に偏っているため実のところ非常に困惑している。

 各研修会においても、多くの出席者が中間省略登記不可の理由を求めたが、結局納得した様子のないまま着座していたことは御存知のはずである。それは、壇上からの説明がおよそ法律とは呼べない上に、その前後に連合会が行ったと思われる解説が最高裁の登記請求権に関する判断を完全に無視しているため奇異に感じ、同時に会の対応が本当に正しいのか疑いを持ったためである。

 個人的には、連合会が司法書士は実体法を重んじる法律家であるという立場を堅持するのならば、前記対応・説明等は法的思考が時代錯誤であり、又、そこから派生して、連合会は国・法務省・法務局に対し、登記請求権に関して国のダブルスタンダード的な扱いを早期に是正するか、登記制度そのものを見直すよう働きかけるべきである、という結論に至るはずであると考えている。

2.実体法としての中間省略登記請求権

 不動産の所有権が、A→B→Cと移転したとき、登記上は原則としてA→B、B→Cの2段階の所有権移転登記申請をしなければならない。

 これは不動産登記法が、権利の得喪事実をあるがまま登記に反映させることにより、その得喪前後の法的安定を保ち、取引の安全を確保することを主たる目的とするためであり、手続法の目的を達成するための原則としては当然である。

 然し、原則があれば例外の存在は避けられない。それが旧不動産登記法の成立直後から発生することになった。

 現実の不動産取引界においては、上記A→B→Cの権利変動が生じたときにA→Cの中間省略登記を行う場合が少なからず存在した。明治時代には、この中間省略登記について、所謂「(事実に)基づく登記」ではないのに、その登記自体を法的に有効としてよいのか否かということが争いとなったが、大正5年9月大審院が中間省略登記の特約は中間者の同意があるときは有効であると判示したことにより、当該中間省略登記そのものに関する有効無効の争いには一応の決着がついた。

 その後時を経て、昭和40年9月には最高裁は、「登記名義人と中間者の同意がある場合に限り中間省略登記請求権が認められる」と判示し、現在の所有権者から登記名義人に対する直接の登記請求権という実体法上の「請求権」そのものを認めるに至った。その後も裁判において、この「登記請求権」について同様の判断がなされ、現在では既になされた中間省略登記について例え中間者が同意をしていない場合でも、特段中間者の保護に値する法的利益がなければA→Cへの直接の中間省略登記を有効とするにまで至っている。

 上記A→B→Cの所有権移転の事例において、今日では、A→Cの移転を命ずる判決をもって登記申請をするとき、どの法務局でも当然のように受理される。これは、単に法務局の先例主義によるものではなく、当初の取扱いにおいて不動産登記法の原則を固持しなくとも実体法のなかで全てが解決されているのであるから法的に安定であり、取引の安全を害さないという判断が背景にあるからと解してまず間違いない。

 なお、この判決による登記の場合は判断の通用力・執行力があるから中間省略登記を認めているのだとする漠然とした反論はあるが、「請求権の実現」という観点からすれば判決による登記も一般の不動産売買による登記と何らの変わりはない。

 判決は、実体法上争いのある権利変動事実について分析・認定を終え、その権利変動事実に基づいて登記請求権を認定し、民事執行法第174条によって相手方の申請意思表示を擬制することにより登記実現の効力を与えたということにほかならないが、通常の不動産売買による登記をする場合は同様の過程のうち申請意思表示の擬制がなく、代わりに登記申請意思表示そのものの存在があるだけで、権利変動事実の確認及びその権利変動事実に基づく実体法上の請求権が登記の実現の効力を与えていることについては全く同じである。請求権の本質ではない紛争の存在という要素に惑わされなければ、両者の登記請求権の間に何らの違いがないことに留意願いたい。

 論点が若干それたが要するに、昭和40年9月の最高裁判例の意味と価値は、登記名義人と中間者の同意がある場合に限ってはいるが、実体法上の権利変動事実に基づいてC→Aへの中間省略登記請求権を一般化したことにある。つまり、A→B→Cの権利変動事実において、CはABの同意を前提としてAに直接移転登記せよと請求する権利を国が認めたということであり、この請求権の存在は裁判の提起をしたか否かに全く関係がない。移転登記はこの国が認めた請求権をもととして実行されるのである。判決があるから登記を求めることができるのではない。登記を求めることができる権利があるから判決が得られるのである。判決を含め登記は全てこの実体法上の請求権を元としている。

 手続法が原則を重んじることは否定しない。然し、前述したとおり原則には例外があり、その例外が昭和40年9月の最高裁判例の示す中間省略登記請求権なのである。尚も原則論だけが突出すると結果的に国が認めた実体法上の請求権を国が阻害することになり、それは国の行う矛盾でしかない。

 それでも「判決による中間省略登記だけは認められる」とするならば、国(この場合は主として法務局)はその合理的理由を明らかにしなければならない。一つの登記請求権の行使による登記簿への記載を求める行為が、法律官庁である裁判所を通過させると実現するにも拘わらず、同じ法律官庁である法務局を通過させると実現されない、というのは国による実体法上の請求権に関してのダブルスタンダードだからである。もしかすると、法務省は縦割行政による弊害、後日の課題ということで終えるつもりなのかも知れない。

 只、奇妙に思えるのは、連合会は新法のもとでの中間省略登記を公式に否定して関係諸団体と協議まで行っているが、国(主として法務局)の方は中間省略登記に関して何ら公式見解を表明していないことである。だとすると、最終的には原則論に偏りすぎた連合会の勇み足ということになるのであろうか。

 更に敷衍する。連合会は、新法下でも中間省略登記を行う司法書士は倫理に反するとしている。

 では、前記最高裁判決の他実体法上の「中間省略登記請求権」に基づく登記を命ずる判決は全部倫理に反することになるというのか、それとも、裁判所が命じた場合だけ倫理に反せず特別ということになるのか、何故判決中に登記原因証明情報として中間省略であることが明示されているのに新不動産登記法上も添付書類の不適格にはならないのか、これらの場合に官が特別で民と区別する理由があるのか、その区別が合理的なのか、それともこの区別や倫理は司法書士のみに課されているものなのか、司法書士のみに課された理由は何なのか、等々やや詰問調ではあるが疑問が尽きない。然し、それら疑問の源は全て連合会が行った指導と対応及び説明にある。

 本書は全国の単位会、司法書士に公開して戴きたい。中間省略登記に関して連合会の行っている指導や説明等に対し、私と同様実体法を扱う者として言いがたい違和感と不信感を持っている者が多く存在するからである。又、連合会は各単位会と全国の司法書士に指針を発すべき立場にあり、それ故今回の指導等に及んだというのであれば、後日に禍根を残さないよう早期のうちに全国の司法書士に対し以上の疑問について法律的に明解な回答を行うべきである。

 蛇足ながら、連合会は「国民の権利の保護に寄与するために」のスローガンを掲げているが、その権利の保護とは個々の国民の請求権の実現にほかならず、反対に言えば、「請求権」を扱うことができないものは「国民の権利の保護に寄与する」ことなど絶対にできないという結論になることを厳に自覚して戴きたい。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005年8月16日 (火)

ある司法書士さんからのメールです

夏休み特集(?)としてブログ開設当初にある司法書士の方(古くからの知人で、地方都市で開業されています)から頂いたメールとそれに対する私の答えを掲載させていただきます(ご本人の了解は頂いております)。

こんなメールを頂きました。

「福田さん こんにちは。東京の司法書士の方々は、これについて堂々と反対意見をされておられる方が多いですね。
それは、以前はできていた・・・とか、判例が認めているとか・・・。
まあ、私は言わんとするところは、わからんではないですが、ウソの登記原因証明情報は出したくないというのが本音です。
債権的な・・・とか、地位の譲渡・・・とか何かでするのか否かわかりませんが、所有権は譲渡されているんじゃないんですか?
判例の見解も基本的には三者合意だと思います(中間者の同意かもしれませんが・・・)ので、実務に合致しているとも思えません。
色々言ってもなんなんですが、どういったスタンスでやるかだと思いますので、福田さんは中間省略容認のスタンスでしょうからまたやり方等情報をいただければ、我県の司法書士にも情報は伝達します。
なお、私も含め、我県の司法書士は中間省略反対論です。これは、地方は大きな物件がないのもその理由でしょうね。(登録免許税が高額ではありません)
その為、代理申請で困っている都会の司法書士さんがおられるようですので、ご注意ください。」

・・・・・・これに対して以下の様なお答えをさせていただきました。

「私もウソの登記原因証明情報を出すつもりはありません。
また、所有権が移転しているものについて後から売買予約だとかをこじつけるつもりもありません。
やるとすれば三者合意です。これは必ずしも実務と乖離しているとも言えないのでは?
又、中間省略登記「容認」というより「反対することに反対」という気持ちが強いかも知れませんが(登録免許税だけの問題ではありません)。
いずれにしても現在「中間省略」として登記を申請中です。
このままでは却下になります。
ブログには今後これだけでなく色々と掲載していきます。」

・・・・すると、次の様なメールを頂きました。

「福田さん おはようございます。
ブログ 読ませていただきましたので、されることの意味はわかりました。
確かに、どこにも中間省略登記が不可とは明示されてませんね。

>
私もウソの登記原因証明情報を出すつもりはありません。
>
また、所有権が移転しているものについて後から売買予約だとかをこじつけるつもりも
ありません。
>
やるとすれば三者合意です。これは必ずしも実務と乖離しているとも言えないのでは?

地位の譲渡理論か請求権譲渡でやるのかと思ってました。

> 又、中間省略登記「容認」というより「反対することに反対」という気持ちが強いかも知れませんが(登録免許税だけの問題ではありません)。

登録免許税の問題は大きいと思ってます。
中間省略が容認されるとすると、登録免許税の脱税を容認することになります。
我県ではそんなに高額ではないですが、東京では高額ですよね。
だから、高額な免許税の負担を逃れることを容認することができるのだろうか?という疑問については、どう対応されるのでしょうか?脱税ではなく節税であるという論法はどこにあるのでしょうか?
中間省略容認者は必ず判例を引き合いに出して、中間省略を認められていると言いますが、判決の場合、中間者の登録免許税を誰が負担するのでしょうか?
つまり、ACで依頼を受けるとすると、Cから依頼を受けます。
そのCが「先生、登記お願いします」と言われ、
「この判決の場合、Bに移転してCに移転しますので、登録免許税が2倍かかります・・・・」と言って、おしまいにできるでしょうか?
多分、裁判官は、よく考えてくれていて、中間者は基本的に争いの当事者ではないので、ACに移転登記ができるのであれば、こと足りると判断したからあのような判決になったのではないかと想像してます(これは、詳細に読んで言っているのではない。あくまでも実務的な考え方から、私個人の意見である)
登記法の考え方に、中間省略を認めないという「公示的機能」があるのは誰しも認めるところだと思います。
これを、登録免許税の負担の側面で見ると、どうしても脱税を指南していると指摘されても仕方ないと思えるのではないでしょうか?
少なくとも我県では、未だ中間省略容認の話はありません。
会長が強く指導しているということもありますが、地方は都会と比較して登録免許税の負担が少ないということもあろうと思います。
ただ、業者はなんとかならないかと、何度も電話してきますが、私は「できない」と言ってますし、地位の譲渡の考え方は、「実体がそうならば・・・・」と、釘をさして伝えてます。
こういったことは、司法書士のスタンスの問題でもあろうと思いますので、この辺りでやめますが、私はやはり中間省略登記はすべきではないと思ってます。」

これに対してはまだ返信していなかったので、ここでお答えさせて頂きたいと思います。

>中間省略が容認されるとすると、登録免許税の脱税を容認することになります。我県ではそんなに高額ではないですが、東京では高額ですよね。だから、高額な免許税の負担を逃れることを容認することができるのだろうか?という疑問については、どう対応されるのでしょうか?脱税ではなく節税であるという論法はどこにあるのでしょうか?

→そもそも納税義務がないのですから脱税にはならないと思うのですが。登記義務がないのですから、登記するか否かは自由だという考えに立ち、登記しない以上当然登録免許税の納税義務は発生しないと思います。


>中間省略容認者は必ず判例を引き合いに出して、中間省略を認められていると言いますが、判決の場合、中間者の登録免許税を誰が負担するのでしょうか?つまり、ACで依頼を受けるとすると、Cから依頼を受けます。そのCに「先生、登記お願いします」と言われ、「この判決の場合、Bに移転してCに移転しますので、登録免許税が2倍かかります・・・・」と言って、おしまいにできるでしょうか?

→先ほども申し上げましたように、登記をしなくて良いという前提に立てば、登録免許税の納税義務も生じないのです。


>多分、裁判官は、よく考えてくれていて、中間者は基本的に争いの当事者ではないので、ACに移転登記ができるのであれば、こと足りると判断したからあのような判決になったのではないかと想像しています(これは、詳細に読んで言っているのではない。あくまでも実務的な考え方から、私個人の意見である)

→これは中間省略登記請求権を認めた判決だと理解しております。また、訴訟において原告Cが中間省略登記を求めているのであればそれを認容する判決がA→Cという中間省略登記を命ずるものとなるというのは弁論主義の帰結だと思うのですが。

>登記法の考え方に、中間省略を認めないという「公示的機能」があるのは誰しも認めるところだと思います。これを、登録免許税の負担の側面で見ると、どうしても脱税を指南していると指摘されても仕方ないと思えるのではないでしょうか?

→登記しない以上納税義務は発生しませんから、脱税にはなりようがないのではないでしょうか。ところで登記に「公示機能」があるのは当然の事ですが、それが中間省略を認めないのというのが「誰しも認める」かどうかがまさに議論の対象となっているのではないでしょうか。

>少なくとも我県では、未だ中間省略容認の話はありません。
会長が強く指導しているということもありますが、地方は都会と比較して登録免許税の負担が少ないということもあろうと思います。
ただ、業者はなんとかならないかと、何度も電話してきますが、私は「できない」と言ってますし、地位の譲渡の考え方は、「実体がそうならば・・・・」と、釘をさして伝えてます。
こういったことは、司法書士のスタンスの問題でもあろうと思いますので、この辺りでやめますが、私はやはり中間省略登記はすべきではないと思ってます。

→例えばこの「地位の譲渡の考え方」のように物権変動の態様自体を何とかする方法に関して、私の「スタンス」としては「実体がそうならば」やりますよ、というものではありません。司法書士は「登記屋」でなければならない(=登記のスペシャリストでなければならない)と思っていますが、単なる「登記屋」に止まってはならず(=登記しかしない・出来ないという考え方をしない)、常に依頼者(=お客様)のためになる努力を積み重ねなければならないと考えていますから、このような問題に関してもお客様が作り上げた実体関係通りの登記をしますよというのではなく、実体関係の形成を手助けするというスタンスでの仕事をしなければならないと思っています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年8月12日 (金)

グループ間取引での「中間省略登記」の要請は強い?

"rifinito a mano"さん、コメント有難うございます。

確かに親子会社やグループ会社間での取引でも、「中間省略」のニーズは高いですよね。「リスク回避」の必要が殆んどない、つまり登記による保全(対抗力の取得)の必要がないからなんですが。「地位譲渡では売り上げが立たない」、確かに不動産自体についての売り上げは上がりませんね(地位譲渡の対価としての売り上げは立ちますが)。

「より詳しく紹介している書籍」ですが、この仕組み自体についてということでしたら、多分まだないと思います(中間省略登記研究会のオリジナルですので)。それぞれの特約の内容についてもう少し詳しく知りたいということであれば、六法を片手に「民法」(債権法)の教科書を読んで頂くのが良いと思います。因みに私が日頃基本書的に使わせていただいているのは内田貴先生のシリーズです(東京大学出版会)。専門書を扱っているような書店なら大概平積みになっている、教科書として定評のある本です。もちろんネットでの購入も容易です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年8月11日 (木)

「中間省略登記」効果を実現するための主要2方式の検討

「中間省略登記」を必要とするような場面において、実体関係(契約及び物権変動)を見直すことにより、「中間省略登記」を必要とせずに、「中間者」への登記を不要とする方法が提唱されています(住宅新報紙「中間省略登記研究会」等)。以下両者を比較しつつ概要のご説明をいたします。

1.      第三者のためにする契約方式

「第三者のためにする契約+所有権留保+他人物売買+第三者弁済」

   

      AB間の売買契約

(ア)  AがBとの間で自己所有の不動産の売買契約をし、所有権の移転・引渡しを第三者に対して行うことを約する(第三者のためにする契約 民法537~539)。

(イ)  AはBが代金全額を支払った後も、所有権をBに移転しない旨を約する(所有権留保-依然所有権はAにある)。

   BC間の売買契約

(ア)  BはCとの間でA所有の甲不動産の売買契約をする(他人物売買 民法560条)。

(イ)  売買契約の債務の履行としての引渡し、所有権移転は売主Bでなく第三者Aが直接行う旨を約する(第三者の弁済 民法474条)。

(ウ)  Cが代金全額を支払うのと引き換えに、AはCに対して所有権を移転する。

2.        地位の譲渡方式

  AB間の売買契約

(ア)  AがBとの間で自己所有不動産の売買契約をする(所有権移転時期は売買代金完済後とする)。

(この間、Bは売買代金を支払っておらず、従って所有権も移転していない)

  BC間の地位譲渡(売買)契約

(ア)  Bが(Aの承諾を得て)Cに対して売買契約上の買主としての地位を譲渡(売買)する。これによってAC間の売買契約が成立する。

(イ)  CがAに対して売買算代金を支払い、引換にAがCに対して物件を引渡し、所有権を移転する。

はじめからAC間に売買契約が締結されていた場合と結果的には同じである。

3.        両方式の差異=適用場面の相違

「第三者」方式は中間者が売買残代金を支払った後、更に転売をするために利用されるのに対し、「地位譲渡」方式は売買残代金を支払う前に、中間者が売買契約から離脱するために利用される。前者では売買契約が2つ(2段階)存在するが、後者は1つのみである。

典型例としては、「第三者」方式は買取-転売など転売益の取得を目的とするケース、「地位譲渡」方式はデベロッパー(特にJV)の用地仕入れで、即決のために中間者に一度土地を「抱かせる」必要があるケース(原則残代金支払いは未了=所有権も未移転)。

このように適用場面が通常異なるので、単純に優劣を論じることは出来ない。

但し、買取・転売のケース(転売益やバリューアップ分を売価に反映)でも、買取後所有権を留保することも理論的には可能なため、地位譲渡方式を用いることも考えられなくはないが、現実には使えないと言ってよいであろう。なぜなら、転売差益を「地位譲渡対価」として設定することは出来るが、これでは差益がいくらなのかという事が「ガラス張り」になってしまう(少なくともCには知られてしまう)からである。

もちろん、それ以前に、元売主と最終買主との間に直接売買契約が成立するとするのが甚だ不自然なことではあるのだが。

尚、「地位譲渡」方式は、先に上げたケースでは従前から普通に利用されていた方法であり、改正後の「中間省略」効果実現のための新手法として開発されたものではない。

4.        「第三者方式」の問題点

       「A」の倒産リスク=所有権を留保している間に所有者が倒産したらどうするのか。

そもそも旧法の下でも中間者は登記留保というリスクを負っていたのであり、売主の信用状態に不安を感じる(差押、倒産、担保設定、二重譲渡リスク等)様なケースでは中間省略スキームを取らなかったのが通常であるが、むしろエンド(C)への説明として対策が必要とした場合、契約書中にそれを保全する記載をすることで足りる。それが詐害行為や否認の対象になるとすれば、そもそもはじめの売買自体が詐害行為・否認の対象になるということである。

又、取引手順においても実質的リスクを増大させない工夫がなされている。

       対「エンド」対応=売主が所有権を持っていないことは売主の「信頼性」を害するのではないか。

特約による保全と、そもそも所有権を留保する目的がコストダウンにあり、それによって売価も押えられているということを説明すれば、信頼性の問題にはならないと思われる。

尚、「第三者方式」においては、売買代金受領後のAを実質的に取引から離脱させるための技術的な工夫が必要ですが、両方式の比較という意味からは重要ではないので、その点はのご説明は割愛してあります(契約書の記載例も同様)。

また、その他の方式(「契約解除-再契約方式」、「物権的合意方式」等)は上記2方式に比してあまり実体に即したものとは言えないと思いますが、機会があれば詳しく論じたいと思います。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2005年8月10日 (水)

もう一度整理します。中間省略登記の「正面申請」と「第三者方式」

記事の全部消去はいい機会ですので(既に過去の事でありしかも冗長かつ情緒的(?)な嫌いのある-これもお恥ずかしい話ですが-記事も含めて全てを復元する意味もないですし)、この際全体をわかりやすく整理したいと思います。

現在、筆者が取組んでいる課題は二つあります。

一つは、中間省略登記の「正面申請」。これは、中間省略登記であることを明らかにした上で申請する、即ちA→B→Cと売買により順次所有権が移転しているものについて、A→B→Cと記載した書面(「登記原因を証する情報」、売買契約及び所有権移転を証明した書面)を添付して、A→Cという登記の申請をするというものです。

このような登記を申請しても受け付けられない(申請書と登記原因を証する書面(情報)の内容が合致しないため=不動産登記法第25条第8号)という取り扱いは改正前後を通して変わっておりません。従いまして今回の「正面申請」に対しては、予想通り却下の決定が下されました。

しかし、A→B→CとA→Cが「合致しない」とするのは、とりもなおさずA→Bも登記しなければならないという前提に立っているということであり、この点は申請人も承服できないところですので、今後質していきたいと考えております(審査請求)。

以上は正面切って中間省略登記禁止の意義を問い質すものであり、意義のある事だと思ってはいますが、実務上すぐに何とかして欲しいという要請にはこたえられるものではありません。

そこで、もう一つの課題として、実体関係を変えることによって中間省略でなくすればよいのではないかという事から、「第三者のためにする契約」方式を「中間省略登記研究会」(住宅新報紙主宰)にて考案し、検討して参りました。これは、旧来の中間省略登記が、中間者が登記上のリスクを負う事により行われていたものであるのに対し、中間者の負うリスクを実体上のものに置き換えたものなのですが、詳しくは「地位譲渡方式」(同紙8月9・16日号で既報)との比較と併せて、明日また稿を改めて掲載したいと思います。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

中間省略登記に関する基本的なご質問にお答えします

(復元です)

Q1.そもそも「中間省略登記」とは何でしょうか。記事の中にヒントを探すと「物件変動の過程を反映」しないものと概観しますが

A1.「中間省略登記」とは要するに登記の対象となる事項について、その「過程」の全てを登記簿(登記記録)上に反映させずに中間の過程を「省略」する場合を言い、不動産登記、商業登記いずれでも問題になりえます。只、現在問題となっている(私が問題としている)のは不動産登記の場合についてです。商業登記に関して「中間省略登記」が許されないということはあまり問題とはされておりません(登記義務があります)。

不動産登記における「中間省略登記」とは物権変動の過程を一部省略して登記するもので、典型的な例は、A→B→Cと不動産の所有権が移転した場合(BがAから買った不動産をCに売った)にA→Cという登記をする(Bの所有権取得を登記しない)というケースです。所有権移転という「物権変動の過程」を忠実に反映していない登記という事になります。

現在、「中間省略」としてなされた登記申請は受理されません。理由は物権変動の過程を忠実に反映するという「不動産登記法の理想」に反するからということのようです。

 

Q2.今回の申請は「中間省略登記」にあたるのでしょうか。記事を見る限り、「物権変動の過程をありのままに記載」するとあり、禁止された「中間省略登記」とは別のものと思われます。

A2.「記載」とは、登記申請書に添付する書面(登記原因証明情報)への「記載」のことです。要するに「A→B→C」と記載した書面を添付して、「A→C」という登記を申請するということであり、中間省略登記に他なりません(尤も今迄はこういう方法での申請ではありませんでしたが)。

  

Q3 法令改正などの根拠もなしに運用が変更されるのは、おかしな話しだと思います。法令解釈の変更があったのなら、その旨の説明が示されるべきです。

A3 実は法務省・法務局の運用は変更にはなっておりません。今般の改正によって中間省略登記が禁止されたというようなアナウンスも法務省サイドでは行っておりません。改正以前から中間省略登記は受理しえなかったのであり、改正後も何ら変わるところはないというスタンスだと思われます。

公式に禁止するという見解を表明したのは司法書士の側です(日本司法書士会連合会会長名での通達)。これに金融機関や不動産の業界団体が敏感に反応しているようです(上記通達は「不適法」というコトバを使っておりますので)。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2005年8月 9日 (火)

記事を消してしまいました。大変失礼致しました。

お恥ずかしいのですが、誤って過去記事を全部消してしまいました。

取り急ぎこれまで寄せていただいたコメント(皆さん実名です多分)だけでも再掲載させていただきます。

記事に関しましても(現時点であまり意味のないものを除き)順次復元乃至要旨を掲載して参ります(用語や概念の解説など内容によっては掲載場所を幣事務所ホームページに移します)。

もっともこれからの展開の方が皆さんご興味おありだと思いますし、法務局で受け付けられてから掲載してくれよという声があるのも確かですので、その点も検討しつつということになりますが。

中間省略登記の「正面申請」は却下されました。却下はそれだけでも意味があると思います(おそらく今迄中間省略を理由に却下された例はないと思います)が、確かに実務上すぐに何とかして欲しいという要請にはこたえられるものではありません。

そこで、この却下処分に対する対応とは別に、「第三者のためにする契約」方式での申請を次に予定しております。

追って内容を掲載しますが、本日は取り急ぎコメントの再掲載を。

2005年7月14日

名前: 市毛俊幸
(株)マルオ
市毛俊幸:wrote
いつもお世話になっております。ブログご紹介ありがとうございます。早速拝見させて頂きました。今後の掲載を楽しみにしております。
まずはご挨拶まで。
今後ともよろしくお願い致します。

2005年7月14日

名前: 中村真弓

ブログのご紹介ありがとうございます。
先日、不動産業の方の集まりに行ったときも、中間省略登記については
皆さん興味津々でした。
経過、楽しみにしております。
今後ともよろしくお願いいたします

2005年7月14日

名前: ナレッジバンク 伊藤英昭
福田先生、ご無沙汰しております。Blog開設おめでとうございます。プレス記事や方々でご活躍との噂飛び交っております。これからの展開楽しみにしております。

2005年7月26日

名前: 福井 哲也

福田先生・スタッフの皆様、いつもお世話になっております。
ブログ開設、おめでとうございます。
遅れ馳せながら拝見させて頂きました。
福田先生らしい、今後の展開が楽しみなブログになっていますネ。
これからも、ちょくちょく拝見させて頂きます。
又、某紙の記事も拝見させて頂きました。
福田先生のような方が、各方面に新しい風を吹き込み、
良い意味で刺激を与えて行くのだなと存じました。
これからも、益々のご活躍を期待しております。
今後ともよろしくお願い致します。

2005年7月29日 11:34

名前: 芳賀 

福田さんの高校の後輩です。
登記法や登記の実務に関しては、全くの素人ですが、興味深い取組だと思いまして、コメントさせて頂きます。
保守的な法令解釈をする立場からは、不動産登記法§3は「登記は、不動産についての権利の移転についてする」と規定していることから、中間省略登記はあり得ないのだ、と主張することもできそうです。
しかし、転売目的で短期間所有する場合で当該物件を担保に供しないときなどは、物件に関する権利関係を第三者に対抗する実質的な必要もないですから、登記によって得られる(保護される)利益は少なく、登記に要する費用や手間等のみが大きな負担になるだけのように感じます。
登記は不動産取引の円滑化を図る手段だ、と考えれば、必ずしも必要のない登記というものもあるように思いますから、「中間省略登記」が制度化されるといいですね。
中間を省略された登記の真性を担保する手段をどう確保するか、といった課題でしょうか。

素人な発想で、失礼しました

2005年7月30日

名前: 山内尚人実際、中間省略登記は、企業にとっては重要ですよね、ACの順に登記をしていたら、時間的に倍かかり、融資実行又は融資を受けている利息が1回分の登記期間、費用がかかりますし、Bにしてみれば、すぐに登記義務者となってしまうのに登録免許税は負担しなければならない、お客様本位の立場で考えれば、当然「中間省略登記」は幸せな結果なのだと考えられますね

2005年8月4日

名前: 根井真

根拠の不十分な運用レベルでの不明朗な取扱いについては、正面から疑問をぶつけて白黒つけることは社会的な意義があります。
中間省略登記につき正面突破を図ろうとすることは、まさにこのような意義があると思います。
福田先生のこのような姿勢には、同じ法律家として見習うべきであると感じております。
今後の展開に期待しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

トップページ | 2005年9月 »