しばらく休載します。
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
最近の記事は適取(不動産適性取引推進機構)の機関誌RETIOの判例紹介を要約しているだけですから、ご興味のある方はそちらを御覧ください。
https://www.retio.or.jp/info/info01.html
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
最近の記事は適取(不動産適性取引推進機構)の機関誌RETIOの判例紹介を要約しているだけですから、ご興味のある方はそちらを御覧ください。
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(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
【裁判所の判断】
裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した。
(隠れた瑕疵・履行不能)
瑕疵とは、目的物が通常有すべき品質・性能を欠いている状態をいうところ、本件の臭気がこれに当たるか否かについては、臭気に関する法令や規制の趣旨を斟酌しつつ、現実の本件居室の状況や相隣関係なども勘案したうえで受忍限度を超えているかどうかといった見地から検討するのが相当である。
本件居室内の臭気指数11及び12は、市の定める許容限度の範囲内ではあるものの、これは飽くまで屋外を前提とした基準であるから、本件居室内における臭気は居住者に不快なものであることは認められる。
しかし、そもそも悪臭防止法は、事業活動に伴って発生する悪臭について事業者を規制するものであるから、生活に伴って発生する悪臭を直接規制するものではない。
また、本件臭気は、本件マンションに居住する者の生ごみの処理の利便と引き換えに発生した臭気であるから、居住者は、いわば自分の所有するマンションそのものに内在する問題として、上記法令の場合と比べて高い受忍限度が求められると解するのが相当である。
その見地でみると、本件マンションは、そもそも所在地における大気の臭気指数の許容限度を超えておらず、本件建物のディスポーザー排水処理システムに一般的に求められる性能基準を下回る性能・性状であることを基礎付けるに足りる証拠もない。
一時的に臭気指数11、12などの数値を示すことがあることを踏まえても、なお居住する者の受忍限度の範囲内にあるというのが相当であり、本件各マンションに瑕疵があるともいえない。
以上によれば、本件臭突管排出口からの臭気により、居住者に不快な状況が生じており、Xの主観としては通院を要するような耐え難いものであったとしても、本件各マンションが通常有すべき品質・性能を欠いているとは評価できない。
(説明義務違反による債務不履行)
Yは、重要事項説明書に記載された本件ディスポーザーに関する特約事項を省略せずに一言一句読み上げており、Yが本件臭突管排出口や臭気について説明を欠いていたとはいえず、かつ、上記判断のとおり本件各マンションに瑕疵はないから、説明義務及び目的物引渡義務のいずれについてもYに債務不履行はない。
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
RETIO. NO.125 2022年春号
https://www.retio.or.jp/info/retio_125.html
東京地裁 令和3年4月13日判決 ウエストロー・ジャパン
より
【登場人物】
X:個人、原告
Y:売主、マンション開発事業者、被告
【概要】
Xは、14階建て新築マンションの最上階の2室を購入し、入居した。
本件マンションには、生ごみを流し台から処理できるディスポーザー排水処理システムが備えられており、購入者の利点設備として紹介されていた。
この設備は、各家庭の生ごみが地下の処理槽で処理された後、その処理臭気が屋上に設置された臭突管から排出される構造であり、重要事項説明書には次の記載があった。
⑿ ディスポーザーに関する事項
⑦ ディスポーザー処理槽の臭突がマンション屋上にあること。
⑧ (中略)上記⑦は、臭気等が発生する場合があること。
X及びその家族は、入居当初から居室内で異臭を感じていたが、マンションの入居者が増えるにつれ顕著になるその臭いに精神的苦痛を感じるようになった。
入居1年後、Xがマンション管理組合の理事になり、本件マンションの検査の立ち会いで屋上に上がった際に、臭突管排出口の存在や、それが臭気の原因であることを初めて認識した。
Xは、Yに対して訴訟を提起し、改正前民法570条、566条に基づき売買契約を解除するとの意思表示をするとともに、売買代金の返還、転居費用、慰謝料、臭気調査費用等の損害賠償請求を行った。
なお、悪臭防止法4条2項1号(敷地の境界線の地表における規制基準)に基づき、本件物件所在地の市が定める環境保全条例等施行規則別表において、本物件所在地の大気の臭気指数の許容限度は12とされていたところ、平成30年9月にXが委託した調査会社の測定では、本件各居室の臭気指数は11と12であった。
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
裁判所は、次のように判示し、A子の請求を一部認容した。
⑴ B郎の責任
・本件売買契約に至るまでのA子とB郎との状況等
→通常の交友関係や商取引を超えて、極めて密接な関係と言わざるを得ない。
・A子が、B郎に対し恋愛感情を抱いており、同人との将来の結婚生活に資するものと誤信して、本件売買契約の締結を決意したとの供述
→採用できる。
・マンションの売買価格は2580万円である一方で、現在の処分価格はせいぜい1100万円程度。
・B郎は、本件売買契約の締結後は、A子に対し誠実に応対していない。
→B郎は、A子の誤信を利用する認識(すなわち故意)があった。
→違法である。
→B郎は、A子に対し、不法行為責任を負うといえる。
⑵ 甲社の責任
・売買契約の勧誘行為は、甲社の業務行為。
・当時、B郎は、甲社の業務を統括する立場にあった。
・甲社は、A子に対してはコンサルタント業務、S社に対しては紹介者として、不明瞭な関与形態を主張
・その業務の適法性について具体的な主張立証なし。
→売買契約について少なくとも甲社が組織的に関与した。
→B郎とともに共同不法行為責任を負う。
⑶ 甲野某の責任
・甲野某は、当時、甲社の株式を100%所有し、その業務を実質的に統括していた
・甲社の業務やコンプライアンス体制について積極的に反証することをしていない
→甲野某が、B郎及び甲社とともに、会社法429条1項に基づいて、損害賠償責任を負う。
⑷ 損害額
・A子は、売買代金として2580万円のほか、諸費用81万円余の合計2661万円余の支出をした。
・2661万円余から少なくとも本件マンションの評価額1100万円を控除。
→1561万円余がA子の損害。
・A子が受けた本件損害額と相当因果関係の認められる弁護士費用は少なくとも損害額の1割を下らない。
→B郎らはA子に対し、156万円余を支払うのが相当。
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
その後、A子は、甲社を訪れ、B郎は、数時間にわたりマンション経営を強く勧めるプレゼンテーションを行った。その際、B郎は、A子が持参した源泉徴収票をもとに、提案書も作成している。
A子とB郎は、その後も毎日メールや電話で連絡を取り合い、その後A子はB郎とともに金融機関への提出書類の取得を行った。
A子とB郎は、その後も甲社で会い、A子は、B郎の後輩社員からも、数時間にわたり、マンション経営を強く勧められた。
A子は、B郎に付き添われて売主S社の担当者と喫茶店で会って契約の締結手続を行い、乙銀行で融資を申し込み、融資の実行がなされた。
A子は、B郎に対し、本件売買契約の締結後、繰り返し会うことを求めたが、1度だけ2人で会ったほかは会うことはなく、A子の確定申告手続の協力の求めや転売の可能性の問い合わせについても、B郎は応じることはなかった。
A子は、B郎の言葉巧みな話術で好意を抱かされ、これにつけ込まれて本件マンションを購入するに至った、B郎らの行為は組織ぐるみであるとして、B郎、甲社及び甲社の代表者甲野某に対して、勧誘により支出した金員、慰謝料及び弁護士費用等の支払を求めて提訴した。
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
いわゆる「デート商法」は我々にとっても決して無縁のトラブルではない。
司法書士や不動産事業者だけ、そして不動産取引だけに限らず、(近親者や知人も含め)巻き込まれる危険のあるトラブルの一つである。
RETIO. 2015. 4 NO.97
https://www.retio.or.jp/info/retio_97.html
東京地裁 平成26年4月1日判決
ウエストロー・ジャパン
より
【登場人物】
A子(原告、当時42歳)
B郎(被告、甲社の本部長、当時36歳)
甲社(被告)
甲野某(被告、甲社の代表者)
S社(マンションの売主)
【概要】
A子及びB郎はそれぞれインターネット上のいわゆる婚活サイトに自己のプロフィールを登録した。
B郎は、婚姻歴があったが、婚姻歴はないと虚偽の記載をし、子がいることも秘匿していた。
A子とB郎は、メールによる交信を行うようになり、その後初めて待ち合わせをして食事をし、A子は、B郎を結婚相手として強く意識した。
その後会った際に、B郎は、次に会う際には、売主S社の依頼を受けて本件マンションの営業活動を行っていた甲社に寄ってほしい旨を述べ、A子はこれに応じた。
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
【裁判所の認定】
Xの購入価格は、7981万円余であるのに対し、契約から2年後の査定価格は合計3760万円にとどまり、契約の価格は、市場価格に照らして不相当に高額なものであったと言える。
また、収支も月額合計6万円以上のマイナスで、この状態が相当期間継続、もしくは悪化することも見込まれる。
またAは、Xと知り合って間もなくXに源泉徴収票の開示を求める等不動産投資の勧誘を行い、Xから交際を求められると明確な回答を避け、不動産投資の勧誘を継続し、さらにXが各契約についての融資を受けさせるために改ざんした源泉徴収票を金融機関に提出したことが認められる。
よって、Aの上記勧誘行為は、社会通念上容認し得る限度を超え、不法行為に該当する。
◆Y社が損害賠償義務を負う(使用者責任)
◆不動産の市場価格相当額の控除は不可(反倫理的不法行為)
【参考】
国民生活センターのデート商法に関する注意喚起
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190307_1.html
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
RETIO. NO.126 2022年夏号 より
https://www.retio.or.jp/info/retio_126.html
東京地裁 令和3年7月20日判決
ウエストロー・ジャパン
【登場人物】
X(原告・個人)
Y社(被告・宅建業者)
A(Y社の従業員)
B社(不動産事業者)
C社(マンションの売主)
1 事案の概要
Xは、AからSNSのメッセージを受け取り、連絡を取るようになり、共に食事をしたりするようになった。
その後、XはAに交際を希望する旨申入れたが、Aはこれに明確な回答をしなかった。XはAから不動産投資の勧誘を受けるようになり、その求めに応じて、Aに源泉徴収票の写しを交付した。
さらにXは、A及びAの勤務先のY社執行役員と面会し、両名から不動産投資の勧誘を受けた。
XはB社の媒介により、C社との間で、中古分譲マンションを購入する契約を締結し、引渡しを受け、これを賃貸することとした。
Xは、賃料収入からローン返済等の支出を差引いた持出し金額の合計が、月額6万円余〜16万円余になっていたことから、徐々に不安を覚えるようになり、Y社に各物件の買取りを求めたものの、これを拒否された。
その後Xは弁護士に相談し、その弁護士を通じて他の宅建業者に価格査定を依頼したところ、市場価格は購入価格の50〜60%程度に過ぎないとの結果が示された。
Xは、その後もY社に買取りを求めたものの、Y社はこれに応じなかったことから、Y社に対して、購入価額、購入に要した費用、慰謝料等の支払いを求めて提訴した。
これに対してY社は、Xの求めに応じて相談に乗っただけで不当な勧誘はしていない、XとAが知り合った当時にAはY社の従業員ではなかった、等として争った。
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
【裁判所の認定】
Yは、Xに対し、係争地が私道として提供されており、私道では建築等の利用ができないなどと説明したことが認められる。
Yは、Xに係争地に地役権が設定されているとの説明はしていないが、係争地に設定された地役権は登記されておらず、同地役権に関して合意した文書である同意書にも、地役権という文言は記載されていない。
私道の隣接所有者が私道に対して有する権利の法的性質まで明確にならなくても、係争地が私道に供されていることを買主であるXが認識できれば、Xが不足の損害を被るおそれは相当に軽減される。
そうすると、宅地建物取引業者であるYが、私道の隣地所有者が係争地を含む本件私道に対して有する権利の法的性質について調査、判断した上、それが地役権であるとの説明義務を負っていたと認めることはできない。
したがって、Yは、Xに対し、係争地に地役権が設定されているとの説明をしなかったとしても、そのことをもってYが説明義務に違反したと認めることはできない。
また、重要事項説明書に記載された概略図には、道路との接道部分について、同意書に添付された測量図と同様の形状で描かれており、係争地部分が道路として使用されていることを示す同意書も添付されていることなどを考慮すれば、重要事項を説明する者としては、概略図や同意書に沿って、私道の範囲や私道との接道位置の説明をしたと考えるのが合理的である。
したがって、地番を示すなどして明示的な説明がされなかったとしても、私道の負担に関する事項について説明されていたといえ、Yが説明義務に違反したと評価することはできない。
(今朝のFLC&S社内ブログ「あしもとのこと」より)
RETIO. NO.126 2022年夏号
https://www.retio.or.jp/info/retio_126.html
東京地裁 令和3年6月18日判決 ウエストロー・ジャパン より
【登場人物】
X(買主、原告)
Y(宅建業者、被告)
A(売主)
【事案】
Xは、土地・建物をYの媒介により、売主Aより購入し、土地上にガレージを建築した。
近隣住民が土地の一部に設定された地役権に基づき、ガレージの撤去等を求める訴訟を提起し、Xに対しガレージを撤去することを命じる判決が確定した。
Xは、Yに対し、重要事項説明において、本件係争地が既存道であること、地役権が設定されていたこと、建築制限があることを説明しなかったと主張して、本件係争地に建築したガレージの解体・撤去、再築等に要する費用等の損害賠償をYに求める訴訟を提起した。
Yは、以下のように主張した。
1 重要事項説明の際、係争地が既存道であり建築ができないことを、道路としての使用に関する近隣住民の同意書を添付し説明をした。
2 係争地に地役権は登記されていないため、地役権が設定されていると説明はしなかったが、宅建業者の職責は、土地上の権利の種類を判断することではなく、建築基準法に照らして土地にいかなる規制・利用制限が課せられているかを買主に説明することであり、これを明確に説明した。
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