2024年10月11日 (金)

地面師対策は司法書士?

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

本日発売のビジネス雑誌「PRESIDENT」に、地面師に関する私の寄稿が掲載されることは、既にお知らせした通りです。

内容は、配信ドラマで話題になった地面師と不動産ブローカーの実態を中心に扱ったもので、不動産事故全般に触れたものではありませんし、司法書士が事故防止の担い手であることもさほど強調してはいません。

それは、今回はまず業界人でない一般の読者に興味を持って頂くことを第一に考え、司法書士の役割、特に予防法務(不動産事故防止)についてより広く知って頂くためのきっかけになれば良いと考えたからです。

私は、司法書士の仕事が極めて多岐に渡っているにも関わらずそれが世間に余り知られていないことをとても残念に思って来ました。

不動産事故防止もその一つですが、それを広く認知して頂く事は、司法書士にとって、そして社会全体にとっても極めて意義のあることだと考えています。

また一般への発信は、不動産・金融の業界の方々や司法書士自身が、司法書士の仕事の奥深さを再認識することにもつながるのではないでしょうか。

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2024年10月10日 (木)

研修ってなんなんだろう その2

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

価値研修ワークショップでも初めはアイスブレイクです。まず、全参加者に自己紹介をして頂きました。内容は弊社のオリジナルの新人研修に倣って、最近の自分自身のトピックなどを話してもらい、それに対して質問をしたり、関連した発言をしたりしました。

当然私も自分自身のことを話しましたが、気がつくと普段身近な人にもあまり話していないことを話していました。秘密ではありませんが何故か人にあまり話す機会がないことを、知り合ったばかりの方達に話している。それは自分でも不思議に思いました。

他の参加者が同じように感じたかどうかはわかりません。また。アイスブレイクの目的はまだよく知らない者同士がお互いの見えない部分を少し見せ合うことで、それぞれ感じる不安感や緊張感を減らすことですから、個人的な話をするのは理にかなっています。

しかし、他人に、まして初対面の方に通常話さないような個人的なことまで自然に話してしまうのは、義務感からだけでなく、人は本能的により良い人間関係を求めているからではないでしょうか?

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2024年10月 9日 (水)

研修ってなんなんだろう  その1

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

私が行う研修に、「価値研修」という、自社の(私の)価値観を毎月入社する新人の方達に共有してもらう目的のものがあります。直近では200ページ近いスライドを私が2時間で一方的に説明するというものになっていました。

しかし、今月からはやり方を大きく変えて、関連するいくつかのテーマについて参加者に自分の考えを話してもらうというワークショップ形式に変更しました。

やり方を変えたのは先月から行った「アイスブレイク・セッション」なるものがきっかけです。これは、同期入社の新人派遣社員の方同士のコミュニケーション促進のために始めたものです。

価値研修をそのセッションの素材にすることにしたのですが、一方的に私が話すやり方では参加者同士のコミュニケーションは図れませんので、自己紹介や雑談を中心としたワークショップ形式にしました。

本来の価値研修も当初は従来通り行うことを考えていましたが、「アイスブレイク」の経験から価値観の共有の効果もワークショップ形式の方が効果が上がるのではないかと思った訳です。

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2024年10月 8日 (火)

実体に踏み込むおせっかい

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

実は仮装であって実体がないが、一見してそうとはわからない取引について登記を依頼された時、それにどう対処するかは、悩みを抱えているけれど明るく振る舞っている友人に対してどう声をかけるか悩む状況と似ています。

これは、一つには取引当事者/友人の客観的な状況によりますし、もう一つは当人の仕事観/人生観によります。

客観的な状況とは、一見して怪しい/心配だと思えるような外観を呈しているのか、ということであり、当人の仕事観/人生観とは、義務がないことには関わらないのか、義務はなくても自分が必要と思えば関わろうとするのか、ということです。

これは、これまで何度かここでも触れ、価値研修でもお伝えしてきた「能動的思考」というマインドセットを、どう使うかという問題だとも言えます。

つまり、このマインドセットは、仕事の場面だけでなく、私的なコミュニケーションでも同様に効果を発揮するものだと言えるのではないかと思います。

私は、義務はなくても関わっていく、いわば「おせっかい」も時には悪くないと思っています。

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2024年10月 7日 (月)

実体のない登記を依頼されたら その5

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

司法書士が本人確認・意思確認をするために行う質問の中には実体の存否に関連するものもあります(取引の目的など)。

その回答が予め準備された虚偽のものであっても、矛盾点がなく実体の存在に疑いを抱かせない程度のものである場合には、本人性や意思能力に疑いがない限り、それ以上の確認は困難です。

また、それによって仮装を見破れなかったとしても過失は認定されにくいと思います。

ただ、売主の資産状況についての情報を掴んでいる場合には別の問題があります。

例えば、自己所有の不動産を売却する者に多額の負債があり、その返済が滞っていて他に資産もないことを知った時には、売却が詐害行為にあたる可能性を疑うべきです。

これは売買が仮装かどうかとはまた別の問題です(そもそも無効である虚偽表示は詐害行為取消権の対象となりません)。また、売買代金が適正だから良いということでもありません(民法424条の2)。

疑いだけなのか、さらに事実関係と買主側の認識を確認し、取引中止の進言、場合によって委託の拒絶もあり得ます。

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2024年10月 4日 (金)

実体のない登記を依頼されたら その4

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

昨日、実体のないことを察知できる兆候について書きましたが、こういう兆候が全くなくても実体がないことはあり得ます。

それはあたかも地面師が詐欺のために偽物を精緻に作り出すように、実体がある場合と寸分違わぬ外形が作り出されている場合です。

むしろ当事者が本物であり、従って書類や資料も本物である以上、偽物の外形を作り出して司法書士を騙すことは、地面師の場合より容易だとも言えます。

例えば売買の意思のない売主と買主が売買契約を締結し代金も送金し、所有権移転行為も行うなどです。

この契約は虚偽表示で無効ですから(民法94条)、実体は存在しないと言えます。しかし、彼らがその内心(通謀)を秘している以上、見破ることは極めて困難です。

ただ、知らずに依頼を受けて登記しても、実体が不在である兆候がない限り司法書士に過失はなく、責任を問われることはない場合が多いでしょう。

尚、仮装行為の背後に強制執行妨害などの違法な目的があった場合、売主の資産状況にまで目を光らせることを求めるのは酷かも知れません。

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2024年10月 3日 (木)

実体のない登記を依頼されたら その3

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

典型類型

◆資産を隠す(強制執行や破産手続きから逃れる)ための所有権移転
◆贈与税等の課税免れに、税率のより低廉な法形式を装う

兆候

◆売主から依頼される
通常の2者間売買であれば買主側からの依頼が大半ですが、この場合は所有者の利益だけのためのものなので所有者即ち売主から依頼されます。
◆仲介を介さない
所有者から直接依頼されます。通常仲介事業者が作成する売買契約書の作成も合わせて依頼されます。
◆送金の証拠がない
売買代金が支払われた旨の登記原因証明情報に署名捺印をし領収書も提出しますが、送金の客観的証拠がありません。
◆移転の証拠がない
鍵引渡、引渡・移転書面の作成等がされません。
◆登記費用を売主が支払う
通常は買主負担です。
◆完了書類(新登記識別情報)を売主に引き渡す
通常は買主に引き渡します。
◆通常の付随資料がない
境界確認書、賃貸人変更通知等多数
◆以上の扱いを買主も承諾

これら変則的手法採用の理由が説明されない場合、対象実体がなく登記が不能で依頼を拒絶すべきである可能性が高いでしょう。

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2024年10月 2日 (水)

実体のない登記を依頼されたら その2

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

日頃多数の売買や担保設定の登記を扱っていると、実体を伴わない案件などというものは想像がつかないかも知れません。

もちろん、大多数の案件は真っ当な、依頼される登記に合致する実体を伴うもので、そうでないものはごく例外的な少数のものではあります。

しかし、これはこれまで学んだ不動産事故と同様現実に起きていることで、もし自分は大丈夫と思ったらそれは正しく正常性バイアスです。

ですから、そういう案件に遭遇した時にどう対処すべきかを日頃から考え、備えておく必要があるのです。

これまで事故として扱ってきたのは主に(登記の依頼者である)買主側が被害を受けるものでしたが、事故はそれだけではないということです。

このケースでは主な被害者は当事者以外(債権者など)ですが、私達司法書士も被害者になる可能性があります。過失責任を認められ損害賠償を請求されたり、最悪の場合犯罪の共犯者にさせられてしまうという危険まであります。

そこで、事故防止研修も範囲を広げて、このケースへの対処法を学んで行く必要があります。

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2024年10月 1日 (火)

実体のない登記を依頼されたら

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

強制執行妨害など違法行為であることを示しての登記依頼であれば拒絶するのは容易ですが、動機が隠されている場合、実体(売買なら代金支払と権利移転)の存否を確認することになります。登記は物権変動の反映だからです。

まず、代金を支払わない場合は売買とは言えません。

例えば、親が子供に不動産を贈与するのに、贈与税を回避するために形式上売買したことにする、などという場合です。これはもちろん違法なことですが、その事情を聞かされずに所有権移転登記の依頼を受けた司法書士は、実際に売買契約通りの代金が支払われたかどうかを確認する必要があります。

もし「支払ったことにして売買の登記をして」と依頼されたら、当然それは断らなければなりません(あるいは贈与に変更して頂く)。調査・課税される危険もないとは言えません。

さらに引き渡しや所有権移転も行わない場合は実体が全くなく、当然登記もすることはできません。

実体がある場合でも目的によっては違法となりますが、知らなかった場合は共犯にも過失にもならない可能性は高いです。

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2024年9月30日 (月)

今回の事件(日司連副会長逮捕)について聞かれたら

(今朝のFLC&S社内ブログ「福田龍介のよしなしごと」より)

こう返答します。

一つだけお答えできるのは、考え難いということです。

売買(代金支払と権利移転)が現実に行われた場合、仮にその裏に隠された目的があったとしても、それを知ることは司法書士といえども困難です。

そして、司法書士は明確な根拠がない限り法律上依頼を断ることもできません(※)。

また、今回暴力団関係者も逮捕されていますが、その方が取引当事者や関係者として司法書士の前に登場して来ない限り、その方に対する反社チェックを行うことはなく、察知すべくもありません。

逮捕されたということは、捜査機関にはそれなりの根拠があるのでしょうが、起訴前で、関与度合いなど罪名以外のことも不明です。

メディアの中にはセンセーショナルに書きたてるものもありますが、事実を正確に掴んでいる訳ではありません。

中には誰の発信とも知れぬSNS上のメッセージをそのまま煽り立てるような見出しに仕立てているものもあります。

会長声明も報道が事実であればという留保付です。

現在申し上げられることはそれだけです。

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